付和雷同

人々

 付和雷同。私達日本人にこれほどぴったりする言葉はない。あの大騒ぎはどこに行ったのだろう。新型インフルエンザ騒ぎだ。そんなことを考えていたら、数日前の山梨日日新聞に、こんな見出しの記事が載った。




 「新型インフルほぼ終息 週平均患者数 5カ月ぶりに1人台」




 山梨県が発表した定点医療機関からの新型インフルエンザ患者報告に基づいた県厚生部の判断。新聞によると、全国の平均患者数(前週)も同じ1人台(1・76人)で、4週連続して減少しているのだという。普通のインフルエンザならそんな数ではあるまい。



地図


 この新型インフルエンザの≪震源地≫は遠くメキシコ。最初は鳥ならぬ豚を媒体にしたことから豚インフルエンザと言った。それによって、メキシコでの最初の死者は確か6人。ぼつぼつ1年前の4月28日頃だった。日本政府もマスコミも、これに敏感に反応した。政府は空港や海の港など、いわゆる水際での厳戒態勢を敷く一方、マスコミを通じてその予防を国民に求めた。


メキシコ  


 新聞やテレビは連日、大々的にこのニュースを伝えた。只でも付和雷同型の日本人がこれに反応しないはずがない。人々はマスクを買いあさり、あっという間に薬局やスーパーからマスクが消えた。連日の報道の中で登場してくる評論家先生や学者先生は、明日にも日本中が感染の坩堝と化しかねないようなトーンで解説するものだから、むしろ反応しない方がおかしい。今考えれば笑い話のような水や食料の備蓄に走った人もいた。




 たまたまこの時期、子供たちの修学旅行シーズン。全国の小、中、高校は旅行を中止、企業の中には、就業の一時閉鎖をするところまで現れた。当然のことながら経済活動にもシワ寄せしてしまったのである。各地の観光地や経済界から反発を食らった政府や結果的にそのしり馬に乗ったマスコミは、今度は手の平を返したように火消し役に。それまでの騒ぎがウソのよう。新聞やテレビからは「新型インフルエンザ」の大見出しや電波のニュースが影を潜めたのである。


旅行


 昨日と今日。一晩明けただけでまるで違った。「いったい、それまでの騒ぎは何だったの?」。みんなが、そう思ったに違いない。インフルエンザは空気伝染するものだから用心することに超したことはない。しかし、その取り扱い方を一歩間違えたら思わぬ混乱や場合によっては、とんでもないパニックを招くことは、かつての石油危機の時のトイレットペーパー騒ぎで立証済みだ。そんなことは政府もメディアもお構いなし。




 マスコミの影響力の大きさ、怖さを思い知った。「(情報を流さないことによって)あとで責任を問われたら・・」「騒ぎの渦中で(修学旅行など)ことを進めて、万一のことがあったら私達の責任は・・」。役所や学校、企業の責任者にそんな≪事なかれ主義≫があったことは間違いない。マスコミだって同じ。報道合戦と言う、いわば宿命的な競争関係がそれに拍車をかけた。大山鳴動してネズミ一匹。踊らせた方が悪いのか、踊った方がバカなのか・・・。どっちにしても付和雷同に違いはない。今はそのことすら、みんなが忘れた。




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広告スポンサー

水戸黄門  
TBS・HPより

 ナショナル=「水戸黄門」。パナソニック=「水戸黄門」。ナショナル改めパナソニック。テレビの人気シリーズ「水戸黄門」の番組スポンサーだ。社名を変更して間もないが、同社がこの番組を支えてきたことだけは確か。スポンサーと人気番組は、いわば表裏一体。人気があるからスポンサードも容易だし、見方を変えれば、そのスポンサーがあるから番組が成り立つ。番組スタッフの努力もさることながら、スポンサー側の番組への情熱も見逃せないだろう。何十年と続くこの人気ドラマの舞台裏には、茶の間で無邪気に見ている私のようなお気楽オジサンには知るよしもない悲喜こもごもの≪ドラマ≫があったのかもしれない。




 NHKはともかく、民放の全ての番組は、このスポンサーの支えで成り立っている。新聞だって同じだ。このコマーシャル・スポンサーがなかったらキー局、ローカル局を問わず民放局の経営は成り立たないし、新聞社だってやっていけない。当のスポンサーにしたって、この二つの強力媒体を使わなかったら営業実績は得られないし、自分たちの意志を周知することは難しい。いわば、持ちつ持たれつの関係である。


