大晦日の雰囲気

 何か慌しくて、それでいて何かを待つようなウキウキした気持ち。それが大晦日のなんとはなしの雰囲気だった。「・・・だった」というのは子供の頃で、今はそのウキウキというか、何か新鮮なものを迎えるような雰囲気を感じなくなってしまった。一夜明ければお正月。当たり前にやってくる次の日の朝だが、特別の感慨のある大晦日と元日。私ばかりかも知れないが、どうしてそれがなくなってしまったのだろう。

お正月_convert_20110105000030


 ある年代以降の人達には「盆と正月」という言葉があった。それとは直接関係ないが「○○ならば米の飯(白い米)」という言葉もあった。日本の貧しい時代が残したフレーズだろう。貧しいながらも、親たちは、大人たちは、お盆には先祖達と共に、また正月には子供たちと共に精いっぱいに振舞おうと努力した。




 我が家の場合、母親が大晦日には「ゴシ」の葉を入れた風呂を、元日には米のとぎ汁を入れた風呂を立ててくれた。五右衛門風呂だ。寒い冬の身体を温め、新しい年を健康に、元気に過ごしてはしいという親心であり、願いであったのだろう。今風で言えば薬草風呂だ。貧しい中での生活の知恵だったに違いない。田舎だったからこその風景かも知れない。


飾りもの

 母親はおせち料理も作ってくれた。もちろん、デラックスな今のおせち料理と比べようもないが、そこにも日常と違う朝があった。玄関先には自分たちが山から切って来た松飾りが。日の丸の国旗が、なんとなくいつもと違う朝日を浴びていた。お年玉なんてもらった記憶はない。親たちに、そんな余裕がないことを子供たち自身が知っていた。無し無しのお金をはたいたのだろう、真新しい学生服や下着を与えてくれた。お年玉より生活必需品。それが、また嬉しかった。


おせち料理_convert_20110105000523


 大晦日の夜、子沢山の一家はみんなで≪お歳とり≫の食卓を囲んだ。この日はどんなことがあっても家族が揃って食事をすることが習いだった。それが家族の平安の証であり、新しい年を迎える気構えでもあったのだろう。「おじさん、幾つ?」。私ですか?昭和17年生まれ。子供の頃が戦後間もない頃だったのです。




 当たり前かもしれないが、大晦日や元日の人々のライフスタイルはガラリと変わった。我が家に限らないが、若者たちは年末年始の休みを利用するとばかり、旅行やスキー、スケートに出かけ、親達も温泉旅行にと一家の行動はまちまち。第一、子供たちの数も、ひと頃の子沢山と違って、少なくなってしまったから家族団らんなどは望むべくもなくなってしまった。少ない子供は食事が済めば、さっさと自分の部屋に籠り、インターネットやゲームと自分たちの世界を作っている。





 会社の忘年会だってそうだ。その数は年々減っているという。なにも、ことさら改めてみんなでお酒なんか飲むことねえじゃねえの、というのが若者達の声らしい。マイカーに依存しなければならない地方では、それに拍車をかけた。年が明けてお正月。デパートだって元日からいつもと同じように営業している。「初売り」という言葉もなくなった。とにかく、あと少しで激動の2014年は暮れる。そして来る年こそいい年でありますように。

お正月



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紙の門松

 慣れとか、習慣とは恐ろしいものだ。玄関先に飾る門松(松飾)が簡易式の紙になってもう何年、いや何十年になるのだろう。大きな紙に刷り込まれた松竹梅の門松に少しも違和感がなくなった。「な~んだ。紙か」と言った頃がウソみたいだ。


賀正ポスター


 私たちの地域では区で全世帯の(紙の)門松を一括購入、組長がそれぞれの組の世帯にお届けするのである。昨夜は公会堂で区の役員会を開き、この門松の配布はもちろん、年末、年始の諸行事について打ち合わせた。




 年末、年始の行事のメーンは、なんと言っても新年拝賀式と互礼会。全戸の代表が集まって、地域の氏神様に参拝、その年の地域とそこに住む人達の安泰を祈願し、一年をスタートさせる行事だ。そのために、区の役員が総出で、氏神様へのしめ縄飾りや、その周辺の清掃はもちろん、拝賀式の後、区民がお神酒を交わす公会堂の大掃除もする。




 こちらは女房達の役目。それぞれの家庭で行う大掃除と同じように区民の拠り所になって来た公会堂の一年の垢を洗い落とすのである。毎年その日は30日を充てている。しめ縄や門松など正月飾りは31日の大晦日や29日にもしない。31日の飾りつけは「一夜松」といって昔から嫌ってきた。縁起担ぎなのだが、29日の場合も同じ。こちらは「九」「苦」で、大掃除もしない。もちろん「九餅」「苦餅」といって餅つきもしない。


