セキュリティーチェック

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 旅をしていて、つくづく思うのはテロリストが国際社会にもたらした罪だ。いつ仕掛けて来るか分からないテロリストから人々を守り、守らなければならない。そのための時間と労力、経費…。世界中では、とてつもない時間とお金を費やしているのだろう。



 今度の海外旅行で山梨の片田舎を出発。成田空港への高速直行バスで同空港へ。その港内へ入る前で、まず検問。空港警察だろう。


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 「恐れ入ります。パスポートを拝見させていただきます」


 ここでは主にはパスポートのチェックだけ。バスの窓越しに見るとマイカーは、トランクを開けさせて念入りに調べている。


 「ご協力、ありがとうございました」


 ゲートが開いて、バスやマイカーは空港の第一、第二のターミナルへ。全日空や日本航空など航空会社別のターミナルに向かうのである。


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 搭乗チケットを券売機で買い、カウンターでトランクを預ける。ここまでは手順にそって進めばいい。その次。セキュリティーチェックだ。手荷物ばかりではない。ポケットのケイタイや小銭入れ、腕時計やネックレス、ベルトに至るまで、全てをローラーで流れる受け皿へ。カメラチェックである。

携帯電話


 “身ぐるみ“剥がされた搭乗客は、今度は金属最終チェックのゲートをくぐらされるのだ。そこを通る時の気持ちは何度経験してもいいものではない。“無事”通過した時は、子供のようにホっとするのだ。「ブー」。そこで機械にノーを突きつけられようものなら、待ち受けていた係官の手で探知機での全身チェック。靴を脱がされ、その底まで調べられるのである。




 これでセキュリティーチェックが済んだと思ったら大間違い。同時進行で進んでいた手荷物検査。黒いカーテンで仕切られたカメラゾーンで、また待ったが。ここで引っかかるのは、特に液体。機内でのお楽しみのワインやお酒類、ペットボトルの水はむろん、女性の液体化粧品に至るまで容赦なく没収されるのである。旅行客は、液体の機内持ち込みはダメ、と言うことは知っている。でも人間、どこかに助平根性が。没収されるそれが高価なものであったり、思い入れが強いものであればあるほど、あきらめきれない気分になるのだ。



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 「お母さん、帰ったら、このワインで乾杯しようよ」


 何年か前、大西洋―カリブ海―パナマ運河―太平洋クルーズの時、米・ロス・アンゼルスで手に入れた高級ワインを、ハワイのセキュウリティーチェックで没収された時のむなしさは今でも忘れられない。



 もちろん液体の機内持ち込みがチェックされることは知らなかったわけではない。もしチェックにかからないトランクに入れて、中で割れでもしたら…。貧乏人根性というか、そんな警戒心が逆に没収のハメに。目の前で大きなポリバケツに投げ込まれた。




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旅のキーワード

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 クルージングだから、今度の旅のキーワードは「船」に決まっている。もう一つキーワードがあるとすれば、それは紛れもなく「世界遺産」だ。イタリアのベネチアを出て、アドリア海を南下、エーゲ海を回って、再びベネチアに戻る7泊8日の船旅。立ち寄った国は、イタリアのほかギリシャ、クロアチアの3カ国。


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 イタリアの玄関口・バーリでは、アルベロベツロで「トウルッツリ」と呼ばれる、とんがり屋根の民家群を。ギリシャのオリンピアでは、かつてゼウスの神に捧げられた古代世界で最も重要な聖域だったと言われるオリンピアの遺跡を観た。そのカタコロンから回り込んで、同じギリシャのアテネではアクロポリスの丘を。都市国家時代の神域、と言われるそこには、数々の古典文化の芸術家達がもたらした傑作がひしめいていた。


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 エーゲ海には、大小様々な島がいっぱい浮かんでいる。その風景、特に家並みは白亜とか、カサブランカ(白い家)と言う形容がぴったり。ベネチアのサンマルコ島やクロアチアのドゥブロブニクにみられる中世風の建造物とは趣を一変する。サントリーニ島やミコノス島は、まさにエーゲ海に浮かぶ「白い宝石」だ。アドリア海とエーゲ海の雰囲気ががらりと違うのも面白い。


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 そのことごとくがユネスコ(UNESCO=United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization=国際連合教育科学文化機構)の世界文化遺産だ。そんなところを選んで巡っている、と言ってしまえばそれまでだが、その見事さには圧倒される。ユネスコは、一も二もなく登録を認めただろう。こんな素晴らしい財産を後世に残さなかったら、人類、バチが当たるとさえ思った。


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 今、山梨、静岡両県では、富士山の世界文化遺産登録に向けて大詰めの準備作業が進んでいる。自然遺産の登録では失敗。文化遺産に方向転換の舵を切っての作業である。富士山は、私たち日本人にとって心のシンボルであり、山岳信仰の源。だが、あって当たり前、の山であることも確か。特に、山梨県人の私のように毎日窓越しに眺めている人間にとって、それは珍しくもなければ、これといった感慨もわかない。


