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ベランダ菜園と百姓

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 ベランダでナスやキューリ、トマトはもちろん、最近では私達、百姓の倅にすら分からないような外来野菜まで立派に作ってしまう。その種や苗は探さなくても、いくらでも手に入るし、それを栽培するための土や肥料も簡単に入手出来る。テレビのチャンネルをひねれば、「先生」と呼ばれる家庭菜園の専門家?が懇切丁寧に、その作り方から管理の仕方まで解説付きで教えてくれる。




 自らを「百姓の倅でも・・・」と言ったのは、農家に生まれながら、60歳を過ぎるまで農業とかけ離れた生活をしてしまったからだ。中学、高校まで家業の農業に携わった。年齢で言えば、18歳まで。子供の時代なので「手伝った」という方が正しい。以来、東京で生活した学生時代の4年、さらに、これまで、人生の大半・ざっと60年近くを農業とは無縁のサラリーマンとして生きてしてしまった。



ブドウ


 会社人間に終止符を打った時、「よ~し、今度は思う存分、百姓をやってやる」と、正直、心に決めた。ところが、歳月はそれを許してくれなかった。一つ果樹栽培を例にとっても、品種もその栽培技術もガラリと変わっていた。そればかりではない。木や棚の仕立て方、消毒薬やその取り扱いまで一変してしまった。




 決定的な決め手は身体体力と言った方がいい。栽培方法や技術は覚えればいいし、勉強すれば追いつける。でも、体力だけはそうはいかない。若い頃は時間的にも仕事全てに、かなりハードな所に身を置いたし、大抵のことならへこたれない根性も身に付けたと思っている。しかし歳はウソを言わない。


 もちろん、私達の年齢の人たち、仲間たちは今も立派に百姓をやっている。決定的に違うのは60年という歳月のブランクだ。「日曜百姓」と言われるように週末だけでも畑に出る生活をすればよかったのだが、仕事柄、そんな事も許されなかったし、しようとも思わなかった。




 悲しいかな、今の私には「ベランダの野菜作り」の方が理解できる。その一方で「いい世の中」「便利な世の中」になったもんだ、と思う半面、これからの農業はどうなっちまうんだ、と思ったりもする。ベランダ菜園は趣味であったり、遊びだからいい。不気味なのは一方で進む工場農業だ。


トマト


 もう40年ぐらい前になるが茨城県で開かれたつくば万国博覧会で、とてつもなく大きいトマトの水耕栽培を見たことがある。正直言ってド肝を抜かれ、やがて日本の農業は・・・と考えされたりもした。


つくば博
つくば'85


 この時の水耕栽培は今や博覧会のレベルではなく、さまざまな工場農業技術として実用化され、珍しくもなくなった。そこにあるのはコンピューター。太陽の光も土も要らない。そんなやり方は農業ばかりでなく、既に養鶏などでは当たり前になった。コンピューター管理の、しかも無菌状態のハウスの中で食用のニワトリを大量生産する。本当に太陽光や土は要らないのか。そんなことを考えると、まだ自然があるベランダ菜園の方がいい。




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ジャガイモの種蒔き

じゃがいも


 ジャガイモが芽を出した。芽というより、もう葉っぱという方がいい。周囲の新緑と歩調を合わせるかのように日に日に、その緑を増していく。




 我が家では毎年、彼岸に種蒔きをする。


 「お父さん、もうジャガイモの種を蒔かないと遅くなるわよ」


 女房も今では、その時季を覚えていて彼岸が来ると「のんびり屋」の私のお尻を押すのである。種芋は黙っていても昨年暮れのうちに注文で確保しておいてくれるのだ。この辺りでは、ありがたいことに農協が回覧板で注文を取ってくれる。




 その量は毎年、決まって5㌔。種芋の5㌔は10倍にも20倍にも増える。夫婦二人暮らしでは食べきれるはずがない。甲府に住む娘夫婦と孫娘、女房の姉夫婦、それに親しい友に差し上げることを想定したものだ。玉葱やサトイモ、大根やキューウリ、ナス、トマトも同じである。田舎がゆえに幸か不幸か、作付けする畑には事欠かない。