門松


 松竹梅の門松が絵入りの門松に変わって久しい。かつて、この門松はクリスマスツリーのモミの木と共に、その調達は子供たちの年末行事の一つだった。ちょうど冬休みになったばかりの子供たちは、当たり前のように近くの山に入り、松を取って来るのである。もちろん、子供ながらにも、小さな松を根元から切って来るようなことはしなかった。松の木によじ登り、手頃な枝を切り落として来るのである。




 子供たちは誰に教わるともなく、山を大事にすることを知っていた。今のように、自然保護がうるさく問われたり、第一、そんな言葉が無かった時代である。山は人々の生活の一部だったからだ。山の木は、今の電気やガスに匹敵する燃料、つまり薪であり、その落ち葉は田んぼや畑の有機肥料だった。




 そのことを大人たちはむろん、子供たちも知っているから無茶な伐採はしなかった。むしろ、年に一度の門松採りやクリスマスツリーとなるモミの木採りは格好の枝払いであり、下刈りでもあった。しかし、都会の人達には自然破壊に写ったに違いない。特に、教条的ともいえる自然保護団体にかかったらどうにもならなかったのだろう。


屋台2


 確かにむやみに切ったら自然の破壊だ。だが、間伐と伐採は違う。門松採りはともかく、人々の生活環境の変化は、山の無視を加速させた。松はもちろん、杉やヒノキに至るまで、やらなければならないはずの枝払いや下刈りもしなくなった。お陰で、山という山がいたる所で荒れ放題。そのツケは花粉症惹起の要因にもなっているという。


お飾り


 女房が「九」を避けて早いうちに組の各戸に紙の門松を配り歩いた。クリスマスが済んでつかの間、今度は街角に松飾りやしめ縄飾りの屋台がお目見えした。いよいよお正月だ。





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岩魚の骨酒と二日酔い

 夕べは飲みすぎた。二日酔いで頭がガンガンする。
「あなたはいつもそうなんだから。これからまだ忘年会、幾つも続くんでしょう。体も身のうちって知ってるでしょう。まったく懲りないんだから・・・」


酒



 その通りだ。歌の文句じゃないけれど、分かっちゃいるけど辞められないのである。お酒とはこれまた不思議。沢山飲めば、というより自分のじょうごを超せば二日酔いをすることくらいハナから知っている。しかし、それを何十年と繰り返しているのである。二日酔いの朝、それが重度であればあるほど素直に反省し「もうこんりんざい飲まないぞ」と思ったりする。






 ところが、街にネオンが輝く頃になると、身体も頭もそんな事をケロリと忘れてしまうのだ。あれほど不快感をもようした身体も快調、快調。元気いっぱい。それから先は言うまでもない。お酒を飲まない人や女房族は「なんて馬鹿な人達だろう」と、蔑みの目だ見るのだろうが、それが男、酒飲みの酒飲みたる由縁である。


酒


 「そんな事が分からねえのか」と、開き直っても見たいのだが、こればかりはその通り。反論の余地がないほど、みんなよく分かっている。「休肝日」という言葉だって知っている。週に何日かお酒を飲むのを休み、肝臓を労わるほうがいいに決まっている。まともな人なら「分かっているのならなぜ」と、言うのだろうが・・・。人間とはらちもない動物なのかも知れない。






 昨夜は中学時代の同級生達が集まる無尽会。無尽会といっても、あの頼母子講的なものではなく、気心の知れた仲間達がワイワイ、ガヤガヤ、たわいもなく話し、お酒を酌み交わすのである。みんなとっくに定年を過ぎて職場をリタイアしているから出席率は抜群で、月に一度の集まりには14人のメンバーがほとんど全員顔を揃える。





 決まった会場となる街の割烹の店では、この時期だから工夫した鍋物などを出してくれる。酒、ビール、焼酎、ウイスキーなどメンバーの酒肴もさまざま。この日は仲間の一人が岩魚の骨酒を用意して来てくれた。この男は根っからの釣り好きで、地域の漁業組合の幹部も務めている。





 この日のために冷凍保存しておいてくれた岩魚を熱燗の中に入れて飲むのである。岩魚は27~8cmもある立派なものだ。解凍したばかりの物を生のままお燗に入れるのだが、これがまったく生臭くないのである。べっ甲色になった骨酒は味と言い、香りと言い、絶品だ。


お酒


 「どうして生臭くないの?」「こんなでっかいヤツ、どこで釣った?」




 当然のことながらあっちからもこっちからも質問が飛ぶ。そこでまた当然のように、その男の解説が始まるのだ。その解説を肴にまた飲む。本当に、えもいわれぬ程旨いのだから盃が進むに決まっている。そして二次会はお決まりのカラオケ。今度はビールや焼酎。行き着く先は午前様。そしていつもの二日酔いである。明日は別の忘年会だ。