サッカー


 スポーツだって同様。駅伝マラソンでは、ランナー達がゼッケンに刻んだスポンサー名を胸に走る。サッカーのチームだって同じだ。野球のチームは、それ自体が球団を持つ会社の広告塔。フロントは選手確保に奔走する一方で、スポンサーの確保に必死の努力をしていることは容易に想像できる。このどちらが欠けても所期の目的は叶わない。いい選手を確保するにはお金が。スポーツチームのフロントと広告スポンサーの関係は、放送局や新聞社のそれと変わらない。




 私も熱いファンの一人。山梨には「ヴァンフォーレ甲府」というサッカーチームがある。サッカーファンならご存知、J2のチームだ。昨年、念願のJ1復帰を目指したが、紙一重、惜しくも叶わなかった。このチームは元々、名もない「甲府クラブ」というクラブチームだった。正月の全国高校サッカー選手権大会で全国制覇を成し遂げた山梨学院高校を指揮した監督もかつてはその中にいた。この監督は高校時代の同級生だから、高校サッカーの行方には人一倍熱が入ったものだ。親しい仲間がみんなでこの男の快挙に拍手を贈った。


ヴァンフォーレ甲府


 とにかく、そんな名もないチームが装いも新たにJ2に名乗りをあげ、後にJ2に転落したものの一時はJ1で堂々と戦った。来期は2年ぶりのJ1復帰を果たしてくれるだろう。私達の願いだ。名もない星が彗星のようにプロサッカー界に登場した背景にはフロントの努力もさることながら、献身的ともいえるスポンサーの支えがあった。もちろん地元意識が高じたサポーターの応援があったことは言うまでもない。

VF
画像:VF甲府HPより

 主力の広告スポンサーは「はくばく」という米麦の食品会社。メジャーになりつつあるとはいえ山梨の一企業だった。胸に背に広告をつけた。J1に仲間入りしたり、J1をうかがうまでになった今は大スポンサーが名乗りを上げてくれるが、その「はくばく」は名もない時からのスポンサー。このスポンサーに足を向けてはいけない。いつまでも・・・。

はくばく  

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ブランドと烙印

ブランド


 ルイ・ヴィトン、シャネル、エルメス・・・。日本の若い女性や奥様方が時として目の色を変える、いわゆるブランドだ。私のような無粋な田舎者でも知っている。この「ブランド」という言葉、実は「烙印」という意味もあるのだそうだ。「ブランド」と「烙印」。この二つの言葉のイメージは180度違う。その落差が面白い。




 ここで「面白い」と言ったら不謹慎かもしれないが、この2ヶ月近く、マスコミが大騒ぎしたタレント酒井法子の薬物事件。アイドルタレントは一転、犯罪者に。言ってみればブランド物のアイドルには、恐らく蘇えることが出来ない犯罪者の烙印が待っていた。



酒井法子



 逮捕以降、40日間、来る日も来る日もあんなに執拗にテレビでやられたら本人はもちろん、関係者はたまったものではなかっただろう。いくらアイドルタレントだからといって擁護するつもりもないし、罪を犯した人をかばうつもりもない。でもテレビはやりすぎだよなあ~、と思うのは私だけだろうか。朝のモーニングショーから始まってテレビは一日中この人の話題。うんざりしてチャンネルを替えれば、そこもまた同じ。平均的な日本人というか、たわいもない女房なんか「お父さんねえ、酒井法子のお父さんは○○だってよ」と、言うほど。関係のないことまで、何でもかんでも興味本位?で暴き立てる



取材


 テレビとは怖い。何も一生懸命見ているわけでもないのに、酒井法子に関する情報はいやがうえにも頭の中に。ジェネレーションの違いというか、普段、関心もなければ、ましてや知識もなかった私でさえ大抵のことは知っている。それどころか、目をふさいでも自然に顔が浮かぶほどだ。映像は繰り返し見ることによって人間の頭の中に残像として焼き付けるのである。





 「日本中が注目した酒井法子被告が只今、湾岸警察署を出てきました。酒井被告が・・・」
酒井被告が500万円の保釈金を積んで釈放された日、現場中継のレポーターは、半ば興奮気味に、こう繰り返すのである。テレビにはずらりと並んだカメラが。前日から徹夜で待ち構えたという報道陣の数も半端ではない。その数は200人を超えたという。


