春の息吹フキノトウ

 「お父さんあったわよ」


 「そんな大きな声で・・・。何があったんだ?


 フキノトウよ。フキノトウ。お父さん、好きでしょう。酢味噌和えだったわよねえ。それとも天ぷらがいい?」


ふきのとう


 フキノトウ(蕗のとう)は、フクジュソウ(福寿草)と並んで春の使者。有頂天といったら言い過ぎかも知れないが、女房は、嬉しそうに声を弾ませていた。それを聴いた私だって心が弾んだ。このところヤケに暖かい。「4月上旬の気温です」。居間のテレビはそんなニュースを伝えていた。「今年は春が早いのか・・・」。いやが上にも近づく春を感じた。


ふきのとう2


 私は田舎育ちだからフキノトウなど野生のものがそれ程珍しくも、ましてや、それを見て驚きもしないが、土がない町育ちの女房にとっては、少なくとも私より新鮮に写るのだろう。山梨市の田舎に越して来て、もう4年以上経つ。でも、その感激は色あせていないようだ。事ある度に「田舎、田舎」と、いぶかしがる女房もこんな時は、まんざらでもなさそうな顔をするのである。





 我が家の蕗は、友からいただいたものを庭の植え込みと畑の間に植えたものがかなりの面積に増え、毎年、春はフキノトウの天ぷら酢味噌和えで食べる。蕗になったらキャラブキとして、コクのある味を楽しむのだ。フキノトウは畑に大根を抜きに行っての帰りに見つけたようで、女房は片手に大根、もう一方の手に三つ、四つのフキノトウを持っていた。してやったり、と言わんばかりに窓越しの私に見せた。


大根


 大根は抜いたばかりだから土だらけ。葉っぱはこの時期、さすがに勢いをなくし、黄色味を帯びている。一昨年までは秋に収穫して沢庵漬などにしてしまったが、昨年秋は全部抜かずに野ざらしのままにしてみた。トンマにも畑仕事の帰りにひっくり返ってムチウチ症を患ってしまったこともさることながら、冬の温暖化を逆手にとってみたのである。藁やダンボールで霜対策さえしてやれば十分越冬してくれることが分かった。昔、親父たちは比較的暖かそうな所を選んで大根を土の中にいけて保存した。確実に進んでいる地球温暖化は生活の知恵をも変えているのだ。




 「スが入る」。都会の方だと、こんな言葉は分からないかもしれないが、大根をそのまま畑に置くと、芯、つまり中心部分がスカスカになったり、果ては空洞になってしまうのである。自らが生きるために、花をつけ、種を作るために自らの身体を食うのだ。一方、人間だって馬鹿じゃあない。そうなったら、そうなったで今度は菜の花のようにして食べる。畑で摘み立てのそれは、おしたしにすると絶品だ。



菜の花


 菜の花はもちろん菜っ葉の花。そのおしたしを食べるまでには、まだちょっと間がある。それまで、しばらくはフキノトウの味を楽しむことにする。女房が言うように天ぷらもいいが、私はやっぱり酢味噌和えがいい。この時期、晩酌のつまみには、これが一番。「お父さん、飲みすぎちゃあダメですよ」。これを言わなければ、いい女房だが・・。お酒には必ずブレーキをかけるのだ。




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華道展とボケの花

華道展1


 赤、白、黄色。入り口には見事なチューリップの花が。そして、辺り一面に洋ランやボケなどさまざまな花が。外の寒さとは対照的に、ここは春爛漫。心弾む光景だった。温室の中でもなければ、ましてや大きな花屋さんの店先でもない。デパートの一角、華道展の会場である。いけばなの心など分かりようもない私のような無粋者でも一瞬、心が弾み、ウキウキするような気分になるから不思議。花はどんな人間の心をも穏やかにしてくれる。




 山梨県の県都・甲府市の玄関口JR甲府駅前にある山交デパート5階の催事場。華道展は草月会山梨県支部が開いたものだ。テーマは「花だより」。そのパンフレットに草月流の家元・勅使河原茜さんは、こんなメッセージを寄せていた。


華道展4


 「いけばなの存在が、空間をそれまでとまったく異なる表情に変貌させる。それがいけばなの最大の魅力であり、いけ手にとっての醍醐味」



 勅使河原さんは、こうも述べている。




 「多くの人で賑わう会場が、植物の力でどのような新しい表情に生まれ変わるのでしょうか。ゼロから空間を構成する面白さや難しさをメンバー全員が分かち合いながら、パワフルでみずみずしい展示空間をつくりあげて・・・」


華道展3


 まさにおっしゃる通り。そこは別世界だった。地下の駐車場からエスカレーターで階を昇る。デパートだから地下には食品売り場があり、階を上がるごとに化粧品や紳士物、婦人物、家具や文具などさまざまなフロアがある。デパ地下では焼きたてのパンの臭いだろうか、芳しい香りが一面に漂っていた。会場には青竹を見事にアレンジした大型作品も。


華道展2


 このいけばな展へのいざないは、サラリーマン現役時代からの知人。たまたまだが、高校時代の同級生の奥さんで、沢山のお弟子さんを持ついけばなのお師匠さん。かつてはこのいけばな展の主催者・草月会山梨県支部の代表も務めた。一方では女流弓道家で、腕前は教師6段。最近ではエッセイにも取り組む、いわばスーパーレディーだ。


華道展5


 展示会は選抜された約100人のメンバーが3日ずつ前期、後期に分かれて自慢の作品を披露する。花は暖房に弱い。書や絵画と違って生き物だから展示も、期間中の取り扱いも厄介で、主催者や出品者は、私達が知る以上に細心の気配りをしている。いけばなの素材によって通期の作品もあるので、展示作品は100点近い。芯、副、妙。同じ流派だから基本となる作風は同じだろうが、当然のことながら作品はみんな違う。書道、絵画、陶芸、それに日本刀などの古美術・・・。展示会の多くは頷いたり、唸らされたりするのだが、何故か、このいけばな展だけは、何時見ても心ウキウキするのだ。




