過剰包装

 それ程、外国を歩いているわけでもないが、そこで、ふと考えさせられることがある。包装の仕方の違いだ。中国やアメリカ、それにフランスやスペインなどヨーロッパの国々。どこで買い物しても、その包装や入れ物は極めてラフ。日本のように包装を過剰にする国はない。その違いは誰が見ても歴然としている。習慣や国民性の違いといってしまえば、それまでだが、やっぱり合理感覚の違いだろう。


包装紙


 わが国の場合、お土産物一つとっても包み紙入れ物に細心とも言える気配りと工夫をする。高級果物のメロンやマンゴーに到っては桐の箱にまで入れてしまうのである。高価イメージのシールやリボンなんかも当たり前。消費者側もそれが当然と思っているし、むしろ、それを求める場合だってある。一流デパートのように包み紙そのものがブランドの証だったりする。ただ、この一流デパートの包み紙は時の流れの中で、地殻変動も。山梨で言えば「岡島」、東京で言えば「三越」もその一つかもしれない。

メロン

 消費が経済成長の原動力、などと分かったようなことを言われると返す言葉もないが、よく考えてみると、間違いなく無駄。なにも立派な紙を使ったカラフルな包み紙や桐の箱を食べるわけでもなく、開いた後はただのゴミ。当然、この包装にはそれなりのコストが。この過剰包装の習慣は、日本人が長い間に身に付けさせられた「見栄」の裏返しなのか。それとも形や外見にこだわる日本人の特性なのか。


包装紙2


 そんなたわいもない事を考えていたら茶の間のテレビで「見た目の損得論」などと、これまたたわいもない番組をやっていた。晩酌をしながら何気なく見ていたバラエティー番組。何人かの人気タレントさんに囲まれた経済アナリストが真面目顔で話していた。それによると、人間、イケメンだったり、感じのいい風貌やイメージを持った人は、それと反対の人と比べると一生のうちでは、お金で換算すると4,000万円の得をするというのだ。




 番組は「実験」と称して街頭にイケメンと、そうでない男の人を二人並べて広告入りのティッシュを道行く人に配らせた。どちらの方が沢山配るか、言い換えれば道行く人たちがどちらからティッシュを受け取るかだ。隠しカメラでそれを追って見せるのだが、結果はイケメン男性に圧倒的な軍配。その差は歴然としていた。女性の場合の就職試験面接にもその差は知らず知らずに現れているのだそうだ。




 「見た目」というのは理屈では分からない不思議な力を持っている証。過剰包装はそんな日本人の心理を商いの中に捉えているのだろうが、考えてみればやっぱり無駄。ゴミの山への貨物列車だ。そんなことを考えるともなく晩酌を重ねていたら、うちのかみさん、「お父さん、これをお中元として送りたいんですけど、包み紙、これでいいかしら。これだと安っぽく見えるかしらねえ」。


ゴミの山


 ひと頃、イケメンの代表格のようにオバサマ方から人気を集め、追っかけに囲まれた、あのヨン様は・・・。どうやら日本の奥様方は包装紙ばかりでなく、マスコミにも弱い。マスコミに取り上げられなくなると、あっさりと忘れてしまうのだ。 騒がしさを増した参院選。これだって「見た目」やマスコミによって作られる「人気」というレッテルにも左右されていく。「総理大臣にふさわしい人」がいい例だ。その人を支持するのもしないのも気まぐれなのだ。




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Simple is best

 [Simple is best]。うまいことを言ったものだ。フレーズだって、まさにシンプル。この言葉は古今東西、普遍のような気がする。人間、単純であった方が何事にも分かり易い。しかし、これまた古今東西、単純に行かないのが人間であり、人間の世界かもしれない。

パソコン


 ここで言いたい「Simple is best」は、そんな小難しいことでも屁理屈でも何でもない。このブログをやっていて、つくづく思うことである。アナログ人間が遅ボケにパソコンを習い、インターネット、果てはブログにハマリ、パソコンに向かいながら痛感することなのだ。自ら記事を発信する一方で、人様の記事やメッセージを一人でも多く拝見させて頂く。このこと自体、当たり前なことだと思っている。




 ところが、目指すページがなかなか開かないのだ。「待機中」「不明なゾーン」。10秒、20秒ならまだいい。これが1分、2分となるとイライラするのだ。10分、20分、ましてや1時間、2時間を考えればわずかな時間だが、この待つ時間がなんと長いことか。「お前は気が短いんだよ」とお叱りを受けるかもしれないが、正直言ってうんざりするのである。


時計


 その時どうするか。おっしゃる通り、せっかち者だから、お目当てのページが開かれるのを待ちきれずに次ぎのステップに移ってしまうのだ。百歩譲って、それがまかり通ったとしても、その後にはツケが回って来るのである。




 それを繰り返すと結果的にパソコンがストレスを貯めてしまうのだ。アナログ人間が「ストレスを貯める」などと、分かったようなことを言うのは似合わないかもしれない。しかし経験から、それを繰り返していると必ず、パソコンはトラブルを起こすのだ。その時に、為すすべを知らないので、やることは一つ。再起動して振り出しから改めて手順を踏んでいくのだ。これがまた煩わしい。せっかち者の所以である。




 その原因をアナログ人間なりに考えた。「大きなお世話」とお叱りを受けるかもしれないが、ブログのベテラン、つまり、それへの知識と技術をお持ちの方に、トラブルの原因が多いようにお見受けした。高度なテクニックを施すものだから、コンピュータだって解析するための時間を要するのだろう。動画文字もその一つ。これは単なる私の経験則。シンプルな発信をしてくれるブログにトラブルは少ない。


1


 他山の石。同じ轍は踏むまいと思っている自分も人様にご迷惑をかけているのではないかと思うことがある。私のブログは日常生活の中で見たもの、感じたものを文字と写真で綴っているエッセイ。素人なりに文字はともかく写真の多用は、それなりの負荷を招いているのではと思ったりする。事実、次ぎへのステップに時間がかかるようになった。




 私が住む山梨市は甲府盆地の東北部。山間部とはいかないまでも、それに近い。これもアナログ人間の経験則だが、お天気の悪い時の接続はよくない。科学的な根拠を持って言っているのではないのだが、雨の日などは極めて接続がよくないのだ。総じてこの世界に知識豊かな若い方々と反対に、一般的にアナログ層のブログの方がお訪ねの接続がし易い。Simple is bestである。発信する文章は読んで頂くもの、写真は見て頂くものだ。