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お歳暮の蟹と大吟醸

 「お父さん、○○さんからお歳暮が届きましたよ」

 「いつも悪いよなあ。今年はお前と一緒に作った枯露柿、送ってやるか」


枯露柿


 東京に住む親しい友人から今年も大きなタラバガニが届いた。私が蟹大好き人間と知っていてこの人は毎年、蟹を送ってくれるのである。もう何年になるだろうか。その度に、夜が早いこの時期、早めの晩酌をしながら、じっくり頂くのだ。保冷技術もよく、しかも前日発送された物は翌日の午前中に届いてしまうのだから、鮮度も抜群。旨い。勢い、お酒も進む。


タラバガニ


 蟹好きの私は、女房が笑うほど上手に、しかも綺麗に食べるのである。足も本体も、そして最後はミソも合わせて甲羅酒。これがまたいい。つまり、みんな、しっかり頂いてしまうのだ。




 蟹といえば、私には忘れられない味がある。もう35年ほど前になるが、当時の総理府の外郭団体に「北方領土対策協議会」というのがあって、その案内で北海道・根室の納沙布岬に行ったことがある。確か引揚者対策の施設だったと記憶しているが、根室の市長もお出でになって懇談した折、ご馳走になったタラバガニである。




 何月だったか覚えていないが、とにかくコートの襟を立てるほど寒い時期だった。蟹とはこんなに旨いものかと思うほど美味しかった。市長ら地元の人たちのダイナミックな食べっぷり。「今が旬」と話していた。産地だから獲り立ての蟹だったのだろう。旨いはずだ。寒さも、味に彩を添えたのだろう。お歳暮に蟹を頂く度に、根室を思い出す。


お歳暮


 当たり前だが、このお歳暮、その人の住む環境や立場によって意味合いや心も変わるもの。例えば、会社勤めの現役時代がいい例だ。お中元も含めて、お歳暮のやり取りの多くはそのときの立場やポジションによって行き来する。もちろん、心がないわけではないが、多くは義理である。部下から送られてくるものもあるし、取引先の会社から機械的に送られてくるものもある。いわゆる儀礼なのだ。




 それが証拠に、会社を辞めれば、潮が引くようにそれがなくなっていく。職場を去って3年。その儀礼的なお中元、お歳暮はほとんど全部と言っていいほどなくなった。その代わり、残ったお歳暮のやり取り、新たに生まれるやり取りは、みんな心が通ったものばかり。親しい友だから、お互いが好みまで知っている。だから、お中元とかお歳暮の時期に拘らずに旬に合わせたり、旅先からも送ったり、送られたりする。




 つい先日は広島から「賀茂泉」というお酒の大吟醸が送られてきた。家族ぐるみでお付き合いさせて頂いている女房の学生時代の友達で大方さんというご夫妻。昨年、広島にお邪魔した折、ご馳走になったそのお酒が「美味しい」と言ったら、折に触れては送ってくれるのである。お世辞抜きで、このお酒が旨いのだ。「賀茂泉」の社長が聞けば涙を流して喜ぶかも知れない。

賀茂泉


 意気投合したこのご主人は、まったくの下戸。こちらからは毎秋、葡萄をお送りする。喜んでくれるその顔がまた嬉しい。とにかく、今夜は蟹と「賀茂泉」で乾杯だ。




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傑作の枯露柿

枯露柿


 お待たせしました。枯露柿が出来上がりました。と言っても皆さんのお口にお届けできないのが残念。もちろん、我が家の枯露柿は女房と二人、見よう見真似、近所の人に手ほどきを受けながらの≪作品≫だから商品となる贈答品とはおよそ違うことは残念ながら言うまでもない。




 それでも、今年は400個を超す枯露柿を作った。物置の軒先に特設の干し棚を設け、我が家の畑で採れた甲州百目を吊るして天日干して来た。400個と言っても我が家の畑の分は300個弱。残りの100個はご近所から頂いたものだ。慣れない手つきで皮をむき、嬉しそうに枯露柿作りに取り組む女房の姿を見てか「せっかくだから、もっと作ったらいい」と、わざわざもって来てくれたものである。


枯露柿



 この地方の枯露柿作りは、サクランボや桃、葡萄などの果樹農家が、その農閑期を利用してのいわば副業だ。と言っても、隣接の松里地区を中心にこの地域は枯露柿の一大産地。恐らく、これから年末、年始にかけて皆さん方がお食べになる枯露柿の多くはこの地方から出荷されたものと言っていい。山梨の片田舎やこのブログ記事を思い浮かべながらお食べ頂きたい。




 今年は、手頃の冷え込みと空っ風も吹いて、まずまずの出来具合だという。枯露柿農家はぼつぼつ出荷作業に入っている。クリスマス、年末年始の贈答品市場がターゲットだ。パラフィンで一つ一つ包まれて小さな箱に詰められた枯露柿は一箱1万円前後で市場に出回る。高級贈答品と言っていい。ただ、年が明けての出荷だと市場価格は大幅に下がる。