富士山


 エーゲ海のサントリーニ島やミコノス島、アドリア海のゴルフ島なども、そこに住む人から見れば同じ感覚かもしれない。


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 私は長年、ユネスコの民間活動に参画している。今年9月8~9日には山梨市の市民会館で、研究大会を開く。静岡、神奈川、長野、山梨の4県で構成する中部東ブロックの大会で、それぞれの県のユネスコ協会の代表が集まって、研究討議をするのである。




 基調テーマは「富士山の世界遺産が意味するもの~人の絆と地域の輪~」と決めた。富士山の世界文化遺産登録をきっかけに、その意味するものや地域の活性化、人と人の絆を考えようというものだ。その前段になる基調講演や、それを受けたシンポジュウムには、富士山の世界遺産登録に向けての準備に携わっている中心的な人たちがあたる。因みに、我が国の登録世界遺産は14件。内、文化遺産は11件だ。




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ベネチアングラス

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 サンマルコ広場に限らず、サンマルコ島のあちこちには、ガラス工芸品を商いするお店もいっぱい。ベネチアのガラス工芸は「ベネチアングラス」の名で知られる、いわば世界のブランドなのだ。

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 宝飾貴金属店などとともに軒を連ねるベネチアングラスのお店には、あるある。様々なガラス細工の商品が。カラフルというかシックに造られた置物のガラス工芸品からワイングラス、ビールのジョッキ、さらにはネックレスなど女性用の副装品・・・。あらゆるものをガラスで作ってしまうと言っていい。

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 「お母さん、あのワイングラスがいいな・・・」

 「買いますか?」

 「うん、そうだな・・・」


 手に取ってみた。欲しいことは欲しいのだが、そこが貧乏人の性(さが)。値札を見て躊躇するのだ。「ベネチアングラスって、こんなに高いのか…」。見たとたん、元の位置に戻した。そんな貧乏人亭主をよそに、うちのかみさん、いとも簡単に「気に入ったのなら、お買いになったら?」。「バカ、すぐ割ってしまうくせに・・・」。今は亭主より太っ腹に見える女房の顔を見返しながら内心そう思った。


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 40代の若い頃だった。今でも覚えている。会議で金沢に出張した時のこと。九谷焼の“自分では素晴らしい”徳利と猪口のセットを買って帰ったことがある。「お酒は温めの燗がいい…♪」。元来、酒飲みの私は、お燗の温度ばかりでなく、徳利や猪口にも拘っていた。



 九谷焼の徳利と猪口もその一つ。安さラリーの財布をはたいて買って来たのだ。


 「これ、オレのお気に入りなんだからな。大事に扱ってくれよ」


 「分かっていますよ…」


 夕餉の食卓で、そんな会話を交わしながら晩酌を済ませた数分後。「ガチャ~ン」。台所で不吉な音が。咄嗟の予感は、不幸にも的中。いつもは自分の非を認めたがらない、うちのかみさん。この時ばかりは「ごめんなさい」。「バカっ。今、『割るんじゃないよ』と言ったばかりじゃあないか」。あとの祭である。




 世の中とは皮肉なもの。大事にしているものほど、簡単に壊したり、無くしたりするものなのだ。世の常かも知れない。若い頃だが、外国土産でいただいたダンヒルなど高級ブランドのライターをバーやキャバレーに置き忘れて無くしてしまった苦い経験がある。今でこそ100円ライターがそれに取って代わったが、そんな時代もあったのである。


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 7泊8日のアドリア海、エーゲ海クルーズを目的にした12日間の旅から山梨市の片田舎に戻った今、サンマルコの土産物店に並んでいたベネチアングラスを恨めしげに思い出す。「やっぱり、買ってくればよかった」。そんな後ろ髪を引かれる思いがあったのかも知れない。ベネチアを離れ、空路、日本に帰る途中の乗り継ぎ空港・ミューヘンで、ビールのジョッキ二つを買い、重い手荷物覚悟で帰って来た。もちろんドイツ製。お値段は18ユーロ。 こちらは割られても、それほど苦にならないガラス製品だ。




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ゴンドラの唄

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 「水の都」の看板の一つ、ゴンドラの発着所は、連絡船が出入りする港の一角。港と言うより、連絡船が行き来する島の岸と言った方がいい。そこには待合を兼ねた、ちょっとした案内所があって、そこで申し込みさえすれば、順番で乗せてくれる。料金は一隻、約150ユーロ。5人ぐらいが乗れるので、一人当たりにすると、日本円で3,000円ちょっと。高いか安いかは、その人の判断だ。


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 ゴンドラは細長く、曲線美豊かな黒の漆塗り。単なるボートと違って、見るからに、また乗っていてもデラックスな気分になる。黒のボディに金色の留め金や赤いモールが、ちょっとしたデラックスさを演出するのである。


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 島の岸、海の岸からこぎ出したゴンドラは、サンマルコ広場に通ずる海に面した道の“太鼓橋”の下をくぐって島の運河でもある、水路に入っていく。私たち日本からのツアーで募った10人のオプショングループが2隻のゴンドラを借りて出発した。料金をちょっと弾んで、うち1隻には、弾き語りの芸人を乗せてギターと歌声のライブを楽しみながらのゴンドラの“旅”。