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かかあ天下と侍ジャパン

サッカー


  決勝トーナメント進出。侍ジャパンの大活躍で25日の日本列島は沸きに沸いた。ゴールを決めた本田や遠藤、岡崎の活躍が私達日本人にとって文句なしにサッカーW杯を身近な存在にした。普段、サッカーにおよそ関心を示さなかった、うちのかみさんでさえ、「お父さん、勝ったわよ、勝ったわよ」と、朝から大騒ぎ。前の晩、飲みすぎて、まだ、白河夜船の私を叩き起こした。飛び起きて見た茶の間のテレビは、喜びに沸くイレブンはもちろん、我が事のように抱き合って喜ぶ内外のサポーターの姿を映し出していた。繰り返し映し出す鮮やかなゴールシーン。それを伝えるアナウンサーも興奮していた。




  この日のテレビはどのチャンネルもサッカー一色。恐らく、ご家庭はもちろん、職場でも学校でも侍ジャパンの話題で持ちきりだったに違いない。チンケといったら言葉が悪いが、閉塞感が漂う日本列島をパッと明るくしてくれたことだけは確かだ。29日に予定されている決勝トーナメントの初戦、パラグアイ戦は、もっと盛り上がることは必然。

サッカーボール



  折りしも日本列島では前日の24日、第22回参議院議員選挙が開幕。候補者はむろん、各党、各陣営は、それぞれの存亡を賭けての戦いに突入していた。そんな国を挙げての一大イベントも侍ジャパンの活躍の前には、文字通り形無し。山梨の選挙区は5人で1議席を争う構図。民主党参議院のボスでもある現職に、自民党の若い新人女性候補が挑む。事実上はそんな選挙戦である。




 サッカーW杯は男達の戦いだが、こちらは男女入り乱れての戦い。国政、地方を問わず、選挙への女性の進出は目覚しい。頼もしい限りだ。思わず「オバサン達、がんばれ」と、ちょっぴり皮肉交じりにせよ声援を送りたくなる。その一方で、ふと昨年だったか長野県の「道の駅」にある温泉で、たまたま出会った親爺さんの言葉を思い出した。この親爺さんは、昔は家業の材木屋を営み、今は大工の棟梁。年格好は80歳そこそこに見えた。べらんめえ調で、およそ信州人とは見えない、いわゆる江戸っ子気質を備えた人だった。

karamatu.jpg


 「山梨から来たんだってねえ。甲州じゃあ、かかあ天下に空っ風って言うんだって?。でもねえ、女があんまり威張っちゃあいけねえよ。女はとかく見たまんまを口に出すし、行動もする。言ってみりゃあ、目先だけでモノを見、全体を見ないんだ。俺は女をバカにしているんじゃあねえ。女の特性なんだ。そんな女がだんだん強くなる今の世の中、絶対によくねえよ。世間全般、細かいことでくよくよ言ったり、すぐ物事にヒステリックになる。こんなことじゃあ日本は悪くなるねえ・・・」




 言い得て妙。瞬間、隣の女風呂に入っている、うちのかみさんを頭に浮かべた。まさにそっくり。そんな、かみさんと一緒にしたら失礼だが、連想するようにある女性政治家を思い出した。この女性は、わが国の宰相にもなった大物政治家を父親に持ち、後に、その地盤、看板を引っ提げて自らも政治家になった。人気にモノを言わせて外務大臣にも。生い立ちが作り出した過剰とも思える自信と女性特有の?ヒステリックをむき出しにし、立場かまわず、子供のように泣いても見せた。
 親爺さんの言葉を裏返してみれば、日本はいい国。人気さえあれば選挙にも勝てる。大臣にも。でもスポーツは違う。確かな実力を備えなければ勝負には勝てない。だから爽やか。みんなも心から声援を送る。真剣勝負。スポーツと政治の世界の違いだ。




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葡萄の種

ブドウ


 葡萄の種は気にならないが、西瓜の種は気になる。その反対もあるだろう。それを取り巻く習慣や生まれ、育ちなど環境の違いかもしれない。知人の一人に西瓜を食べる時、ダイナミックにかぶりつき、種まで飲み込んでしまう男がいた。西瓜の産地の人だった。私なんか、あのバラバラにある種がどうにも気になり、スプーンやフォークの先で予め取り除いてから食べるのだ。そんな時、西瓜に種がなかったらいいのになあ~、と正直思う。




 そんな自分はというと、葡萄の種なら平気。何の違和感もなく飲み込んでしまうのだ。甲府盆地の東北部に位置する、この辺りは「勝沼」を中心に古くから葡萄の産地。そんな環境に生まれたせいか、子供の頃から当たり前のように葡萄の粒を種ごと飲み込んだ。汚い話をして恐縮だが、その頃、この辺りはトイレの浄化槽も、ましてや下水道も整備されていなかったので、その種はトイレの槽の底に溜まるのだ。


ブドウ畑



 トイレの糞尿は溜まると「下肥」として野菜作りの肥料に。その頃は今のような少子化の時代と違って子供の数だって4人、5人は当たり前。大勢の家族が食べる葡萄は決して少なくない。必然的にそこに溜まる葡萄の種は半端ではないのだ。下肥の水分は当然、畑に沁み込む。畝(うね)にはその半端でない葡萄の種が残るのである。人間の胃袋を通って排泄された種は、綺麗に洗われてリアルな形で再び世に出てくるのだ。




 西瓜の種にも同じことが言えるのだろうが「葡萄の種をそのまま飲み込むと盲腸(虫垂炎)になる」と言った人がいた。生理学的にも医学的にもそんなことはないはず。もしそうだったら葡萄の種を飲み込んでしまう習慣があった山梨県人は、みんな盲腸になってしまっていることになる。


ブドウ畑2



 「葡萄に種なんかあるの?」。都会の消費者、特に種なし葡萄に慣らされた若い方々は首を傾げるに違いない。ジベレリンの開発と実用化は一部の品種を除いて葡萄の種なし化を可能にした。これは今に始まったものではなく、歴史は古い。この地方では、デラウエアー種に始まったジベレリン処理は巨峰、ピオーネなどの大房系の葡萄に到るまで幅広く取り入れられ、技術的にも完全に成功。今では種なしが当たり前になった。果肉が柔らかい甲州種を除けばほとんどの品種で、この技法は成功している。