記者会見  


 絶叫にも似たレポーターの「日本中が注目した・・・」に首を傾げた。果たして日本中が注目していたのだろうか。過剰、執拗とも思える報道で無理やり「注目させた」のはテレビ自身だったのではないのか。そう思うのは私だけかなあ。釈放後の記者会見が終われば、スタジオでは心理学者まで呼んでコメンテーターの先生方が謝罪会見の表情やそこで流した涙まで分析して見せる。果ては会見が済んで病院に向かうという酒井被告の車をヘリで空からも追いかけるのだ。初めての人なら「何事が起きたのか・・・」と仰天するに違いない。





 一国の総理だからやむを得ない、と言ってしまえばそれまでだが、文字の誤読を鬼の首でも取ったかのように、これまた繰り返し何べんも。総選挙となれば「政権の維持か交代か」と。私達はマスコミのペースにどんどん引きずり込まれていくのだ。そして知らず知らずに自らも評論家に・・・。居酒屋での酒飲み話も実は評論家先生の受け売りだったりするのである。テレビ文化がもたらす≪一億烏合の衆≫と言ったら叱られるだろうか。




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殺し文句

都会


 物騒なものの言いようだが「殺し文句」という言葉がある。ちょっとした事で議論になった時、往々にして楽観論と慎重論が交錯する。安全や安心に関わる事柄だったらなおさらだ。「そんなことで、大騒ぎしていたら、かえってパニックを招いたり、後に禍根を残す」という意見に対して出てくるのが「万一、間違いが起きたらどうする」という反論だ。




 この勝敗の帰趨は大方決まっている。この議論で勝つのはほとんどが慎重論だ。「万一・・・」を強く言われれば、どんな人間であれ「絶対に大丈夫」と断言できないからだ。もちろん、その事柄によってだが、万一を主張されたら、どうにもならない。




 日本中をパニック寸前にまで追い込んだ新型インフルエンザがそうだ。まるで日本中がインフルエンザに感染するような騒ぎになり、店頭という店頭からマスクが消えた。笑い話ではない。買い物など外に出ることが出来ないことを想定して、大量の水や食糧まで買い込んだ人もいるという。街ゆく人達はみんなマスクをかけ、異様な雰囲気を醸し出した。


エスカレーター


 幼稚園や保育園、小中学校、高校は相次いで休校策を取り、企業までも時差出勤や休業策をとる所も。一方、時あたかも修学旅行シーズンの学校は、相次いで計画を中止した。みんな「万一」だ。ここまで来ると人間、はたと考える。例えば、修学旅行での売り上げを当て込んでいた京都や奈良などのホテルや旅館、土産物屋さんはたまったものではない。




 こうした経済界に生きる方々だって所詮は人の子。政府やマスコミから連日、どかすかと流れる情報を目の当たりにすれば、インフルエンザが怖くないといったらウソになる。しかし、経済活動への影響が出始めて来ると話は別。得体の知れないインフルエンザ騒ぎにばかり震え上がっているわけにもいかない。当然の事ながら政府や自治体に「慎重な対処」という名の「圧力」をかける。




 政府だってこれを無視するわけにもいかない。これでもかというほど大量のニュースで「怖いインフルエンザ」のイメージを国民に焼き付けたマスコミも一転、今度は火消し役に。「怖い」を前提にニュースや番組を作ってきたマスコミは「冷静に」へと舵を切り、そこに登場する学者先生や評論家の先生方も、かつてのトーンと手のひらを返すのだ。ニュースはマスクから、元気に登校する子供たちをことさらにアップするのである。そして、あと何日かすると、インフルエンザの「イ」の字もなくなるのだ。俺たちは≪情報という名の魔物≫に踊らされたのか、勝手に踊ったのか・・・。


街


 慎重と過剰は、相反するようで、実は紙一重。必ずしも適当な例えではないかもしれないが、毎朝、毎晩、日常的にお目にかかる天気予報がそれだ。気象庁が発表する警報は、決まってオーバー気味。これだと、多少差し引いて受け止めればいい。                     
 正直言うと私は騒ぎのメキシコやアメリカを歩いてきた。そこはいたって冷静だった。今度の騒ぎの根底には、万一を考えたお役人の事なかれ主義や保身術が潜んでいないいか。それがあったとしたら踊らされる国民は迷惑千万だ。今度の騒ぎで一番気の毒なのは犯人扱いされた感染者だろう。「たかが風邪」と言ったら、慎重派?に叱られるよね・・・。




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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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