じゃがいも2


 都会にお住まいの方はご存知ないかも知れないが、ジャガイモは、種芋を二つ、または三つに切って蒔き付けをする。大きいものなら三つ、小さいものは二つ切りにするのだ。発芽率が極めていい野菜だから、一芽だっていい。二芽残しは凍霜害を想定した、いわば「安全弁」。蒔き付けする時、切り口に灰を付けるのがコツ。腐ったり、病気を防ぐためだ。




 収穫は毎年、6月下旬から7月。あまり、のんびりしていたり、天気の悪い日に収穫すると腐り易いのもジャガイモの特性。ジャガイモの腐った匂いは鼻つまみものだ。兎に角、新ジャガは美味い。「探し堀り」といって本格収穫を前にしたジャガイモの味は一入だ。




 ジャガイモを追っかけるように先頃、サトイモも蒔いた。種芋は隣村に住む中学時代の同級生が毎年届けてくれる。種芋は、もう芽を出している。国鉄(現JR)を定年でリタイア、実家に戻って始めた農業だが、私のような生くら者と違って、しっかり者。主体の桃も、それは見事なものを作る。ジャガイモの種芋だって冬中、簡易のビニールハウスで、しっかりと管理、それを届けてくれるのだから、只々頭が下がる。




 一口にサトイモの種芋と言っても、厳密に言えば2種類。よく見ると、サトイモは芽が青白く、一方のトウノイモは赤みがかっている。芋自体もトウノイモの方がサトイモより大柄で、ゴツイ。成長すると、その違いは歴然で、サトイモの茎が緑色なのに対して、トウノイモは紅い。トウノイモは茎(つる)を食べる。そう。巻きずしの芯に使うアレだ。

サトイモ


 ジャガイモやサトイモに限らず、根菜類の野菜は総じて逞しい。サツマイモ、大根、ゴボウ、さらにはコカブに至るまで、全てに言えることだ。発芽率は100%と言っていい。サツマイモの場合は、種芋から切り取った苗(茎)を盛り土に挿しておくだけで時期には立派な芋を付けてくれる。




 逞しさは大根もしかりで、「ど根性大根」などという言葉もそこから来ているのだろう。時として都会の舗装道路の割れ目からも芽を出すのである。大根は殺菌作用が強くあたらない。「大根役者」の例えが、それだ。我が女房の「大根足」とは意味が違う。




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越冬の大根

大根2

 我が家の大根やサトイモは確実に越冬した。二十四節気のひとつ・啓蟄も過ぎた。そして山梨も桜が満開。。もちろん寒暖の揺れもあるだろう。遅霜に見舞われることもあるかも知れない。しかし、もう冬に逆戻りすることはあるまい。




 ここで言う大根とサトイモの越冬は露地、つまり畑で収穫しないまま冬を越したということである。大根は秋口に、またサトイモは夏前に種(芋)を蒔き、初冬の11月頃、収穫する。大根は、ご存知、沢庵など漬物にする一方、さまざまな方法で保存しながら食卓に乗せていく。サトイモや人参、ゴボウも同じだ。



葱


 言うまでもなく、大根や人参、ゴボウ、サトイモなど総じて秋野菜は、寒い冬が来る前に収穫しないと、凍みてしまい、食べられなくなってしまう。夜から明け方にかけては間違いなく霜がおり、そればかりか気温がグングン下がれば、当然のことながら日中も含めて地面は凍る。水分を多く含んだ野菜は、この寒さにひとたまりもない。


         この寒さに耐えるのは春や初夏に向けての野菜、エンドウやタマネギ(写真)などだ。

野菜

 その昔から我が家も含めて、この辺(山梨市)の農家は、暖かい軒先などに、それなりの室を作ったり、比較的湿り気の少ない畑の片隅などに穴を掘って埋けたりして、あの手この手で保存を工夫した。