 ジベレリン処理は種を抜くという画期的な技のほか果実の促成にも役立つ。2回に分けて行なうのだが、ポイントは処理の時期ジベレリン水溶液の濃度。どちらを間違えても失敗するのだ。当初、デラウエアー種で成功したこの手法は果樹試験場などの研究機関ばかりでなく、果樹栽培農家の試行錯誤が今の完全実用化をもたらした。


ブドウ2


 核、つまり種の周りに酸味が多いのが果実の特性。現代人はなぜか酸味を嫌う。種を抜くと同時にこの酸味を少なくするのだからジベレリン処理の効果は一石二鳥。私なんか種があって、適度の酸味があった方が美味しいように思うのだが・・・。確実に種ありの方が味がいい。でも葡萄には種がない、と消費者に思い込ませてしまった今、あと戻りは出来ない。今がそのジベ処理の最盛期。小さな房には雨除けの傘、蝋紙をかけるのだ。




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自衛官も官僚?

自衛隊2


 上司が外部で何かをするとなるとその時間の長短を問わず、何人もの部下が事前に打ち合わせや下見に奔走する。そんな場面に出っくわして、ちょっぴり首を傾げたことがある。自衛隊での話だが、自らも40年もの間やって来たり、見て来た民間の会社では考えられないことだ。民間なら当事者が打ち合わせから内容の組み立てや詰め、本番まで大抵のことなら1人でやってしまう。そんなに大勢の人を動員することなどあり得ないのだ。かつて県庁などでも、これに似たケースをみたことがあった。役人の手法なのか。それとも物事に慎重でなければならない自衛官だからか。でも、何か引っかかるものが・・・。





 山梨ロータリークラブは毎週の例会で会員が卓話と称して交代でミニ講演をする。時にはゲストを招いての卓話もある。何年か前のことだが、自衛隊の幹部をお招きした。47歳の1等陸佐。旧陸軍でいえば大佐である。防衛大出のキャリアだ。


自衛隊3


 卓話の話のきっかけは、いとも簡単な花見の席だった。山梨市に自衛隊協力会という組織があって、4月の初め、甲府の護国神社で役員間の懇親のための宴をはった。儀礼でやって来た、この幹部氏は初めの挨拶をしたあと席を回りながらお酌をし、歓談をした。話がはずむうちに、雑談がヒントになって卓話の話はあっという間にまとまった。




 当然、打ち合わせはしなくてはならない。日時を決め、その幹部氏を尋ねた。事務室の前でその旨を伝えていると、後ろから「この間はどうも・・」。幹部氏が親しい仲間のように話しかけて来た。すかさず広報室長と名乗る長身の男性がやって来て、応接間らしい部屋に私を案内した。「打ち合わせは私がさせていただきます」というのである。「直接話をすれば早いのに・・・」と思ったが、こちらはお願いする立場。そうもいかない。


自衛隊4


 その広報室長は見るからに幹部氏より年上だった。1等海尉だという。「私はもう定年間近か。自分ははキャリアではなく、タタキアゲなんです」。キャリアとノンキャリの違いを説明したが、内心、複雑なものを滲ませた。「1等海尉」。昔で言えば大尉である。海上自衛隊だからか、白い制服が長身によく似合う。


 「私は海ばかりにいました。だから、甲府に来てちょっと調子が狂ってしまいます」とニッコリ笑った。そこには早く海に帰りたい、というこの男の思いが伝わってきた。陸に上げられたカッパといったところだろうか。


自衛隊


 20日ほど経った本番間近の日に1本の電話がかかった。


 「下見に行きたいのですが・・・」


 広報室長ではなく、その部下を名乗る自衛官であった。「ご苦労様ですねえ」と言ったら、ごく当たり前のように「会場は存じているんですが、その部屋の雰囲気が分からないものですから」と答えた。平日なので甲府からだと40分ぐらいの距離だが、恐らく下見は1人ではなかったはずだ。当日の卓話には3人の部下も同行して来た。同行というより2人は40分前に来て上司の卓話に備えていた。残る1人は運転手兼連絡要員である。今度は大臣にもなった≪事業仕分け人≫の、あの怖いオバサンだったら許してくれないだろうネ。




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ベランダ菜園と百姓

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 ベランダでナスやキューリ、トマトはもちろん、最近では私達、百姓の倅にすら分からないような外来野菜まで立派に作ってしまう。その種や苗は探さなくても、いくらでも手に入るし、それを栽培するための土や肥料も簡単に入手出来る。テレビのチャンネルをひねれば、「先生」と呼ばれる家庭菜園の専門家?が懇切丁寧に、その作り方から管理の仕方まで解説付きで教えてくれる。




 自らを「百姓の倅でも・・・」と言ったのは、農家に生まれながら、60歳を過ぎるまで農業とかけ離れた生活をしてしまったからだ。中学、高校まで家業の農業に携わった。年齢で言えば、18歳まで。子供の時代なので「手伝った」という方が正しい。以来、東京で生活した学生時代の4年、さらに、これまで、人生の大半ともいえる40年以上を農業とは無縁のサラリーマンとして生きてしてしまった。



ブドウ


 会社人間に終止符を打った時、「よ~し、今度は思う存分、百姓をやってやる」と、正直、心に決めた。ところが、45年を超す歳月はそれを許してくれなかった。一つ果樹栽培を例にとっても、品種もその栽培技術もガラリと変わっていた。そればかりではない。木や棚の仕立て方、消毒薬やその取り扱いまで一変してしまった。




 決定的な決め手は身体体力と言った方がいい。栽培方法や技術は覚えればいいし、勉強すれば追いつける。でも、体力だけはそうはいかない。若い頃は時間的にも仕事全てに、かなりハードな所に身を置いたし、大抵のことならへこたれない根性も身に付けたと思っている。しかし歳はウソを言わない。


 もちろん、私達の年齢の人たち、仲間たちは今も立派に百姓をやっている。決定的に違うのは45年という歳月のブランクだ。「日曜百姓」と言われるように週末だけでも畑に出る生活をすればよかったのだが、仕事柄、そんな事も許されなかったし、しようとも思わなかった。