 この時期、ポピュラーなのだろうか、なんとなく春の淡さ、暖かさを感じさせるのがボケの花。赤とも橙色ともつかず、また派手でも、そうかと言って地味でもない。この花を素材にしたいけばなは広い展示会場のアクセントのような印象をもたらしていた。この人はボケが好きなのだろうか。私がムチウチ症のリハビリ治療のため通っている病院の玄関先にいけたお正月向けの大型作品にもボケの花が上手にあしらわれていた。




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若い畳屋さんの夢

桜


 「風さそう 花よりもなお 我はまた 春の名残を いかにとやせん」




 ご存知、忠臣蔵に登場する播州赤穂の藩主・浅野匠頭(守)の辞世の句だ。もちろん、まだまだ寒さは続くが、とっくに立春を過ぎて暦の上ではもう春。だんだん日も長くなり、日差しもひと頃とは、なんとなく違う。庭先の紅梅や白梅も蕾をほころばせ始めた。




 浅野匠頭が辞世とした「風さそう 花よりもなお・・・」の「花」はもちろん桜。匠頭が殿中(江戸城)・松の廊下で高家筆頭・吉良上野介に刃傷に及び、即日、切腹させられたのは元禄十四年三月十五日。そんな桜の季節ももうすぐそこに。


浅野
浅野匠頭

 松の廊下での刃傷は、公式行事の指南役でもある吉良上野介への賄賂が足りなかったことを良しとしなかった吉良の意地悪が原因、というのが物語の筋書き。賄賂政治。政治の世界は400年近く前の江戸のその頃も、今とそんなに変わらないらしい。




 物語に登場する吉良の意地悪は幾つもあるのだが、その一つに朝廷の勅使接待役に任ぜられた浅野に吉良が座敷の畳替えの慣習を教えなかった下りが。土壇場でそれに気付いた浅野家家臣は大慌て。江戸中の畳職人を駆り集め、一夜のうちに200畳もの畳を入れ替えてしまうのである。これも今風に言えば、会社思い、主思いの部下とその営業力、さらに、それを支える普段の人と人との交わりの大切さが。それにしても、この時代、寺社仏閣はもちろん、庶民の家もセレブの武家屋敷もみんな木造建築。当然のことながら大工さんも左官屋さんも畳屋さんも健在だったに違いない。


畳替え  


 わが国の住宅様式はガラリと変わった。木造に代わって鉄筋の建物が増え、木造にしてもモルタル式。少なくとも左官屋さんの出番は減った。家の中に入れば、和室が減ってフローリングの洋室に。畳屋さんだって飯の食い上げだ。職人さんは減る一方だから、いくら会社思いの社員がいたって一夜にしての畳200畳の入れ替えなど神業に等しい。


畳2


 我が家でも数年前、リフォームした折に、だだっ広い田舎家の畳の間をフローリングに変えた。残した畳の間は奥座敷と中座敷の2間だけ。合わせて20畳だが、その畳を入れ替えることにし、親しい友達に知り合いの畳屋さんを紹介してもらった。この畳屋さん、40歳そこそこのアイデアマンで新聞やテレビなどに時々登場する。システムエンジニアの仕事に後ろ髪を引かれながらも曽祖父の代から続く畳店を継いだ。1級畳技能士の資格も。



畳4    畳3


 「でも親父や祖父と同じやり方をしていたら、間違いなくこの商売は壊滅する。アイデアと工夫で、その機能や温もりなど魅力をアピールする一方、畳を新しい住宅様式に合わせて改良したり、お客さんや大工さんなど異業種の人達との双方向での情報交換もする」


タタミワールド
画像:「タタミワールド」HPから


 店の名前も「〇〇畳工務店」から「株式会社タタミワールド」に。インターネットのHP(http://www.tatami-world.com)も大工さんたちのHPとリンクするようにした。ドイツやフランスの若い大工さんとの研究グループも立ち上げた。日本の住宅文化と外国のそれを理解し合うための相互交流も始めている。斜陽産業にあえて帰ってきたこの若者の秘めた夢はでっかそう。ホテルや旅館の風呂場に畳が敷かれる時代でもある。

スリッパ
「タタミワールド」の い草スリッパを愛用しています。


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蛙っ跳びとウサギっ跳び

ハイビスカス


 行ったり、来たり。私がいつもお邪魔させて頂いている沢山のブログの中に、蛙をハンドルマークに使っている方がいる。「マロヤ」さんというのだが、その顔はなんともひょうきんで、一度拝見しただけでも忘れない。グリーンの多分、ガマ蛙だろう。興味深い沖縄の文化を伝えてくれている。




 は蛇と違って愛嬌がある。「蛇のようなヤツ」とか「蛇の生殺し」などといった具合に蛇はいい例えには使われない。これに対して蛙は「蛙っ跳び」などと、その動きを想像しただけでも面白い使い方をされるのだ。蛙と蛇は体形や行動パターンがまったく違うし、イメージ的にも可愛くもあれば、憎らしくも。「古池や・・」。蛙は俳句にも登場する。

蛙

 「蛙っ跳び」と「ウサギっ跳び」。人間がやる蛙っ跳びは蛙が動く様を真似したものだろう。一般には「ウサギっ跳び」と言うのだが、その様がよく似ているので、ここでは「蛙っ跳び」と置き換えさせて頂く。主にはスポーツの世界で足腰の鍛錬に使った。先輩後輩の間柄が厳しい運動部では何かのペナルティーとして、この蛙っ跳び、ウサギっ跳びを強いられるのだ。これがきついこと、きついこと。歯を食いしばってやったこともある。

ウサギ  
 これも今や昔の話。スポーツの世界でも完全に姿を消した。足腰の鍛錬のために良しとされたこの動作は筋肉運動によくないことが科学的に証明されたのだそうだ。科学とか、へんてこな理屈になぜか逆らう自分を時々、バカだなあ~と思うのだが、釈然としないと言うか、一抹の寂しさを覚えないでもない。