 いずれも、いったん収穫した後のワザである。大根やゴボウ、人参などの場合、その方法はさまざまで、例えば、穴を掘り、横にして、そのまま埋けてしまう方法や、埋けずに斜めに寝かせて土を被せる方法も。この場合、上向きにしたまま土を被せるやり方と逆さにする方法がある。逆さにするのは大根などが新たな発芽をしないようにするためである。発芽をすれば大根本体の養分を取られ、素が入ってしまうからだ。




 それぞれの方法が一長一短。暖かすぎれば腐ってしまうし、寒ければ凍みてしまう。越冬したとしても、素が入ってしまえば食べられない。そこで、いっその事と、秋に収穫せずに畑で越冬させてみた。もちろん、そのままだと凍みてしまうから、土を盛り、藁などを被せて防寒したのである。


大根

 これがまんまと成功。大根は一本ずつ抜いてくるし、サトイモは必要なだけ掘ってくる。少しも痛んでいない。この分ではしばらく大丈夫だろう。たかが藁。されど藁。この藁の保温効果はすごい。保温の一方で、適当に風も通すからいいのだろう。この地方は早くから葡萄や桃、サクランボなどの果樹に転換され、水田が消えてしまったので、藁がなくなった。




 今は手に入りにくいから、化学製品などの代用品に変わったが、昔は筵(ムシロ)に代表されるように藁をあっちこっちに使った。農作業ばかりではない。寒さや湿度の調整に対する生活の知恵だったのだろう。我が家の藁作戦、実は隣の奥さんの知恵である。この大根やサトイモの露地での越冬、ホントは地球全体を覆う温暖化の影響かも。肌で感ずる寒さも、子どもの頃のそれと確かに違う。昔はもっともっと寒かったような気がする。





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大根足と大根役者

大根5


 「この大根め・・」


 大根の収穫をしながら、なかなか抜けない大根にちょっぴり腹が立って独り言を言ったらそばにいた女房が何を勘違いしたのか


 「大根とは何よ。お父さんの足なんかゴボウじゃない。まったく・・・」


 なにやら女房は自分の足のことをいわれたと思ったらしい。いい歳をしてそそっかしいのは今に始まったことではないが、それにしても面白い。確かに大根はずん胴で、女房の足によく似ている。


大根4



 真面目に怒っているのがまた面白くなって「これなんか、おまんにそっくりだよなあ」といったら、また怒っていた。この会話が聞こえたのか隣の畑で仕事をしていた老夫婦はこちらを向いて、軽く頭を下げ、ニコニコ笑っていた。



 いい天気だ。小春日和とはこんな日のことを言うのだろう。



秋の空



 「今日は暖かいですねえ」と声をかけたら、その老夫婦は帽子を取りながらこちらにやって来た。


 「立派な大根を作りましたね。これじゃあ百姓顔負けですよ」



 「お宅じゃあ、大根作らなかったですよねえ。これ持って行って、沢庵に漬けてみて下さいよ」


大根2


 このあたりは葡萄や桃、サクランボなどの果樹地帯だから本格的な農家は手のかかる野菜作りは、どちらかというと敬遠するのだ。大根をネコと呼ばれる一輪車に載せて女房に隣の家まで運ばせた。大喜びしてくれる老夫婦がまたうれしい。大根足と勘違いしてさっきまで怒っていた女房も愛想よくニコニコしていた。





 さてその大根だが、殺菌作用も持ち合わせていて、決してアタル心配のない野菜だそうだ。刺身のつまや、そのパックの下に大根の千切り?が敷いてあるのもそんな理由からだ。それが転じて生まれた言葉が「大根役者」。当たらない、つまり、いつになっても人気が出ない役者のことを言うのである。女房が言う「大根足」は、その形容から誰とはなしに言うようになったのだろう。


大根2


 大根作りには土地が深い火山灰土の地域が適しているのだそうだ。山梨県では八ヶ岳と向かい合う茅が岳山麓の北杜市明野町の「浅尾大根」が有名。真っ直ぐであることはともかく、皮が薄く、沢庵漬けにはうってつけ。味もいい。茅が岳はあの登山家であり、エッセイストでもあった深田久弥さんが亡くなった山としても知られている。