干し柿



 加工食品にありがちな添加物は何もない。強いて言えば生柿を皮むきして天日干する過程で殺菌と仕上がりの色をよくするための硫黄燻蒸だけ。砂糖も香料も一切添加していない。防腐剤だってしかりだ。まったくの無添加食品で、天然のお菓子と言っていい。私は農家が作るまさに芸術品だと思っている。天日干で最初から最後まで作るから太陽の光もいっぱい吸い込んでいる。こんな加工食品は枯露柿を置いて他にないだろう。





 枯露柿作りのコツはどうやら干し具合と揉み具合のようだ。特に、揉む過程で「芯切り」という作業がある。この芯切りをタイミングよく、しかも上手にしないと、あのスマートな枯露柿の形が生まれないのである。芯を切る、と言っても刃物ではなく、指先で外側からつまむようにして、時期を見ながら二回にわたって切っていくのだ。


枯露柿



 味は別にして、プロが作る枯露柿と我が家のものでは歴然と違う。同じように天日干ししているのに色も形もまったく違うのだ。揉み方と、この芯切りの仕方がまぎれもない原因である。もう一つ、色が悪いのは、我が家のものは硫黄薫淨ではなく、湯通しているためだ。しかしこの方法の方が味はいいのだという。100度ぐらいの熱湯に10秒浸けるのである。



 「お父さん、何も、出荷してお金を頂くわけじゃないし、家で食べたり、親しい人に差し上げるんだからいいじゃない」



 そう。女房の言う通りだ。来年はもっと上手になるだろう。





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ロータリーアンのクリスマス

クリスマスツリー


 もう、そんな季節がやって来たのだ。夜、車で走っていると、あっちこっちの家にクリスマスの電飾が。赤、青、黄色。さまざまに模られたイルミネーションが闇に浮かび、子供ならずとも、心弾むような、ロマンチックな気分にさせてくれる。なぜか、その電飾は数軒ずつかたまっているのである。ある知人が、こんなことを言った。




 「あれねえ、隣近所というか、人間の心理を見事に反映しているんですよ。最初、どこかの家で、この電飾を始めますよねえ。すると、それが両隣に波及するんです。そこで、もう一つ面白いのは、波及の方向。全てとはいえませんが、その波及の順路は道を挟んで反対側ではなく、一方づきながらやがて反対側にも広がるんです」


電飾


 へえ~。そんなものかなあ、と注意して見たら、やっぱりそうだ。まあ、そんなことはどっちでもいい。子供達と一緒に楽しそうにクリスマスの電飾の飾り付けをする若いお父さんやお母さん。平和な家庭の証だ。微笑ましくもあるし、傍から見ていても楽しい。


クリスマス2


 私たちのロータリークラブでは毎年、12月の第二土曜日と決めてクリスマス家族会を開いている。メンバーが子供達やお孫さん、おじいちゃん、おばあちゃんまで連れてきて、みんな一緒に和やかなひと時を過ごすのである。メンバーの奥さんはもちろんだ。歌やゲーム、子供達や奥さん達へのプレゼントもいっぱい。


クリスマスサンタ



 名前の通りの家族会だが、恒例で市長やライオンズクラブ、JC(青年会議所)の代表をもお招きする。クリスマスならではのカラフルなとんがり帽子やレイがみんなよく似合う。催しの裏方を務めるのはクラブ内で分担しているクラブ管理運営委員会の親睦担当のメンバーたち。事前に「炉辺会談」という古めかしい名の打ち合わせ会を開いて、その趣向を凝らす。




 街のアマチュアバンドを呼んで来たり、時にはプロの歌手をお呼びすることも。いずれにしてもみんな手作りである。夫婦揃っているから金婚式や銀婚式を迎えた会員カップルのお祝いもする。お祝いの花束は会員が営む花屋さんから、子供達や奥さん達へのプレゼントは出来るだけメンバーに関係するお店から調達する。大はしゃぎで喜んだり、楽しんだりしているのは子供達ばかりではなく、お父さん達も同じ。和やかなクリスマスの夜は更けていく。



クリスマス会ステージ


 この家族会が済むと、わがロータリークラブの年内の行事はあと一回の例会を残すだけ。7月から始まるロータリー年度は前半から後半へと折り返す。対外行事は別として、クラブ内の行事は親睦旅行も済んで大きな行事は一段落。一年交代の今年の三役(会長、副会長、幹事)も内心ホッとしているだろう。




 一年が経つのがやたらと早い。あと10日足らず、クリスマスが終わって街の電飾が消えれば、すぐ除夜の鐘だ。今度はお寺の鐘を突く。一夜明ければお正月。手のひらを返したように、あっちこっちの神社に初詣だ。よく考えれば日本人は面白い民族である。世界的にも珍しいに違いない。