 理屈とか科学。全ての世界に必要だし、基本であることに違いない。特に究極を追求するアスリートにとっては絶対に無視できないことなのだろう。100分の1秒、1,000分の1秒を競う世界では当たり前のことだ。あらゆる無駄や障害を排除し、有効な能力の発揮を求める。またそうしなければアスリート足り得ないのである。


陸上


 ただ、この科学と根性の醸成は別問題のような気がするのだ。水泳や陸上などコンマ何秒を争うスポーツとは対照的なボクシングや相撲など、俗に≪ハングリースポーツ≫と言われる格闘技の世界。例えばだが、わが国の≪お家芸≫とまで言われたこれらのスポーツが、皮肉なことに、この≪科学≫が台頭し始めた頃と符節を合わせるように、どんどん地盤沈下した。いわゆる根性と言うものがスポーツの世界でも、ないがしろと言わないまでもおろそかにされた証のような気がしてならない。根底にあるのは科学万能、理屈の教育にあるのではないかとさえ思ったりする。

 
ボクシング

 極ありふれた日常生活の中で、足腰の筋肉を弱くしているなあ~と思うのが便座のトイレ。あれは確実に足の筋肉の退化に一役買っている。それが証拠に和式のトイレに入った時、座るのがえらいこと、えらいこと。ましてや立ち上がる時もだ。「歳のせいだよ」と言われてしまえば、それまでだが、毎日繰り返す当たり前の動作や習慣は、確実に人間の身体の機能を変えていく。科学とか物理を考えない蛙やウサギはいい。本当の逞しさはそちらの方にあるのかも。




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アルプススタンドと桃源郷

 桃2


 間もなく高校野球の聖地・甲子園では、春の選抜野球が始まる。「センバツ」はスポーツ界に春の訪れを告げ、その開幕をも意味する。富士山、南アルプス、八ヶ岳、奥秩父の連峰、御坂山塊、それに、それらの前衛の山々。360度、周囲を山で囲まれた山梨県の甲府盆地は、さしずめ、ドでかい甲子園球場だ。


高校野球


 富士山をはじめ3,000m級の山々はまだ厚い雪をかむっている。春とは名ばかり。暦の上のことで、ここはまだまだ厳冬期。朝、昼、夕、さまざまな陽を浴びて、冷たく、あるいは美しく輝いている。富士山はスタンドのシンボル「銀傘」。前衛の山々は、さしずめ観衆が沸く応援スタンドだ。盆地の底のフィールドでは人々がそれそれの生業を営んでいる。


富士山


 その盆地・球場の東部一帯の山懐やフィールドの、あっちこっちに真っ白いものが輝いている。ビニールハウスだ。今、宇宙ステーションに滞在している宇宙飛行士の野口さんから見れば残雪に見えるに違いない。この地方は葡萄や桃など、言わずと知れた果樹の一大産地。白く雪をかむり、寒々しい厳冬の山々をよそに、ビニールハウスの中は、まさに春爛漫。葡萄棚は早くも緑の若葉を付け、桃畑はピンクの花が満開だ。連日、お花見客で賑わっている



 


 桃の花見? 日本人は花見といえば桜。かつて、この地方の農家も桃の花で花見を演出する知恵はなかった。良質の桃、つまり美味しく、色、形のいい桃を作ってなんぼなんぼ、という考えに過ぎなかった。しかし、何時しか花見客の誘致を考え、切花を花屋さんに持ち込んで営業利益に結びつけるすべも知った。


 桃


 葡萄にしろ桃にしろ、畑ごと丸々ビニールで包んでしまうのだから、文字通りのビニールハウス。中は23度前後の温度に保たれているので寒さ知らずである。昨年の内から重油を炊くのだ。もちろんコンピュータ制御。このコントロールを一歩でも間違えたら一年の苦労も水の泡。大損害の憂き目を見ることは言うまでもない。




 桃の木の枝から枝へ電気コードが引かれ、ボンボリ提灯が。その下にはテーブルとゴザの花見席が設けられ、お客さんは花を愛で、酒を酌み交わすのだ。周囲の山々は雪を被り、空っ風すら吹く外部とは対照的。ハウスの中は、まったくの別世界だ。まさしく桃源郷なのである。飲むほどに愉快になり、カラオケも。暗くなればボンボリに灯が入るので、夜桜ならぬ≪夜桃見物≫、花見の宴も賑やかに繰り広げられる。野点の茶席も演出する。


酒  


 ハウスの中にはミツバチも放たれる。授粉のためだ。このミツバチ、必ずしも隅から隅まで飛び回って授粉をしてくれるとは限らない。高価な桃作り。気ままなハチだけに、その作業を委ねるわけにはいかない。人工授粉は欠かせないのだ。ハウスの中では、そんな人工授粉の体験もさせてくれる。お客への気配りも微に入り、細に入りである。かつて農家は、作物を作ることに専念、作ったものは農協などの販売ルートに委ねた。だから消費者と直接向き合うことは少なかった。桃がハウスの中で作られるように、それを作る農家も変わった。盆地のフィールドと山懐のアルプススタンドにも春の息吹が生まれている。




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お酒の蔵開き

養老酒造


 舟口(鮒口)からこぼれる滴は、辺りに芳醇な香りを放っていた。集まってきた人達は、ちょっと大きめな猪口をかざして、その芳しい味を楽しむのだ。お酒好きの人なら、たまらない蔵開きの風景である。二月も半ば。私達の山梨に限らず、全国の酒蔵ではこの時期、こうした蔵開きの行事が行なわれているのだろう。昨秋、収穫された酒米が芳醇なお酒として生まれ変る瞬間なのである。


養老酒造2


 ササニシキやコシヒカリ。酒米は、私達が日常食べているこれらのうるち米と違って、どちらかと言えば、もち米に近い高級米。それを精米に精米を重ねてお酒の原料にするのだ。精米というより、削りに削ると言った方がいいのかもしれない。この精米率が高いほど高級酒に。酒酵母菌と共に昨年秋に仕込まれた酒米は、発酵を繰り返しながら熟成していく。そこに欠かせないのが杜氏と呼ばれるお酒造りの魔術師だ。