 大根は、「青首」という種類のように地上にも伸びるが、当然、地下に生長する野菜だ。だから土の浅いところは適さないのである。私の地域は粘土質で土地が浅いから大根が真っ直ぐ伸びずに曲がったり、二股になりやすい。抜くのに一苦労する。そればかりか、力を入れると途中からポキンと折れてしまうのである。でも商品として出荷するわけではないからかまわない。今年も大根足ならぬ、しなびた女房の足のような沢庵が食べられる。





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サツマイモと焼酎

サツマイモ3


 「へえー、サツマイモの生産量日本一は千葉県か」
千葉の方がお書きになったブログを拝見しながら、新しい知識を頂いたような気がした。お恥ずかしい話だが、サツマイモというから、てっきり薩摩、つまり、その産地は鹿児島県だと思っていた。





 落花生の生産量が日本一ということは知っている。たまに行く外国旅行の帰りに成田空港の上空からの千葉を見おろす時、あっちこっちに目立つゴルフコースの間に間に広々と広がる田園や畑。その時期により、あれが落花生畑か、と勝手に思ったりすることがあるが、サツマイモ畑と思ったことは一度もない。落花生は粘土質より砂地の方がいいという。なんとなくのイメージだが、千葉には落花生がよく似合う。




 産地うんぬんはともかく、サツマイモは私にとって、というより私達の世代にとって、さまざまな思い出がある。戦後間もない子どもの頃、秋からこの時期のおやつといえば、このサツマイモ。時には弁当がサツマイモという子もいた。冬中はこのサツマイモを薄く切って干した≪切っ干し≫が子どもながらにうまかった。麦飯が当たり前で、白い米が珍しかった時代である。


干しいも


 時代は一変。今は観光土産になった≪おやき≫などと共にサツマイモも石焼芋として売り出したりすればちょっとした嗜好品。そこには生活の貧しさのような、いわゆる暗い影は微塵もない。もう40年以上前になるが、東京支社勤務の東チョン時代に、宿舎のマンションへの帰り道、あの「石焼き芋~」の呼び声に、子どもの頃のあの味をオーバーラップして「おやじ、ひとつくれ」・・・。うまかった。

焼き芋


 そんな思い出を引きずったわけでもないが、今年はサトイモなどと共にサツマイモも作ってみた。収穫を一日延ばしにしていたら、それまでは青々としていた葉っぱの芋のツルは霜にやられて、見る影もなくベタベタ。もうこれ以上延ばすわけには行かないと、掘ってみたら、そこそこに芋は着いているのだが、いずれも小さい。女房は言う。



 「お父さん、これじゃあ、買って食べたほうが安いわねえ」

サツマイモ2


 「バカ言え」とは言ってみたものの、その通りだとも思った。このサツマイモ、ゴールデンウイーク真っ只中の5月3日、JAの即売所で70本一束700円の「太白」「金時」の苗二束を買って来て差したものだ。芋が大きくならなかった原因は自分でもおおよそ分かっている。ツルが繁茂する夏の時期、ツル返しを丹念にしなかったからだ。サツマイモは極めて逞しい野菜で、ツルのあっちこっちに根を張りながらグングン延びるので、ツル返しをしないと精力が分散、肝心の芋が大きくならないのである。


サツマイモ1


 そんな芋でも、自分が作ったものは愛着がある。額に汗しての芋掘り。その汗もちょっと休むとサッと冷える。畑にいても酒が恋しくなる。私は元来、日本酒党だが、サツマイモといえば焼酎。若い頃、記者クラブで一緒だった仲間に鹿児島出身の男がいて、里帰りする度に鹿児島の芋焼酎を持って来てくれた。西郷さんのような顔をしたこの友と一升瓶を脇に夜明かし。もちろん、今のように水割りではなかった。




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おきてがみ
プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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