 悲しいかな、今の私には「ベランダの野菜作り」の方が理解できる。その一方で「いい世の中」「便利な世の中」になったもんだ、と思う半面、これからの農業はどうなっちまうんだ、と思ったりもする。ベランダ菜園は趣味であったり、遊びだからいい。不気味なのは一方で進む工場農業だ。


トマト


 もう2、30年前になるが茨城県で開かれたつくば博覧会で、とてつもなく大きいトマトの水耕栽培を見たことがある。正直言ってド肝を抜かれ、やがて日本の農業は・・・と考えされたりもした。


つくば博
つくば'85


 この時の水耕栽培は今や博覧会のレベルではなく、さまざまな工場農業技術として実用化され、珍しくもなくなった。そこにあるのはコンピューター。太陽の光も土も要らない。そんなやり方は農業ばかりでなく、既に養鶏などでは当たり前になった。コンピューター管理の、しかも無菌状態のハウスの中で食用のニワトリを大量生産する。本当に太陽光や土は要らないのか。そんなことを考えると、まだ自然があるベランダ菜園の方がいい。




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御嶽山と山菜

御嶽山


 木曽福島はワラビが最盛期だった。木曽のシンボル・御嶽山の麓にあるスキー場は山ウドが手頃に淡い緑の頭をもたげていた。


 「木曽のなあ~ 木曽のなかのりさん♪ 木曽の御嶽山はなんじゃらホイ・・・♪」。


地図



 木曽節にもそう歌われる御嶽山は「夏でも寒い♪」。雲間から時折姿を見せるその山頂はまだ厚い雪を被り、中腹にもまだかなりの残雪が。車でやって来る人達の登山口ともなる駐車場には10数台の乗用車が停まっていた。3,067m。霊峰・御嶽山の山頂を目指している人達の車だろう。名古屋や福井、横浜や東京の品川ナンバーの車もある。




 「上りは丁度3時間半。帰りの下りは2時間ちょっと。山頂はもちろん雪に包まれていますが、風もなく、寒さを感じませんでした」


雪山


 時計は午後2時を回っていた。一人で山から下りてきた40歳前後と見られる男性は、疲れた様子も見せずにニコニコしながら山の様子を話してくれた。この男性は前夜のうちに福井県からやって来て駐車場の車の中で仮眠、朝7時を期して山頂を目指したという。恐らく、残る車の人たちも同じような行程を辿っているのだろう。



 白い雷鳥(保護色)にも出遭いました」




 山菜採りをする私達をよそに、御嶽山はまだ冬。この駐車場に繋がる山道の両側に広がるダケカンバやシラカンバの林からはウグイスの声が。3,000mを超す御嶽山は、まだはっきりと季節を分けていた。山頂は冬。標高を下げるに従い春から初夏へ。麓には初夏の山菜が。登山口の駐車場の脇には日影をよいことに厚い雪が残っている。


中仙道中間地点


 この山でも似て非なるものがダケカンバ(岳樺)とシラカンバ(白樺)。見れば、私のような素人でも、その区別は分かる。幹の色だ。ダケカンバは幹が灰褐色。シラカンバはその字の通り白い。ダケカンバの林は山道を下り始めると、いつの間にかシラカンバに変わる。恐らく標高1,500mから1,600m辺りが、その境なのだろう。




 その辺りは一面がスキー場。一帯を厚い雪が包むシーズンなら若者達の歓声で賑わう何本ものリフトが今は場違いにさえ見える。何箇所ものクッションを経て、上へ上へと伸びるケーブルは心なしか錆び付き、その要所要所で半カップ状の風車が空虚に回っていた。今、山ウドの格好の狩場は、そのスキー場。何人もの先客がいた。みんな申し合わせたように大きなビニール袋を片手に、まだ地表に顔を出して間もない山ウドを鎌で掘り出すのだ。土に埋まった根に近い白い部分を食べるのだが、里のウドと違って味と香りは抜群。





 一方、ワラビ狩りは、そんな一帯よりまだ標高を下げた所。木曽は名だたる杉、檜の産地。そんな杉、檜の山を横目にした原野に近い所が狩場である。案内役は自らも「渓流釣りや山菜採りが大好き人間」というベテラン。どこもかしこもホタルのけつ。毎年、女房と私を案内してくれる。この日も朝5時に山梨市の家を出発。中央道伊那ICで降りて権兵衛トンネルを通り、国道19号(旧中仙道)を経て木曽の山へ。途中の「道の駅」には「江戸ー京都の中間地点」を告げる標識も。 そのちょっと松本寄りの塩尻には江戸時代の旅人達が足を休めた「奈良井宿」もある。


御嶽山2


 木曽の御嶽山は言わずと知れた信仰の山。車で上って行くとスキー場のゲレンデが切れる辺りから登山道の両側には無数といってもいいほどの石碑が。信者の方々が寄進、奉納したのだろう。いやが上にも霊峰、霊場・御嶽山の存在の大きさを印象付けていた。




御嶽山


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梅雨入りとカタツムリ

紫陽花


  関東、甲信地方も梅雨入りした。例年より6日、去年より11日遅い入梅だそうだが、鬱陶しい季節の到来であることに違いはない。特に今年は、私にとって嫌な梅雨。自らの不注意とはいえ、ムチ打ち症(頚椎捻挫)を患っているからで、恐らくこれから一ヵ月半近く、嫌な思いをしなくてはならないと覚悟を決めている。


雨傘


 今でも一週間に2~3回、石和温泉郷の一角にある温泉病院に通ってリハビリを続けているのだが、必ずしもはかばかしくない。事故からもう9ヶ月。PT(理学療法)、OT(作業療法)、ハリの治療を続け、もちろん薬も飲んでいる。いたずらに時だけが過ぎていくようで、「いったい完治するのか・・・」と、一抹の不安を抱かないでもない。でも続けていくより道はない。




 そんな心の内を一瞬変えてくれるのが病院の大きな治療室。午前9時、治療室の扉が開くと、廊下に待ち構えた入院患者や私のような外来患者がそれぞれの症状にあわせた治療に取り組むのだ。車椅子の人、松葉杖や杖の人、足を引きずったり、首にギブスをつけた人もいる。当たり前だが、みんな障害を持った人達だ。