 「あれっ、聞き覚えのある曲・・・」。前をゆく仲間のゴンドラの上で「ゴンドラの唄」のメロディーが。日本人への精一杯のサービスか。



 命短し 恋せよ乙女 赤きくちびる あせぬまに
 熱き血潮の 冷えぬまに 明日の月日は ないものを

 命短し 恋せよ乙女 いざ手を取りて かの舟に
 いざもゆる頬を 君が頬に ここには誰も来ぬものを

 命短し 恋せよ乙女 黒髪の色 あせぬまに
 心のほのお 消えぬまに 今日は再び来ぬものを





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 確か、吉井勇が作詞、中山晋平の作曲。小林旭や森繁久弥がうたい、ヒットした。日本人なら誰しもが口ずさんだ事がある歌だ。あの森繁節が懐かしい。この歌の元歌はイタリアにある、と聴いたことがある。舟で奏でてくれたおじさんが、そのことを知っていたかどうかは定かではない。もちろん、無粋で、元来、音痴の私なんかに、その詳しいことが分かっているはずもない。




 考えてみれば、代わり映えがするでもない同じような家並みの間を縫うように走る運河を、のんびりと散策するゴンドラの旅。所要時間は3~40分。結構、楽しめた。腕時計は午後5時半を回っていた。対岸のベネチア港から汽笛を鳴らしながら大型客船が出航していく。8日前、私たちが乗ってアドリア海、エーゲ海のクルーズに出た「MSC=ムジカ」号。旅支度を整えて新たな客を乗せ、再びの出港だ。私たちと同じように8日間の船旅を楽しみ、またこの港に帰ってくるのだろう。感慨深く手を振り、拍手で見送った。



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ゴンドラが似合う街

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 サンマルコの島にはゴンドラがよく似合う。島の中の至る所、迷路のように張り巡らされた運河をゴンドラは、まるで泳ぐように進んでいく。“船頭さん”は、みんなそろいのユニホーム姿。白地に黒っぽい横縞の半袖シャツを着ていて、長い木の竿一本で自由にゴンドラを操って行くのである。


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 イタリア人は全般に背が大きい。目鼻立ちもしっかりしているので、横縞のユニホームと相まってかっこいい。街を歩いていてもイタリア人には“デブ”が少ないように感じた。それに比べてフランクフルトやミューヘンの空港で見かけたドイツ人の方が男も女も“デブ”が多い。テレビでよくお見かけするメルケル首相のようなタイプの女性がいっぱい。背丈は男性も女性も、お隣のフランス人と比べて大きい。




 女性もかっこいい。「アモーレ、アモーレ、アモレミオ・・・」。学生の頃観たイタリア映画「刑事」。あの女優さんはなんと言ったか。アラン・ドロンの「太陽がいっぱい」や「ローマの休日」「戦場に架ける橋」などとともに、今でも記憶に残る洋画の一つ。ソフィア・ローレン。往年のイタリアの大女優だ。そんな映画を見歩いた青春時代が懐かしい。


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 独断と偏見で見る欧州人の背丈なんかどっちでもいい。とにかく、かっこいい“船頭さん”のゴンドラさばきで、運河の回遊を楽しむのである。運河をまたぐ陸路の“太鼓橋”から眺める光景と違って、ゴンドラから見上げる光景のイメージはガラリと変わる。ゴンドラ同士やモーターボートがやっとすれ違うことが出来るほどの狭い運河の両側に3階建て、4階建ての住宅が並ぶ。




 どの家にも運河への“玄関口”が。もちろん、“太鼓橋“で陸を結ぶ道路はあるが、車がないので、生活物資の輸送は、この運河しかない。ここではゴンドラは観光用。観光客を乗せて案内するのが用途で、物資の輸送は主にはモーターボート。ゴンドラでの回遊では、あっちこっちで、そんな光景を見た。トイレットペーパーを下ろしているモーターボートの業者も。



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 生活雑排水はどう処理しているのだろう。運河を見る限り、多少は流れ出る雑排水の栄養物のせいで、いくらかは藻が発生しているが、総じて綺麗な水質を保っている。街並みは全て石造りや鉄筋コンクリートの家。歴史と共に歩んだ古い街並みなのである。そこで、「水の都」を汚さない浄化システムは? 




 私のような鈍感人間でもその不思議を考える。仮に生活雑排水が街の全てを毛細血管のように張り巡らしている運河に垂れ流されたら…。世界に誇る「水の都」は・、今にない。歴史の街には人々の英知と、それを守るために絶対妥協しないポリシーがあるのだろう。



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 逆を考えれば、近代の国家や地域が環境や水質の保全を維持出来なかったり、そのシステムを作れなかったとしたら、住民の努力はむろん、為政者の責任と言っていい。そんな事例は、私たちの身の回りにゴロゴロしている。優れた歴史の裏側には、それを支え続ける人々の努力と為政者の確固たる信念があるのだ。ゴンドラの上で、水に浸かって並ぶ家並みや水面を眺めながら、ふと、そんなことを思った。(次回に続く)




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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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