門松


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喪中の挨拶状

喪中


 「お父さん、○○さんのお母さんがお亡くなりになったんだそうですよ。今からでも、ご挨拶にお伺いしなきゃあ・・・」



 女房がポストに届いた「喪中」の挨拶状を私の手元に持ってくる。



 「喪中につき年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます」



 文面はみんな同じだが、こんな挨拶状が11月に入れば毎日のように届く。もちろん、ほとんどが葬儀・告別式に弔問しているので心当たりがあるのだが、中には、この挨拶状で初めてご不幸を知ることもある。特に友の奥さんのご実家のご不幸の場合、知らせがなければ知る由もない。そんな時、早々に文(ふみ)をお送りしたり、お悔やみに駆けつけたりする。この場合、決まり文句のような言い訳を伴うのだ。「知らないこととはいえ・・・」。



喪中2



 この挨拶状は文言の通り、喪中であることを知らせ、予め年賀状など新年の挨拶をしないことを伝えるのだ。≪ブク≫を被らせてはいけない、という配慮からである。その習慣がどこにもあるかどうかは分からないが、ここ山梨ではある意味で年末を控えての風物詩でもある。人々が年賀状を書き始める前に発送することは言うまでもない。




 毎年、年賀状を交換している親戚、友人、知人など親しい人達を対象にする人もいれば、葬儀・告別式への参列者全員に出す場合もある。昨年の年賀状の控えではなく、香典帳を基にした、いわゆる儀礼的な発送だ。その場合、かなりの枚数になるから、作業も大変。時期が制約されているので、年賀状のように明日、明日と先送りは出来ない。




風景



 「あの人も・・」「この人も・・」。今年はお葬式が多かった。少なくても10件や20件ではない。年々その数が多くなるような気がする。このお葬式にお伺いする数は、人それぞれの交友関係のバロメーター。一般とは少々性格を異にするが、政治家は大変だなあ、と思ったことがある。「私なんか少ない方」と言う、ある県議会議員の場合、その数は350件を超すと言う。平均すれば、毎日、1件の割合でお葬式を廻っていることになる。




 法律で政治家の寄付行為は禁止されているとはいえ、お葬式の香典は古くからの慣行であるばかりか、相互扶助的な意味合いもある。手ぶらで弔問するわけにもいくまい。大きなお世話かもしれないが、その経費だけでも大変だろう。大政治家ならいざ知らず、県議会議員や市議会議員など、献金のような政治資金がほとんどない地方政治家の場合、頭が痛いはず。全く大きなお世話。選挙のためだから仕方がないか・・。



富士



 喪中の挨拶状が一段落する頃になると師走。一年が経つのがなんと早いことか。仕事に追われ、毎日を慌しく過ごしていた現役時代の方が一年が長かったような気がする。今年の幹事さんは手回しがいい。とっくに新年会(クラス会)の案内状が舞い込んだ。窓越しに見える富士山も下界に降る一雨ごとに雪化粧を厚くする。庭の柿の木も日に日に葉っぱを薄くしている。地面に落ちた枯葉がカラコロと音を立てて転がる。こうしてパソコンを叩く足元も冷たくなった。師走になると時間の経つペースはどんどん速くなる。一日送りにしていた年賀状だって書かなければならない





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子供たちのケイタイ

 もうすぐクリスマスやお正月。子供たちにとってクリスマスプレゼントやお年玉がもらえる心弾む季節だ。夏休みほど長くはないが、楽しい冬休みにもなる。その一方で大人たちは「子供対策」を考えるのである。プレゼントやお年玉ばかりではない。冬休み中の「生活指導」の方策だ。


クリスマスケーキ   プレゼント   お正月


 昨夜、公民館で「青少年育成地区市民会議」が開かれた。四つの地区の区長を始め、PTA育成会体育協会老人クラブ人権擁護委員民生委員消防団に至るまで各種団体の代表が集まって冬休み中の子どもたちの生活指導について協議するのである。もちろん、小、中学校の校長先生や生活指導担当の先生など学校側の代表も出席する。


青少年育成会議1


 気が緩みがちな子供たちの非行防止や健全育成について地域や家庭、学校の立場から話し合うのだが、その中身は、地域ぐるみの挨拶運動の展開、家族の間でのコミュニケーションを促すための団欒など主だったものは同じ。だが、だんだん重きを増しているのは、やっぱりケイタイインターネットの存在だ。




 「携帯電話やインターネットの使い方について家族でよく話し合うと共に、アダルト、出会い系サイトへの接続防止ソフトやプロバイダのフィルタリングサービスを利用し、青少年に視聴できないようにしましょう」




 「携帯電話は安易に買い与えないようにしましょう



 資料のプリントには、こんな所にアンダーラインや◎が。論議も、このケイタイやインターネットに集中する。


青少年育成会議2


 論議の行き着く先は「子供に携帯電話は必要か」「学校に持ち込ませないように規制すべきだ」ということになる。学校側は「教育現場では必要ないものだが、子供の安全対策連絡のため必要、というご父兄の声もある」と、戸惑いも。つまり、総じて大人たちは、このケイタイを「モシモシ」の電話としてだけしか捉えていないのである。