病院1


 共通点は、みんなが明るく振舞おうと心掛けていること。病や犯された患部は、暗くしていたらよくならないことを知っているからだ。みんながそれを申し合わせたわけでもなく、医者から指示されたものでもない。なんとしても自らの病や患部を治したいという強い心の内の現われにほかならない。



 これも当然。その症状はまちまち。脳障害で身体を思うように動かせないばかりか、言語もままならない患者もいる。私のように首の障害から来る、肩や背、腰に到る障害の症状なんか、そんな患者さんから比べれば、初歩の初歩のようなもの。この程度のことでへこたれていたら笑われてしまう。


リハビリ


 治療は患者と理学療法士や作業療法士とのマンツーマン。いわゆるマッサージやハリ治療ばかりでなく、お手玉やゴムボール、たらいに入れた大豆を使っての機能回復訓練をしている人もいる。手すりを使ったり、プールで懸命に歩行訓練に取り組む人も。そこに共通しているのは自らの病や患部を治そうという強い意志だ。もう一つはお互いに励ましあい、いたわり合っていることである。




 梅雨空を恨めしそうに見上げながら畑仕事が気にもなるのだが、大自然のなせる業には、ちっぽけな人間、どうにも為すすべがない。こうしてパソコンを叩きながら庭先に眼をやるとボツボツ開き始めた紫陽花の茎をカタツムリが。梅雨の雨に濡れた紫陽花の葉っぱをなめるように、ゆっくりとゆっくりと進む様は、リハビリ治療に取り組む私達に「お前達もあせらずにのんびりとやれよ」と、言外に語りかけているようにも見える。


カタツムリ


 考え過ぎても仕方がない。それがいいかどうか分からないが、夜になれば晩酌もするし、仲間から誘われれば、麻雀もする。知らない人は「どこが悪いの?」というかもしれないが、詳しい説明なんかどっちでもいい。「人間、何とかなるさ」と、考えることにしている。




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見栄と体裁

 人は「見栄を張るな」とか「見栄を張るもんじゃない」とよく言う。私も言って来たし、言われたりもした。その通りだと思う。でも待てよ。見栄って張ってはいけものないもなのか・・・。むしろ最近は、見栄って張るくらいの方がいいと思うようになった。人がおしなべて見栄を張らず、体裁も考えなくなったら、世間はしたい放題、やりたい放題になってしまう。第一、人間、成長なんかしなくなる。


風景1


 もちろん見栄には、必要以上の背伸びや振る舞いをも含んだ意味がある。ここで言う「見栄」は単なる「虚栄」ではなく「恥ずかしい」とか「みっともない」と言った極めてありふれた心のありようを言うのだ。




 「お父さん、そんな格好でみっともないじゃあありませんか。顔くらい洗ってからにして下さいよ。お客様が来たらどうします。パジャマぐらい着替えてからにしたらいかがですか」




 朝、寝起きのまま無精髭も剃らずに新聞を読み、そのままゴロゴロしていると、女房は私をたしなめるように言う。現役時代はそんなことは絶対無かったし、そんな暇もなかった。でも「毎日が日曜日」だとこんなことは日常茶飯事。これが男だからいいが、女房や娘に置き換えてみたらゾッとする。100年の恋もいっぺんに冷めるに違いない。





 「そんなこと、当たり前じゃあないか」。そういう人も多いだろうが、見栄の原点はこの「みっともない」「恥ずかしい」にある。それがちょっと間違えたり、行き過ぎると人のひんしゅくを買う「虚栄」に繋がるのだろう。そうなると可愛くもないが、一方、考えようによったら、この虚栄が人間の成長を促しもする

風景2



 「身の丈」「身の程」という言葉がある。それに甘んじていたら人生、代わり映えもしなければ、第一、面白くも、なんともない。身の程知らずに何かに挑んだり、振舞ったりするから面白いし、そこに新たな可能性や結果が生ずるのだろう。むしろ若い方々は、もっともっと見栄を張ればいい。その裏づけのために人並み以上の努力もするだろうし、苦労もする。それが結果として成長や成功をももたらす。


風景3



 なにも聖人君子ぶったり、年寄りじみたことを言うつもりはないし、そんな資格もない。でも今の世の中、「恥ずかしい」とか「みっともない」とという言葉がどこかにいってしまったような気がするのだ。事あるたびに言いたい放題のことは言うし、電車に乗ればボックス席ならいざ知らず、衆目の座席でお化粧もすれば物も食べる。それもみんな若い女性だ。そんな人に限って身障者が来ようが、お年寄りだろうが絶対に席を譲ることもしない。




 人様のことだが「お化粧くらい、家でして来いよ」と言いたくなる。でもみんななんとも言わない。しかし心の中では「あいつバカだなあ~」と思わないまでも、いぶかしく感じていることは確か。化粧の話は些細なこと。「みっともない」ことは私達の周りにはいっぱいある。そんなことを言っている自分だってやっているかもしれない。それを知らないから困る。見栄を張るくらいの気持ちがあったら、そんなことはしない。




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「ボケ防止」という言葉

麻雀1


  「いつもご厄介になりますね。夜遅くまでご主人をお借りしまして・・・」



 「いや、いや、いつも遊んでいただいて済みません。いいじゃあないですか。高校時代のお友達が、何時までもこうして仲良く遊んでいる、羨ましいですよ。主人は『麻雀はボケ防止になる』といつも言っています」



 週に一度は麻雀遊びでお世話になるお宅の奥さんにお会いしたら、奥さんはニコニコしながら、こんなことを話してくれた。私達は主に週末、毎週のように麻雀をする。一年は52週。ゴールデンウイークや、これに盆、暮れ、正月をプラスアルファーすると年間では恐らく60回ぐらいの数になるのだろう。一回が大体10時間前後。通算すると年600時間。バカな計算をしてみると、延べでは25日間ぶっ続けで麻雀に興じている勘定になる。



麻雀2


 その楽しさが分からない方から見れば、「お前たちバカだねえ~」とお笑いになるだろう。現に、うちのかみさんもいつもこう言う。




 「あなたはバカですねえ。8時間も10時間も、よく飽きずに出来ますね。時には徹夜もするんですから・・・。身体を壊しても知りませんよ。お歳を考えたことはないんですか。第一、あなたが無理やりお誘いして皆さんにご迷惑をお掛けしているんじゃあ・・・」