 2月14日の日曜日。私達がお邪魔した酒蔵は、甲州にあって歴史と伝統がある養老酒造。その名の通り「養老」という銘柄のお酒を出している。何年か前にはアルコール度数20度の「櫂」というお酒も。酒蔵は山梨市の笛吹川に架かる八幡橋に程近い所に。お酒造りに欠かせないのが良質の水。その水は笛吹川の伏流水が地下浸透したものだという。源流は山梨と埼玉の県境にある奥秩父連峰。酒蔵構内にある深い井戸からくみ上げられる。


養老   櫂
         画像:養老酒造  「養老」と「櫂」                       


 蔵開き行事。その昔から今のように一般のお客さんを呼び込んで商いの一助にしていたのかどうかは知らないが、この日は従業員総出でお客さんをもてなすのである。大きなタンクが並ぶ蔵では、社長の息子さんが大きな油圧式ジャッキを使った圧搾機を操っての酒搾りを実演。搾りたてのお酒をみんなに振舞うのだ。別棟の二階では社長自ら陣頭指揮で新酒による酒宴のサービス。太く、長い眉がトレードマークの、この社長は71歳。美人の娘さんやお嫁さんも愛嬌たっぷりだ。



養老酒造3


 何よりも味わいがあるのは、恐らく築何百年の古民家の中で飲むお酒。それも搾り立てだ。柱も床も天井も黒光りして、いかにもその酒蔵の歴史を髣髴とさせてくれる。その柱の一本には、これまた古めかしい柱時計が今の時を刻んでいた。ランダムに並んだテーブルを思い思いに囲んで、お酒を酌み交わす。清酒になる前のどぶろくも。昼間のこんな酒は実にうまい。お酒をお飲みにならない方だって愉快になるはずだ。


蔵開き


 「あれ、お久しぶりです。こんな所でお会いするとは・・・」





 るいはるいを呼ぶのか。何年ぶりかの知人に、それも何人もお会いした。甲府市やお隣の甲州市などからだが、みんな奥さんとご一緒。最初は運転手代わりに連れて来られたのだろうが、奥さん方もまんざらではなさそう。懐かしさも手伝って意気投合。みんなの笑顔がまたいい。お酒は進んだ。



養老酒造4    養老酒造3

 この蔵の社長と杜氏によれば、山梨県の造り酒屋は減る一方。その昔は50を超した酒蔵は、やがて30になり今では11になった。酒造りの魔術師・杜氏だってその数しかいないことになる。焼酎ブームがその影にいることは確かだ。日本酒党の私にはちょっと寂しい。




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ジェネレーションの違い?

スポーツ


 「それホントの気持ち?」。ジェネレーションギャップだろうか。新聞やテレビで若いアスリート達が事も無げに言う「楽しむ」という言葉だ。さまざまなヒノキ舞台に挑む時はむろん、過酷な練習に対しても同じ言葉を使う。甲府市にあるスポーツジムのプールで泳いだ後、ジャグジン風呂に浸かりながら、そんな事が話題になった。




 陸上の競技や水泳競技・・・。さまざまな種目に挑むアスリート達。栄光の裏には日頃のたゆまぬ努力と過酷な鍛錬がある。マラソンのランナーは毎日、当たり前のように30㌔、40㌔、50㌔を走り込むし、水泳選手は7,000㍍、8,000㍍、日によっては10,000mをはるかに超える距離を泳ぐという。指導コーチの厳しい罵声にも耐える。


スポーツ2


 それを乗り越える精神力がなかったら、およそ世界のヒノキ舞台に立てっこないし、アスリート足り得ないのだろう。もちろん、その人が持つ先天的な能力もある。でも、本人の人並みはずれた努力と精進があることは誰にだって分かる。ヒノキ舞台に立つアスリートとは、それが出来た者達だけに与えられた特権だろう。そんなことは、これといった忍耐力もなければ、根性もない私にだって分かる。その次。勝つか負けるか、コンマ何秒、コンマ0何秒の世界に挑む人達の心の持ちようだ。監督や指導コーチから課せられた厳しい練習メニューもしかり。ましてや、世界選手権大会やオリンピックのようなビックな大会に挑む時、「楽しむ」なんていう心の余裕があるのだろうか。余計な詮索かもしれないが、「楽しむ」などという気持ちは押し殺されてしまうのではないかと素人は思ってしまう。


国旗


 ジャグジン風呂の中で、そんなたわいもない話をしたのは日曜日の昼下がりだった。平日なら男性だと私のような勤めをリタイアした人や家庭のご婦人達。しかし、日曜日とあって50代の現役もいた。たまたまだが、その50代氏は高校時代、水泳競技ではちょっと鳴らしたアスリート。自分ではそのことを一言も言わないが、幾つものタイトルをとり、記録を保持した。むかし取った杵柄。今もマスターズの水泳で活躍している。


プール


 「楽しむという言葉、私にもちょっと違和感がないわけでもありませんが、あれは案外、素直な言葉かもしれません。今の若者は、全てとは言いませんが、プレッシャーというものを、ひと頃の人のように感じないのです。見方を変えれば、プレッシャーに強いんです」




 この人はこんなことも話してくれた。




 「ある年代以前のアスリート達は例えば、国際大会に出る時、恐らく、みんなが日の丸、つまり日本の代表であることをいやが上にも背中に背負った。もちろん、今のアスリート達にそれがないというのではありません。でも、その一方で、アスリートの≪個≫が根付いてしまっているのではないでしょうか。自分を主張することが上手になってきています」


表彰台  


 そんな話を聞きながら昭和39年の東京オリンピックのマラソン銅メダリスト・円谷選手の後の自殺悲劇を思い出した。今の若者にはないプレッシャー以外の何ものでもなかった。今、カナダのバンクーバーでは冬季五輪が。アスリートの皆さん、存分に「楽しんで」・・・。日本人は目の見えるところでも、見えないところでも、どんどん変わっている。