 この論議を子供たちが聞いたら「今の大人たちは何にも分かっちゃあいねえんだよなあ~」と笑うだろう。子供たちにとってケイタイはもはや電話ではなく、もっと高度な、もっと「普通な」IT機器なのである。その奥深い、子供たちには当たり前のケイタイを知らないのは、そこに居る先生も含めて、私たち大人たちだろう。




 大人たちは大抵の事なら子供たちのする事、考える事は分かる。自分が来た道だからだ。しかし、ケイタイやインターネットは、その来た道に全くなかった。「俺たちは・・・」とハナから遠巻きに居る人達はもちろん、分かっているようなつもりでいる大人たちでさえ、実はほとんど分かっていないのだ。




 そこにケイタイやインターネットをめぐる指導の難しさがある。事実、この日の会議でも同席した校長先生は「実は私たちにも・・・」と本音をちらり。こうしている間にも子供たちは、どんどん、その奥へ奥へと入っていっているのである。もし、指導をするとすれば、もはや家庭の域を超えていることに気づいていない。しっかりしないと事故が起きる。





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人権擁護と炭焼き小屋

秋

 12月4日から全国人権擁護週間が始まった。初日の4日、山梨県人権擁護委員会連合会の山梨グループは山梨市民会館で終日、特設人権相談を開設する一方、午前と午後、広報車を繰り出して市民への人権啓発に努めた。広報車は山梨市の市街地はもちろん、埼玉県境まである同市の山間部までくまなく巡回、人権の大切さを訴えたり、「いじめ」など人権侵害があった場合の気軽な相談を呼びかけた。





 特設相談は隔月で山梨市の市民会館などを会場に同市内に委嘱されている人権擁護委員14人が2~3人一組で相談に応ずる。一方、これとは別に甲府地方法務局やその出先では常設の相談所が開設されていて、山梨県内に218人いる人権擁護委員が交代で毎日、相談に応じている。県下各地から手弁当でやって来て、午前9時~午後4時まで民間の相談員の立場でその業務に当たるのである。




 啓発活動は広報車の巡回やパレード(人権週間中)のほか、それぞれの地域の小、中、高校生を対象とした「いじめ110番」への利用を呼びかけるチラシの配布、また、毎年いくつかの小学校を指定して「人権の花」を子供たちに配ったり、その種を風船に託したりする。「人権の花」は子供たちばかりではなく、祭りや商店街の大売出しなどの機会を捉えながら一般の大人たちにも配って理解を求める。


三富


 この日、山間部の広報車巡回の案内役を買って出てくれたのは旧村の三富村から出ている67歳の委員さん。先頃の合併後は三富地区という。雁坂という峠を越せば、お隣はもう埼玉県の秩父。山梨市の一番北の端で、人口1,200人足らずの小さな部落だ。村役場の幹部として長い間行政に携わってきただけに、地域住民への愛着も人一倍で、人権擁護のボランティア活動にも熱心。特設、常設の相談会はもちろん、各種の啓発活動や研修会も参加を欠かしたことがない。


炭焼き小屋1   炭焼き小屋2
炭焼き小屋3   薪


 この人は農業の傍ら、趣味で炭焼きを始めた。人権の巡回啓発広報を終えて帰る途中、その炭焼き小屋を見せてくれた。埼玉県境に近い国道140号,通称「雁坂道」からやや西にそれた山すその集落。3m四方はあろう炭焼き小屋からは白い煙が冬の空に寒々しく立ち昇っていた。ちょっと反対側に目を注げば谷底のような所を流れる笛吹川の支流が。その崖の上からは高さ数10mはある滝が流れ落ちていた。紅葉から枯葉に変わってはいるものの周囲の木々とマッチして見事な景観を見せていた。


滝


 「こんなのどかで、自然豊かな所で、犯罪はもちろん、人権侵害事案など起こりっこないよなあ」



 同行者の一人が誰に言うともなくつぶやいた。確かに犯罪や各種の人権侵害事案の発生には生活環境が大きく影響を及ぼすだろう。社会環境や家庭環境が複雑になればなるほど人の心は歪みかねない。地域や家庭の意思の疎通が希薄になればなるほど、あっちこっちの人間関係にひずみが出来るのは当たり前。子供のいじめ一つとっても都市部に多いのも頷ける。自然もいつまでも豊かでありたい。


吊り橋


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俺は粗大ゴミ

ゴミ置き場


 もう年末が近いのか。地域防災無線から流れる「粗大ゴミ回収のお知らせ」のアナウンスを聞いて、そんなことを思った。私達の地域の場合、粗大ゴミは通常のごみ収集とは別に、年に数回、日時を指定して回収している。年末が中心だ。有料(テレビや冷蔵庫などの電化製品)と無料があって、業者を巻き込んだ大掛かりな回収である。




 この地区は旧村の岩手村(昭和の合併で山梨市に)という所で、今の世帯数は500戸ほどのこじんまりした地域である。回収の指定場所は、この時期は休眠状態に入っているJAの果実共選所前の広場だ。年末にはちょっと早いようだが、市内を一巡するには今から始めないと間に合わないのだろう。