 「いいじゃあないですか」。ニコニコ顔で、私に話してくれた友の奥さんもご主人に向かっては恐らく同じようなことを言っているのだろう。この奥さん、山梨県下一円にネットワークした自販機を舞台に清涼飲料を扱うご主人の販売会社を水面下で切り盛りしている。聡明で、明るく、微塵の屈託も感じさせない。日本舞踊の師匠で、大勢のお弟子さんも持つ。その教えを受けたお嬢さんも、今ではお母さんをしのぐ力を蓄えた。もちろん二児のお母さんだ。何度かその舞台を拝見させて頂いたが、それは見事。舞台が小さくさえ見えるほど素晴らしい舞を見せる。


着物


 「奥さん、大人だよなあ」。親しい友が故に、こんな冗談を言うのだが、この男だって麻雀が嫌いではない。残る面子は65歳定年で自らの特定局を退いた元郵便局長と、葡萄の産地・勝沼で一丁五反を超す葡萄園を栽培する篤農家の男。このレギュラー面子に、やはり日川高校時代の同級生やその知人が時々加わる。言ってみれば、年中、同級会をやっているようなものだ。




 遊びの舞台は冒頭の友のお宅に特設された麻雀部屋。暑さ寒さも空調で程々コントロールされているし、自動の卓だから不自由もない。夜の飯も電話一本、出前が飛んでくる。週一度とはいえ、いいお得意さんなのだ。こんなブログを書いていたら手元のケイタイが。「今日はどう?」。いつもの電話だ。




 清涼飲料の販売会社や葡萄園を営む友を除けば、いわば「毎日が日曜日」の人間だから、それ程ストレスがたまるわけでもないが、目に見えないストレスの解消には、これが一番。最近では言訳交じり、冗談交じりに「ボケ防止」などという言葉も。こんな言葉が出るようになったら人生寂しくなる。この麻雀と仲間の交流は何時までも続けたいと思っている。




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目に青葉・・・

庭のサツキ


 6月もぼつぼつ半ば。庭の植え込みの間では薔薇ばかりでなくサツキも咲きはじめた。一見、いつもの年と同じように花を開いているようだが、今年は開花がちょっと遅い。春先の天候不順がそうさせたのだろう。事実、私達がロータリークラブの夜間例会でお邪魔する山梨市駅前の割烹旅館のご亭主によれば、今年は1週間から10日は開花が遅れたという。



サツキ2


 この親爺さんは年格好で75歳前後だが、サツキの盆栽作りにかけては自他共に認める玄人はだし。自宅の庭に200鉢近い盆栽を作り、愛好家仲間ばかりでなく付近の人達の目を楽しませている。いつも陽気な奥さんが「うちの旦那は旅館の仕事や私達家族より盆栽の方が大事なんですよ」と、冗談とも本音ともつかないように話すほどの盆栽好き。そうでもなければ、人々、とりわけサツキのベテラン盆栽愛好家を唸らせる作品など作れまい。


盆栽


 どんな花もそうだが、一年でみれば花をつけるのはほんの一時期。ツツジの後を追うように咲くサツキの場合も6月のこの時期だけ。問題は暑い夏場や乾燥する冬場の管理だ。一年を通して水遣りもしなければならないし、ジワジワ伸びる枝や葉っぱの調整や全体の形作りもしなければならない。時には盆栽につく虫も取ってやる。大事にしなければ来年、いい花をつけてはくれないのだ。第一、放っておいたら盆栽としての体を失ってしまう。奥さんが冗談にも「私達より大事」と言うように、まさに手塩にかけて大事にしてやらないと来年どころか「今」もないのである。


秋月サツキ


 人間であれば百人が百人、綺麗な花が咲いていれば誰だって水遣りもすれば、大事にもする。問題はその後だ。花を落としてしまうと、その存在すら忘れて、ほったらかしにしてしまいがちだ。私のようなズボラ人間だと枯らしてしまうのがオチ。凡人と親爺さんのような盆栽気違いの違いはそこにある。丹精込めた≪我が子≫は「どうだ」と言わんばかりに胸を張って他人にも観せる努力もする。親爺さんは今年もライトアップまでして夜の見物客の便に供した。照明に浮かび上がるサツキの盆栽は、えもいわれぬ風情がある。


サツキ



 春先の天候の乱れによる影響は、なにもサツキに限ったことではない。この辺りの果樹農家は軒並みそのシワ寄せを食っている。葡萄、桃、サクランボ・・。そのいずれもが1週間から10日遅れだという。サクランボはハウス物の出荷が峠を越し、やっと露地物へ。桃は摘果(摘粒)と袋かけの最盛期。葡萄は伸びたツルを棚に縛り付ける「ツル結っけ」の最中で、この後には葡萄の種を抜くジベレリンという薬品処理の作業が待っている。




 サツキだったら開花が1週間遅れようが、10日遅れようがかまわないが、果樹栽培農家はそうはいかない。戦々恐々。生育の成否にとどまらず、価格への跳ね返りが心配だ。例えば、気温差のタイムラグを狙った山梨のサクランボの場合、本場・山形産との期せずしての競合だ。お天気のいたずらは農家の財布をも左右するのである。


さつき


 平たく言うと今は目に青葉・・・の季節。人間とは贅沢で、わがままなもの。その新緑や青葉が重苦しくさえ感ずるのだ。只ででも混み入っている我が家の植え込みを見ながら、煩わしい剪定作業が気になり始めた。大雑把にせよ植木だって盆栽管理と同じなのだ。


盆栽1      盆栽2


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薔薇のトゲ

薔薇1


  ハナから読めないならまだしも、読めるけれども、いざ書いてみろといわれれば書けない漢字は案外多いものだ。その一つが「薔薇」である。「林檎」もそうだろう。でもパソコンとは便利なもので、キーさえ叩けば一発で出してくれる。なにも軽い頭を使って覚えなくていいから、また困る。私なんか一生書くことが出来ない字の一つかもしれない。
薔薇4