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春へ果樹の剪定

葡萄

 「もう葡萄の剪定は終わった?」




 「やっと済んだよ。今度はだ。息子と二人で、あと1週間はかかるかなあ~」



 山梨県甲州市の勝沼町で、葡萄を中心に果樹園を手広く経営する高校時代の同級生のこの男は、地域でも名うての篤農家。何年か前、息子さんが、それまで勤めていたJRを辞めて自ら後継者になってくれた。もちろん、奥さんも手伝ってくれる。


葡萄9月
H21年9月の葡萄


 栽培面積は約2町歩。主に葡萄だが、そこで収穫したものは、JA農協などの出荷ルートに頼らずに自前でさばいてしまうという。インターネットなどでの顧客を相手に宅急便で配送したり、直売店で処理するのだ。その割合は6:4。つまり6割はインターネットなどを通じて大事に増やして来た顧客。残る4割が直売。いわゆる観光葡萄園だ。



 「俺はお客さんをとことん大事にする」




この男はいつも、そう言う。だから一度来てくれたお客さんは毎年のように来てくれるのだそうだ。シーズンになると東京や神奈川、千葉、埼玉などからドライブがてらやって来る。そのお客さんが、また宅急便ルートの顧客にも。家族総出、夜なべもして箱詰めしては宅急便業者を待つ。奥さんも働き者だ。暇な時には書道を習い、見事な字を書く。




 2町歩近い果樹園。比較的作業の時期が長い剪定作業はさて置き、シーズン最盛期の仕事は2人や3人で間に合うはずがない。観光葡萄園の売店や宅急便で送る商品の箱詰め作業に人手はかかる。地域の主婦など、かなりの数のパートさんを動員するという。「俺は百姓ではなく商人さ」。こんなことを冗談交じりで言うほど、この男の経営感覚はシビアだ。




 山梨県地方の葡萄栽培農家には、剪定作業の遅れが祟っての苦い経験がある。もう10年ほど前のことだが、この地方では60年ぶりという大雪に見舞われたことがある。葡萄棚があっちこっちで押し潰されたのだ。剪定を早めに済まして棚がスリムになっていた葡萄園は難を免れたが、それを怠った葡萄園は軒並み壊滅的な被害を受けた。


大雪


 雪国の方ならお笑いになるだろう。大雪といっても、その積雪量60㌢前後。ところが交通網は完全といっていいほどマヒ状態に陥り、日常生活は大混乱した。今の時期より一ヵ月ほど早い1月中旬のことだった。内陸地方で空っ風が吹き、乾燥こそすれ、雪は少ない山梨県地方の人達の慌てふためきぶりは傍から見ても想像して頂けるだろう。それ程太くもない葡萄のツルや細い針金の支線に積もった雪が頑固な棚を押し潰そうとは、誰も考えてもみなかった。「同じ轍を踏むまい」。以来、この地方の葡萄栽培農家は、剪定作業を早めるようになった。



葡萄畑
ブドウ畑


 果樹のみならず、この時期は樹木の剪定期樹木が水を上げる、つまり活動を始める前に剪定を終えなければならないのだ。葡萄ばかりでなく、桃やスモモ、サクランボ・・・。山梨の果樹栽培農家は寒風にさらされながら大詰めの剪定作業に追われている。銀杏並木やポプラの並木。街路樹の剪定だって同じだ。こちらは脚立や梯子なんかほとんど使っていない。バケット付きのクレーン車だ。ただ剪定の仕方は庭木のそれの参考にもなる。あと二ヶ月もすると、この地方はピンクのジュータンと化し、桃の花で埋まる。春爛漫だ。

桃


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広告スポンサー

水戸黄門  
TBS・HPより

 ナショナル=「水戸黄門」。パナソニック=「水戸黄門」。ナショナル改めパナソニック。テレビの人気シリーズ「水戸黄門」の番組スポンサーだ。社名を変更して間もないが、同社がこの番組を支えてきたことだけは確か。スポンサーと人気番組は、いわば表裏一体。人気があるからスポンサードも容易だし、見方を変えれば、そのスポンサーがあるから番組が成り立つ。番組スタッフの努力もさることながら、スポンサー側の番組への情熱も見逃せないだろう。何十年と続くこの人気ドラマの舞台裏には、茶の間で無邪気に見ている私のようなお気楽オジサンには知るよしもない悲喜こもごもの≪ドラマ≫があったのかもしれない。




 NHKはともかく、民放の全ての番組は、このスポンサーの支えで成り立っている。新聞だって同じだ。このコマーシャル・スポンサーがなかったらキー局、ローカル局を問わず民放局の経営は成り立たないし、新聞社だってやっていけない。当のスポンサーにしたって、この二つの強力媒体を使わなかったら営業実績は得られないし、自分たちの意志を周知することは難しい。いわば、持ちつ持たれつの関係である。


サッカー


 スポーツだって同様。駅伝マラソンでは、ランナー達がゼッケンに刻んだスポンサー名を胸に走る。サッカーのチームだって同じだ。野球のチームは、それ自体が球団を持つ会社の広告塔。フロントは選手確保に奔走する一方で、スポンサーの確保に必死の努力をしていることは容易に想像できる。このどちらが欠けても所期の目的は叶わない。いい選手を確保するにはお金が。スポーツチームのフロントと広告スポンサーの関係は、放送局や新聞社のそれと変わらない。




 私も熱いファンの一人。山梨には「ヴァンフォーレ甲府」というサッカーチームがある。サッカーファンならご存知、J2のチームだ。昨年、念願のJ1復帰を目指したが、紙一重、惜しくも叶わなかった。このチームは元々、名もない「甲府クラブ」というクラブチームだった。正月の全国高校サッカー選手権大会で全国制覇を成し遂げた山梨学院高校を指揮した監督もかつてはその中にいた。この監督は高校時代の同級生だから、高校サッカーの行方には人一倍熱が入ったものだ。親しい仲間がみんなでこの男の快挙に拍手を贈った。