 「粗大ゴミの回収だそうよ。お父さんも行くんでしょう」



 アナウンスを聞いていた女房がかる口を叩いた。



 「おい、おい、俺は粗大ゴミかよ」



 「冗談よ、冗談。お父さんが粗大ゴミであるわけないでしょう」



 女房はちょっと言い過ぎたと思ったのか、ニヤニヤしながら慌てて打ち消した。でも、よく考えてみれば今の俺は女房にとって粗大ゴミみたいなものかも知れない。風が吹いても嵐が来ても毎朝、決まった時間に出勤し、月末にはきちんと給料を運んできた数年前までと違って、今は、毎日が日曜日。時に、やぶせったい存在に違いない。


family.jpg



 三度の食事だって作らなければならないし、箸の上げ下ろしまでとは言わないまでも、いなければ聞かなくてもいい小言だって聴かなければならない。ナスやキユウリ、白菜や大根、サツマイモやサトイモ、そんなものを作る百姓の真似事だって、ほとんど女房も一緒。今はこまごました家事を考えれば一日の仕事量は女房の方が多いのかも知れない。





 人間とは、夫婦とは面白いものだ。毎日、朝から晩まで忙しく仕事をしていた頃は、少なくとも≪粗大ゴミ≫などという言葉を口にしなかった。そこには無意識のうちにも給料という名の生活費を稼いで来てくれる≪一家の主(あるじ)≫としての受け止め方があったのだろう。「のどもと過ぎれば・・・」。先人はうまいことを言ったものだ。給料の運び屋を辞めて5年も経つと、女房たちはいつの間にかその≪ありがたさ≫を忘れてしまう。
妻

 「お前は今、誰のおかげで飯を食っていると思っているんだ」
時々、女房の言葉の節々が妙に引っかかって、冗談とも本気ともつかない、こんなことを言うことがある。世の女房族のみなさんには案外分からないかも知れないが、男には「沽券(こけん)」というものがあるのだ。

夫

 サラリーマン時代からそうだが、私は、家事は一切、女房に任せている。その代わり給料は全部女房に渡して来た。それをどう使おうと口を挟まないことにしている。今は銀行振り込みになったが、給料袋の時代もずっと丸投げした。先日の「振り込め詐欺」についてのブログ記事で、私は被害者にならない事を前提に人ごとのように書いたのはそのためだ。お金と言うお金は全て女房任せ。騙されても振り込みようがないのだ。





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年下の訃報

 突然の訃報がショックだった。一隣家に住んでいて、区の役員を一緒に務めていた間柄で、ついこの間の役員会や市道の補修工事、防火貯水槽の泥上げ作業で一緒になったばかりだった。今思えば、ちょっと顔色がよくなかったかなあ、と思うくらいで、いつもと変わりなくにこやかに話し、元気に作業にも加わっていた。


風景


 享年62歳。私より六つも若い。残された奥さんやまだ独身の息子さんも力を落としただろう。家族の話によれば、この人は大の医者嫌い。誰だって医者が好きなんて人はいないが、そんな半端なものではない。





 結果的には肺炎をこじらせたのが命取りになったのだが、この時も40度を超す高熱に震えをきたしながらも医者へ行こうとせず、近所の人に諭されて救急車で病院に運ばれたくらい。防火貯水槽の泥上げ作業で傷つけた手が化膿し、大きく膨れ上がった時も「こんなものすぐ治る」と言って家族の医者行きの勧めを拒んでいたという。





 体力が弱ったところで引いた風邪が引き金となって肺炎を併発、これが致命傷になってしまった。「家族や周りの話を聞いて早く医者に行っていたら・・・」。これこそ、後の祭りだ。同じ60代の人間とすれば、まだまだこれから、と思いたい。それだけに告別式は涙ながらのものとなった。

花



 この地方は10年ぐらい前まではどこも自宅葬だった。しかし、民間や広域行政、それにJAの葬儀場が次から次へとお目見えして、これに取って代わった。通夜、告別式と続く葬儀は隣組が何をさて置いても手伝い、運営するのだが、斎場葬になってからは、隣組がする仕事はほとんどなくなり、昔は帳場といわれた受付の仕事くらいのもの。斎場業者がほとんど全てを取り仕切ってくれる。






 ついこの間といっていい自宅葬の時まで脈々と続いてきた野辺の送りもなくなった。だから、それに伴う松明や提灯、五色の旗はもちろん、墓標も姿を消した。葬儀のスタイルは大きく様変わりした。いつの間にか葬儀の際の親族の座り方まで定着した。つまり、祭壇に向かって左側に女性、右側に男性といった具合である。どうしてこの不文律が出来たのか、私にはよく分からない。まあ、そんな事はどっちでもいい。