 薔薇は日本人にとって桜と共に馴染み深い花。童謡や流行歌にも歌われ、小説や映画、ドラマにもしばしば登場する。日本では「花」といえば「桜」。花の代表格だが、これも日本だけ。しかし「薔薇」は世界的。日本語訳がそうしたのかもしれないが、あの有名な「野ばら」もあれば、「薔薇が咲いた 薔薇が咲いた 真っ赤な薔薇が・・・♪」と誰もが口ずさみたくなるようなものや、ちょっと渋い水原ひろしの「黒い花びら」なんて歌もある。


紅い薔薇


 人間に愛されながらもトゲがあるのもこの花だけ。「美しいものにはトゲがある」などと美しい女性に例えられることもある。「お前にはトゲがないからいいよなあ~」。冗談交じりに喧嘩を売られたとも知らない、うちのかみさんは「何なの?それ・・・」と、キョトンとしながらも、その意味を知って「失礼しちゃうわ。まったく・・・」。



 そのかみさんが植えた薔薇が庭の植え込みのあっちこっちで今が盛りとばかり咲いている。赤、ピンク、橙。大輪のものもあれば、比較的小さいものも。それぞれ咲いている期間は結構長い。種類によっては、これから夏、秋、さらに冬の寒い時期まで咲く薔薇だってある。一年中、楽しめるのだ。よく見ると満開だったり、もう峠を過ぎた花の隣で次々と蕾をつけるのである。


薔薇2



 三分咲き、五分咲き、八分咲きと徐々に花を開いて、春の柔らかい風に吹かれてハラハラと一斉に散ってしまう桜とは違って風情こそないが、そこはかとない重厚さがある。「薔薇」は「ばら」のほか「そうび」とか「しょうび」とも読む。今6月の誕生花で、俳句で言えば夏の季語。ただこの花は不思議な花で「冬薔薇」(ふゆそうび)となると冬の季語になる。季語では≪二重人格≫なのだ。世に多いブスのひがみ。美人の女性にオーバーラップして使われるのもそのためだろう。ラテン語ではRosa。ローズピンクというように色の代表としても使う。クレオパトラの薔薇の硬水は有名だ。
 薔薇の種類は100種類にも及ぶという。我が家にだって、よく見たら10種類以上もの薔薇がある。いずれも、かみさんが、いつももように後先かまわず、行き当たりばったりに植えたものだが、花を付けているうちはいい。いくら無粋者の私だって美しい花を愛でる目ぐらい持っている。


薔薇3


 でも、これほど頭に来る、というか腹が立つヤツはない。花を落とした後だ。当然のことながら秋から冬場にかけて植木の手入れをする。この時、シャツやズボンならまだしも手足まで傷だらけにさせられるのだ。薔薇のトゲは半端ではない。それなりの注意はしているのだが、ことごとくに邪魔をするから正直、頭に来るのである。悔し紛れに剪定鋏で・・・。そこからご想像の夫婦喧嘩。「どうして切ってしまうのよ」。目を剥いて怒るのだ。トゲがあるのは美人だけと思ったら、うちのかみさんにもでっかいトゲがある。そんなかみさんも植え込みから薔薇を切り取って来ては 居間などの花瓶にいけている。女である。




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商社マンと玉葱

ビール


  「やあ~、お久しぶり。今、どこの部署に?」



 「今は本社さ。半月ほど前、東南アジアから帰ったばかり。5年ぶりの本社勤務だよ。やっぱり日本がいいねえ」


 「東南アジアでは、どんな仕事を?」


 「百姓さ。百姓。厳密に言えば百姓の棒頭さ」


 「商社マンが百姓? 棒頭?」


 「そうさ。分かり易く言えば、人件費の安い東南アジアで玉葱などの農産物を作らせ、日本への輸入を図るんだよ。毎日、その現場指揮をしていたのさ」


タマネギ


 もう大分前のことだが、久しぶりに会った友と酒を酌み交わしながら、こんな話をした。この男は大学を出たあと、大手の商社に入り、れっきとした商社マンとして活躍していた。その仕事ぶりは私がイメージしていた商社マンと違っていたから、一つ一つ話は面白かった。久しぶりの再会も手伝って話は弾み、酒も進んだ。この商社マン氏によれば、人件費削減のターゲットとする国は、月給が日本円で1万円以内の所だという。


酒


 「あなたも知っている通り、農産物に限らず、商品のコストダウンを図るためには、まず人件費の削減だ。それだけじゃあダメ。こちらが求める質と量を安定的に作らせることだ。その上にもっと肝心なことがある。玉葱であれ、キューリであれ、全てを同一規格にすることだ。そうでなければ、我々はひとつたりとも引き取らない」


たまねぎ


 「安定供給もさることながら、同一規格にすれば国内で流通させる場合の箱詰めひとつとっても無駄なく、合理的に出来る。第一、値札を付ける場合に、いちいちハカリを使わなくても済む。スーパーなど小売店の省力化、つまりはコストダウンに繋がる寸法さ。形も目方も同じだから、売る側は機械的に値札だけを付ければいい」


トマト


 「そう言えば、スーパーに限らず、生鮮食料品の小売店でハカリが姿を消しちまったよなあ・・・」



 「ハカリで計るという行為ひとつ取ったって、商品のコスト計算上はバカにならないものがあるんだよ」

キュウリ


 山梨市の田舎で生まれた百姓の倅でありながら学生時代からサラリーマン時代のざっと45年間を東京や甲府で過ごしてしまった。自ずと食卓に載る全ての野菜はスーパーや八百屋さんから。現在のように女房と二人で作る曲がったキューリなどお目にかかりようもなかった。一転して今はナスもトマトも大根やサトイモ、玉葱、サツマイモも、みんな形がまちまちであるばかりか、傷モノもいっぱい。でも味は変わらない。むしろ、自分が作った贔屓目かもしれないが、こっちの方がうまい。真っ直ぐであろうが、曲がっていようがキューリの味は同じだ。
 商売上のコスト削減や流通の合理化が、いつの間にか消費者の商品概念を変えた。でも、その反動からか、それが次第に見直されている。「道の駅」など田舎の直売所では形にこだわらないナスやキューリが売れている。消費者だってバカじゃあない。地域の農家と、そんな消費者がうまくかみ合い、どこも人気上昇中なのである。





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趣味のキルト展

キルト1


 へえ~、と思うことがある。玄人はだしという言葉があるが、趣味で始めたことが、やがてプロ顔負けの技を、いとも簡単にやってのけることがしばしばある。もちろん、私のような盆暗には望むべくもないが、そこには人知れない、それへの興味というか執着と努力があることだけは確か。それがまた、技術や奥行きを深めてゆくのだろう。