ヴァンフォーレ甲府


 とにかく、そんな名もないチームが装いも新たにJ2に名乗りをあげ、後にJ2に転落したものの一時はJ1で堂々と戦った。来期は2年ぶりのJ1復帰を果たしてくれるだろう。私達の願いだ。名もない星が彗星のようにプロサッカー界に登場した背景にはフロントの努力もさることながら、献身的ともいえるスポンサーの支えがあった。もちろん地元意識が高じたサポーターの応援があったことは言うまでもない。

VF
画像:VF甲府HPより

 主力の広告スポンサーは「はくばく」という米麦の食品会社。メジャーになりつつあるとはいえ山梨の一企業だった。胸に背に広告をつけた。J1に仲間入りしたり、J1をうかがうまでになった今は大スポンサーが名乗りを上げてくれるが、その「はくばく」は名もない時からのスポンサー。このスポンサーに足を向けてはいけない。いつまでも・・・。

はくばく  

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末は博士か・・・

3.jpg


 「末は博士か大臣か」。幼い頃、記憶力や読み書き、数字などにめっぽう詳しく、周りの大人たちをびっくりさせる子供がいる。そんな時に目を丸くする大人たちが多少のお世辞も込めて言う台詞だ。




 時々、テレビなどに登場してくる神童のような子供たちばかりでなく、巷にもそれに近い子供がいる。若い頃、そんな子供さんにお目にかかったことがある。いずれも知人の息子さんだが、その一人は当時、小学校に入って間もないくらいの歳。動物や植物に興味を持ち、恐らく、親から買い与えられたものだろう。分厚い動・植物図鑑を見て遊んでいるのだ。お父さんは新聞は〇〇新聞、テレビはNHKしか観ないという、ちょっと珍しい方だった。



図鑑


 こちらが面白がって質問してみると、立て板に水で答えが返ってくる。




 「おじさんねえ、それは亜熱帯植物で、原産地は〇〇。〇〇科の植物で、背丈は〇〇くらい。〇〇の頃、〇〇色の花を咲かせる。花言葉は〇〇と言うんだよ」





 その植物の原産地であれ、科目であれ、姿、形であれ、ものの見事に説明してくれる。動物だって同じだ。こちらに問いかける知識があるわけではないので、図鑑の後ろの方にある索引から、これなら分かるまい、と思えるような動・植物を挙げてみると、今度は・・・。


カメ   5   カエル


 「それねえ、〇〇ページに載っているよ」




 そこまで来ると、こちらも大人気なく、むきになりたくもなる。「〇〇は?」「〇〇は?」と矢継ぎ早に質問するのだが、「オジサン、大人のくせに知らないの?」と言わんばかりにニコニコしながら全問正解。


花1   花2   花3


 「こいつの頭の中には、この図鑑がそっくり入っているのか?」





 舌を巻く、と言う表現を通り過ぎて、可愛いはずの子供が咄嗟に憎らしくさえ見える。無知なオジサンのひがみ?そんなオジサンが言う言葉が「この子、末は博士か大臣ですよねえ・・・」




 これに対してお母さんは、まんざらでもなさそうに、こう言うのである。




 「外であまり遊ばず、この子、図鑑ばかり見ているんですよ。困ったものです・・・」




 こんな子もいた。その子は鉄道に興味を持ったのか東京の山手線はもちろん、東海道線、中央線など全国の国鉄(当時)や私鉄の駅名を、これまた立て板に水。そればかりではない。駅名の起こりやそこまでの運賃乗り継ぎ駅に至るまで説明してくれるのである。「この子、大人になったら鉄道博士ですねえ」。そのご両親の答えも、やはり同じだった。


電車


 「使用前」、「使用後」という言葉がある。漫談家の綾小路きみまろではないが、それから30年後、40年後。不思議なことに、その子たちは只の平凡な大人に。大臣でも博士でもなかった。

 

「そんなこと、ありましたかねえ。でもみんな忘れちゃいました」。

 


 子供の頃の優劣。大人になって逆になるケースが往々にして世の常?ガキ大将だったり、鼻たらし小僧だったりした子が社会的には活躍しているのだ。「末は博士か大臣か」。大人への、人生へのレールは子供だったある時期だけを基点に敷かれているものではないらしい。
子供
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タバコは不思議な商品

タバコ 


 タバコを吸う人間は今や、悪者。悪者といわないまでも嫌われ者で、肩身の狭い存在であることは間違いない。電車や飛行機ばかりではない。レストランに行っても、ホテルに行っても、みんな禁煙。会社、官庁のオフィスにも灰皿がない。私達、田舎の公会堂や公民館などの集会施設もダメ。家に帰れば、かみさんや娘が嫌な顔をする。



 「俺達、喫煙家は一体どうすればいいんだ」



 頭に来て文句の一つも言いたくなる。確かに嫌煙権はある。でも喫煙権だってあるはずだ。麻雀をしていても親しい仲間でさえ、タバコを吸うと嫌な顔をする。ついこの間まで同じようにタバコを吸っていた者までもだから釈然としない。それが分からないわけでもない。タバコを吸う人間でも一旦、部屋の外に出て、その部屋に戻ると臭いこと臭いこと。タバコの臭いが部屋中を蹂躙しているのである。その瞬間は嫌煙者の気持ちが分かり過ぎるほど分かる。でも・・・。


空港  
 


 喫煙家の私が言いようのない、わびしさを覚えるのが外国旅行の時。飛行機に乗ってしまえば吸えないから、搭乗前に喫煙所を探すのだ。確かにどこかにはある。やっと見つけてホッとする思いで中へ。いる、いる。同じような仲間が。そのスペースは畳の大きさにすれば4畳半か6畳足らず。みんな「吸わなければ損」と言わんばかりに黙々とタバコをすっている。自分もその一人のくせに、不思議にもそんな人達がバカに見えるのだ。相手側もみんな、そう思っているのだろう。何ともいえない不思議な光景なのだ。