 先日、甲府市内の総合市民会館でご婦人たちの趣味のグループが開いたキルト展を見せていただいた。普段なら私ごときの野暮天が覗く所ではないが、麻雀仲間でもある高校時代の同級生の奥さんの作品発表とあって喜んで足を運んだ。そこには所狭しと、メンバーの作品が並んでいた。


キルト2



 まさに、へえ~、である。キルトはアメリカやメキシコ、スペインなどの専門店やお土産物屋さんで何度も見たことはあるが、そこで見た≪商品≫と優るとも劣らない作品がずらり。グループの作品発表の場なので作品の脇には出展者の名前が。野暮天の私をいざなってくれたご婦人は同級生の奥さんだから、言わずもがな60歳を超している。


キルト4


 普段は日本一の葡萄の産地・山梨県勝沼町で一丁五反もの葡萄園を栽培するご主人を支え、一年を通しての果樹園の仕事と、シーズンには直売所で観光バスやマイカーでやって来るぶどう狩りのお客さんを見事にさばいてみせる。文字通り内助の功を発揮するのだ。私と同じように、どちらかといえば麻雀しか取り得のないご主人とは、ここから先が違う。




 忙しい畑仕事の合間を縫ってキルトの趣味グループで頑張っているのだ。何年ぐらい続けているかは定かではないが、2年や3年ではないことだけは確かだ。このご婦人、そればかりではない。書道は師についてもう何十年と習い、今では師範格の腕前。毛筆でも硬筆でも、それは見事な字を書く。ご主人はお酒を飲まないのだが、私達、男どもが麻雀や酒に現を抜かしている間に、さまざまな趣味と取り組み、力をつけているのだ。同じ麻雀仲間に限ってみても、定年でその職を後進に譲った元特定郵便局長夫人はピアノの先生、清涼飲料の販売会社を営むオーナー夫人は日本舞踊の師匠。いずれも趣味の域を超えている


キルト3


 キルト展の会場には男性客は珍しい。そんな中で私のような野暮天がもう一人。




 「やあ~、お久しぶり。あなだも義理のお付き合い?」。




 「そうですよ。女房の下働き。小間使いみたいなものですよ」。



 調子に乗って野暮天などとは失礼千万だが、この方は私がサラリーマン現役時代お付き合いをさせて頂いた電力会社の幹部で、実はこのキルト展の主催者、つまり先生のご主人だった。「かみさんの意向を聞いて作品の額を用意したり、展示作業を手伝ったり。いわば小遣さんです」。そのお人柄だろうか、まんざらでもなさそうにニコニコしながら話してくれた。



キルト5


 キルトはヨーロッパの寒冷地で保温着として生まれた。布地の有効利用のために余り布を繋いで作ったのが始まりだという。日本では、この展示会のように多色の布を縫い合わせたパッチワークキルトが主流だそうだ。その織り成す変化は無粋者でも見ていて楽しい。




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いびき

ネコ


 「お父さんねえ、うちのミーコ(猫)、今朝起きたら玄関先で気持ち良さそうに、いびきをかいて寝ていましたよ」



 「バカ言え。お前じゃああるまいし、猫がいびきをかくか」


ミー子


 ミーコとはいつの間にか我が家に住みついた野良猫だ。女房とそんな話をしていたら、いつもこのブログにお出でいただく「なめネコれお君の母」さんから、たまたま、こんなコメントが。


 「・・・。パソコンを叩いている脇でれお君(猫)がいびきをかいています。・・・」




 やっぱり、うちのかみさんの話は、まんざらの冗談ではなかった。勝手に住みついた野良猫と、恐らく居間の中で我が子のように可愛がられている猫の違いがあるにせよ、そのいびきの様を想像しただけでも愛嬌があって可愛いい。思わず笑ってしまいたくもなる。


ミー子2


 転じて、うちのかみさん、こうして私がパソコンを叩いている後ろのベッドで、それは見事ないびきをかいてみせる。猫のいびきと違って、お世辞にも可愛いいとは言えない。しかし、このいびき、なにも今日に始まったものではないから、それ程気にもならない。ところが、突然、そのいびきが止んだと思ったら「お父さん、何時までパソコン、叩いているんですか。眠れないじゃあありませんか。早く電気を消して寝てくださいよ・・・」




 「バカめ。自分のいびきを棚に上げて勝手なことを言うんじゃないよ」と心のうちでは思うのだが、それを言ったところで仕方がない。「分かった、分かった。もう寝るよ」と、適当にあしらってパソコンを叩いていると、またいびきが・・・。天下泰平である。


1


 うちのかみさんのいびき、それは半端ではない。時にはまるで地響きのようないびきをかく。でも人間、慣れとは恐ろしいもの。一緒に寝ていても子守唄にも聞こえるから不思議。とは言っても、それを気にも止めず、腹も立たないと言ったらウソになる。翌日の事を考え、一刻も早く眠らなければならない時だ。そんな時、私にはちょっとした≪処方箋≫がある。指先で肩を押し、身体を横向きにさせれば、いびきはピタリと止む。かみさんも無意識ながらも、それを知っているのだ。




 いびきは横向きにうずくまった状態ではかかない。反対に仰向けに寝ると顎が上がり、生理的にもいびきをかき易くなるのだそうだ。かみさんのいびき、お尻を大きくし、我が家での存在感を増すに連れ顕著に。連れ添ってもう40年。それが証拠に20年前、30年前、ましてや新婚時代は、こんないびきはかかなかった。加齢に従ってだんだん温厚になる亭主族とは裏腹に女房族は、どんどんしたたかになる。憎らしくなることもあるのだ。


夫婦


 千葉県の柏にお住まいで山梨の我が家にも時々遊びに来る知人が、お酒を酌み交わしながらこんなことを言ったことがある。「女房のいびきに付き合いきれない時は別の部屋に寝るんですよ・・・」。この方は、かみさんの学生時代の同級生のご主人。いびきの主の共通点は≪体格≫がいいこと。もう一つは屈託がないというか物事に大らかな性格の持ち主だ。女性のことは分からないが、男の場合、総じて私のようなデブの方が、いびきが大きい。




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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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