喫煙室

 

 成田空港。不思議な光景はまだある。煙でモーモーとした喫煙室の壁に設けられたテレビからは、エンドレスでタバコのコマーシャルが。マイルドセブンを初めとした国産タバコやケントなど外国タバコのコマーシャルが次々と流れて来る。そればかりではない。「タバコの起源はマヤ文明の昔から・・・」。タバコの起こりやタバコと人間の関わりまで解説しているのである。

 

  マヤ絵文書

マヤの絵文書「タバコを吸う神」
画像:JT


 これもビジネス、転んでも只では起きない商業魂と言ってしまえばそれまでだが、飛ばす飛行機はもちろん、とてつもなく広い空港構内からタバコを締め出そうとしている割には、なんとも歯切れが悪い。タバコをお吸いにならない方は、こんな所に来ないし、第一関心もないだろうからいいが、もし、こんなことを小難しい嫌煙家が知ったら目くじらを立てるに違いない。


タバコCM      CM       


 私もついついやってしまうのだが、日本人はくわえタバコや歩きながらのタバコも平気。自分の車の中だからと言ってしまえばそれまでだが、くわえタバコでハンドルを握る若い女性だって珍しくない。こと、タバコに限って言えば、日本人ほどマナーの悪い国民はいない。昨年、数日間の韓国行きと約一ヶ月間のアメリカ旅行をしたが、そんな光景は一度も見なかった。「喫煙は、あなたにとって心筋梗塞の危険性を高めます…」。どのタバコの箱にもこんな注意書きが。喫煙者もそれを知っている。世の中、商品と名の付くものは無数にある。しかし「健康に悪い」と言って売っている商品は一つもない。不思議な商品だ。




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春祭りと味噌作り

大神宮祭

 「福は内、鬼は外」。無病息災、家内の安全と社会の安寧。2月3日は節分。全国の寺社仏閣では今年も賑やかに節分会の行事が繰り広げられ、家庭でも思い思いの方式で、豆まきが行われた。不況、その一方で起きる殺伐とした事件や事故。しけた昨今だからこそ「今年こそはいい年であって欲しい」。みんなの願いが込められている。開けて4日は立春。早いもので暦の上ではもう春だ。

大神宮祭2


 節分会。私達、庶民にとっては、むしろ豆まき、と言った方が馴染み深い。山梨県内では、そこが日蓮宗の総本山と言うこともあって身延山久遠寺の節分会が有名。毎年、大相撲の人気力士の豆まきに近郷近在の善男善女が集まる。一方、甲府市の中心街に程近い所にある二つの大神宮(柳町と横近習町)のそれも有名。こちらは単なる節分会ではなく二つの例大祭行事の一環。今年も3万人を超す善男善女で賑わった。


大神宮祭り
大神宮祭
画像:山梨日日新聞miljan


 二つの大神宮は直線で1キロぐらい離れていて、この日は夕方から周辺道路も含めて前面交通止め。祭りロードと言うか、参道に早代わりした街路には、たこ焼きや綿菓子、だるまなど祭りには付き物の露店がずらりと並ぶ。二つの社では午後6時から、それぞれの神事と豆まきが。



屋台            屋台2


 横近習町大神宮。私は7年前の還暦、つまり年男から毎年、お招きを受け、豆まきの末席を汚している。地元女子小中学生の「浦安の舞い」の奉納、続く「追難式」のあと、来賓とも言える人達が長袴に烏帽子姿で拝殿から代わる代わる豆をまく。まず神殿に拝礼したあと拝殿の四隅に3回ずつ「福は内」の掛け声と共に豆をまき、最後に外にいる何匹もの赤鬼、青鬼めがけて「鬼は外」。境内を埋めた善男善女の家族連れは大歓声を上げるのだ。



大神さん

動画:山梨日日新聞miljanへ


 この豆。最近ではピーナッツをまく、洒落た所もあるそうだが、ここはやっぱり大豆。小袋に入れてまいたら参拝者も拾えるのになあ~と思わないでもない。とにかく、この祭りは山梨県では「大神さん」の名で親しまれ、甲府盆地に春を告げる祭りとして300年以上の歴史を刻む。「大神さん」を境に南アルプス市の若草町で繰り広げる「十日市」や、やはり甲府の湯村温泉郷の一角にある「厄地蔵さん」(厄除け地蔵尊祭)と春への先駈けの祭りが続く。私にはよく分からないが、最近では節分に合わせて「恵方巻」を食べる習慣も。




豆まき


 大豆と言えばこの時期、一般家庭でも味噌作りが始まる。手間のかかる味噌作り。昔と比べると、めっきり少なくなったが、無添加で美味しい自前の味噌作りは最近また見直されている。我が家でも親しい仲間に教わりながら、ここ数年、毎年作っている。やっぱり、うちで作る味噌はうまい。一味もニ味も違う。「お父さん、今年も作りましょうね」。普段、面倒くさがり屋の女房も味を占めたのか、友達にも呼びかけての味噌の仕込みに手ぐすねを引いている。




 良質の大豆を大釜で煮込んで挽き、麹と塩で作るのだが、来年の「大神さん」や「厄地蔵さん」の頃になると十分に熟成された手作り味噌が食卓に載る。春はまだ暦の上だけ。寒さはしばらく続く。でも春を告げる祭りや味噌作りは人間の心を和らげてくれる。



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我が家の金庫と実権

札束


 組織お金があれば動くという。特に役所にあっては、人や金を扱う部署は目に見えない力を持つ。今は財務省だが、かつての大蔵省もその一つ。政治の世界にあっても権力者といわれる人達は、この二つを備え持っている。「政治とカネ」で渦中にあるどこかの国のボスもそうだ。どこで貯めたか知らないが、庶民にはおよそ縁遠い何億円ものお金を事も無げに右から左に動かし、何十億円もの資産を持って権力を振るう。そんな話を年中、聞かされていると、本当は縁遠いはずの私達庶民も、へえ~、と思うくらいでびっくりしなくなるから不思議だ。




 大蔵大臣。この言葉は家庭やグループなど市井では財布を握る人のことを総称する代名詞に使う。今はその大蔵省がなくなって財務省になってしまったから、この「大蔵大臣」は「財務大臣」に置き換えられるのだろうが、やっぱり「財務大臣」ではピーンとこない。同じように文部省唱歌もそうだ。文部科学省唱歌と置き換えるのだろう。


財務省
財務省


 そんな、らちもない話はどっちでもいい。我が家ではやっぱり「財務大臣」ではなく「大蔵大臣」。「総理・代表」は痩せても枯れても私だが、「大蔵大臣」ポストはかみさん。我が家の金庫、金庫などと言えるたいそうなものではないが、薄っぺらにしても財布は完全にかみさんに握られた。どこかのボスとは比べようもないし、一緒にしたら「このバカ」と言われるのがオチだ。小さいながらもカネを握ると、かみさんの権力は絶大になる。今年1月25日でちょうど結婚40年。もはや「総理大臣」とは名ばかりで、我が家では政権を乗っ取られたに等しい。でもそれでいいと思っている。奪還しようなどと思っていない。


お金


 かみさんに財布を委ねて久しい。考えてみれば、サラリーの支給が給料袋から銀行振り込みに変わった頃と時節が符合する。薄っぺらにしたって給料袋をポンと差し出す亭主の私にも、それなりの自負と大局観があったし、受け取る側の女房だって少なからず、ありがたさを感じたに違いない。


財布


 ところが、この給料が目に見えないところで銀行口座に入ってしまえば、話は別。本当に汗水たらして稼ぐ亭主の存在は薄らいでいくのだ。子供だって頭では分かっていても学費や小遣いを直接貰うのはお母さん。いつの間にか≪交渉相手≫は違ってくる。家庭という小さな社会でもお金は人の心を動かすのだ。ひがみでも愚痴でもない。私の場合、給料袋の時代から女房にポンと渡してきた。それが私の哲学だった。つまり、お金の管理は≪大蔵大臣≫に全権委譲。その代わり≪総理≫が使うお金は問答無用。時には≪機密費≫も。もちろん支出伝票なんか必要ない。≪大蔵大臣≫にしてみれば、腑に落ちないと思うこともあっただろうが渋々出して来た。吹けば飛ぶような我が家の金庫。どう扱おうが、私は干渉しないことに。こんなお金の動きも本質的には、どこかとあんまり変わらないかも。




 お金はその社会が大きかろうが小さかろうが、確実に何らかの影響をもたらす。良くも悪くも人をも動かすのだ。当然そのお金を動かしているのも人間。うちのかみさん、その両方をいつの間にか握った。形式的にはナンバー2だが、今や主のような顔をしている。これもどこかのボスたちと同じ・・・?




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「不自由と不幸は違う」

風景


 「私は(目が)不自由だけど、不幸じゃあない。そんなことを思ったことは一度もありません」



 この人は、はっきりとこう言い切った。その顔は極めて明るく、その話し方はあっけらか~んとしていた。甲府市で鍼灸マッサージの治療院を開業している先生。今は59歳のお歳だが、27歳の時、突然襲った目の病で光を失った。失明である。そのいきさつを話してくれたことがある。


11.jpg


 「その頃、私も、どこにでもいるようなサラリーマンでした。仕事、仕事で夢中に毎日を過ごしていました。ところが、ある日を境に目がかすむようになり、医者の診察を受けたのです。医師の診察結果を聞いた時、頭の中が真っ白になりました。『残念だが、あなたの目は光を失う』と言うのです」


光1  


 その病気、症状から治療するすべがないと言うのだ。完全失明を宣告されたのである。この人の、その時の驚き、これから先への不安と言いようのない暗闇への恐怖・・・。心のありようは手に取るように分かるし、察するに余りある。「もし、自分がその立場にいたら・・・」と考えると、同情以上のものを禁じ得なかった。




 この人は強かった。もちろん動転したという。しかし、動転などしている余裕はなかった。時間がない。われに返った時、それまで夢中でやって来た仕事と会社に決別、やはり甲府市内にある県立の盲学校の門を叩いた。これからの人生の活路を鍼灸マッサージの仕事に求めたのだ。少しでも光があるうちに勉強しなければならなかったという。


光


 鍼灸マッサージ治療院を開業して30年を超えた。甲府に住んでいた時分、ギックリ腰による腰痛や四十肩、五十肩で悩んだ時、随分お世話になった。なぜか息が合う。先生というより友達のような真柄である。山梨市の実家に引っ込んでしまったことやムチウチ症(頚椎捻挫)のリハビリで病院通いをしているせいもあって、しばらくご無沙汰気味。甲府に出た折に治療方々、覗いてみた。元気で頑張っていた。




 面白いと言ったら言葉が適当ではないかもしれないが、この人は治療室の隣にある居間のテレビをいつもつけている。もちろんテレビなんか見っこない。音を聞きながら仕事をするのだ。ニュースであれ、バラエティー番組であれ、≪見える≫のだという。




 「私は言葉さえ発してくれれば、みんな見えるんです。歌手であれ、タレントさんであれ、30年ちょっと前までの人だったらまぶたの裏にあります。若い方々は分かりませんが、それでも声を聞けば、私なりに、その表情まで想像できるんです。富士山の積雪やダイヤモンド富士が話題になれば、その光景も、またやがて来るお花見だって、分かりますよ。目の見える人より、想像力は豊かですから、場合によっては普通の人が見えないものまで見えるかもしれませんね・・・」


富士山


 あっけらか~んと、しかも事も無げに言う。「障害を不幸だとは思わない」と言い切る。この先生の方が目の見えるはずの私達よりはるかに周囲が見え人の心も見えているのかも。




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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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