菊  


 山梨の場合、他県に比べて葬儀が派手で、丁寧だという。時々行くことがある東京や埼玉の場合、ほとんどの弔問客が通夜で弔問焼香を済ませ、翌日の告別式は親族が中心。親族が心静かに故人を送るケースが多いような気がした。続く略式の初七日法要も、もちろん内輪の色彩が強い。通夜を中心とした一般の弔問客も黒の式服(略式)ではなく、普段のスーツにネクタイを変えるだけ。合理的に見える。





 ところが、山梨では通夜と告別式がほとんど同じ事をするのである。一般の弔問客も同じように二度行って焼香をし、葬儀に続いて営んでしまう初七日法要も100人,150人は当たり前。多いケースでは200人,300人も珍しくない。通夜と葬儀の目で見た違いは僧侶の数ぐらいのものだ。隣人の葬儀に臨みながら、お葬式の変化をふと考えた。





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振り込め詐欺にご用心

ATM2


 「お母さん、振り込め詐欺になんか引っかかるなよな」


 「私なんか、どんな電話がかかってきたって、騙されるようなへまはしませんよ」


 「バカ言え、そういうヤツがすぐ引っかかるんだよ。娘やおふくろでもヤツらに仕掛けられたら一発さ」



 地域防災無線で今日も繰り返される振り込め詐欺の被害情報と注意を呼びかけるアナウンスに、女房と交わした会話である。女房は最後にはこうだ。



 「お父さん、大丈夫、大丈夫。うちには何百万ものお金をポンと振り込むほどのお金、ないもん」


 これには一本とられた。バカな夫婦のこんなやり取りはともかく、≪振り込め詐欺に注意≫のアナウンスはこのところ毎日である。




 「山梨市役所と日下部警察署から振り込め詐欺に注意のお知らせをいたします。昨日、山梨市内の70歳代の女性が振り込め詐欺の被害に遭いました。山梨市の職員を名乗る男から電話があり 『 後ほど社会保険庁からも連絡があると思うが、お宅は社会保険料の未払いがある。連絡があり次第お金を振り込んでください 』 と言われ、この女性はATMから振り込んでしまいました。市役所はこのような電話はいたしません。もしこんな電話があっても絶対に振込みをせず、市役所か警察にご連絡、ご相談ください」



ATM4



 防災無線については前にもこのブログで書いたが、こうした注意情報は各地に設けられた地域基地局から市内全域に一斉に流れる仕組みである。振り込め詐欺の手口は、保険料の未払いや子ども、孫の交通事故を装ったものなどさまざま。市役所や県庁、警察などを言葉の上で巧みに絡ませて騙すもので、ターゲットはお年寄りや主婦。1万数千世帯ぐらいの山梨市内で毎日、誰かどうか被害になっている勘定だ。





 犯人は東京なのか大阪なのか分からないが、日本のどこかで電話を使って大量の仕掛けをしているのだろう。私はこうした騙しの電話に出っくわしたことはないが、言葉は極めて巧みなのだろう。皆がみんな「私は絶対、引っかからない」と言いながら、巧みな言葉に騙されてしまうのである。



ATM3


 被害の連続にたまりかねたのか今日はこんなアナウンスも流された。


 「市老人クラブ連合会は明後日、地区公民館で、悪徳商法予防講習会を開きます。お年寄りや主婦の皆さんのご出席を・・・」



 市役所や警察が老人クラブとタイアップして地域ごとに振り込め詐欺予防の出前講座を計画したのだ。毎日のように出る被害から類推すれば、ものすごい数の騙し電話がかかっていることは容易に想像できる。



 「私だけは絶対騙されない」。そんなあなただって引っかかるかも。普段、亭主の言葉なんかに敏感に反応しない女房も、娘のことでも引き合いに出されれば・・・。石川五右衛門ではないが「世に盗人の種は尽きまじ」とはよく言ったものだ。悪いヤツは今日もどこかで暗躍している。





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法被と消防協力隊

 法被。さて、皆さん方は、この二文字の言葉から一体何を連想されるでしょうか。祭り商店街の大売出し各種のイベントさまざまな啓発活動消防団交通安全協会、防犯協会。伝統的な木遣り保存会の見事なあの節回しを思い浮かべる人もいるだろう。なんとなく古風なイメージを持った着物のような気もするが、今も、あっちこっちで生きている。もちろん、その性格によって、全体の色やデザインは異なる。でも、形そのものは少しも代わっていないのである。


法被1   法被2


 我が家にも一着の法被がある。作ったばかりの真新しい法被だ。胸から両側の縦に「岩手分団」「紺屋区消防協力隊」の文字が黒地に白で染め抜かれている。背中には県名「山梨」をあしらった、おなじみの消防団の法被である。違うのは一方の胸から下に染め抜かれた「・・・消防協力隊」の文字だけだ。



 「消防協力隊」はその名の通り消防団への協力部隊である。この4月に発足した。その背景や理由はおおよそお分かりになるだろう。私達の地区の消防団も、ずっと昔から若い人たちの手によって引き継がれてきた。ひとたび火事が起きれば消火の先頭に立ち、地域防災の旗手としての役割を果たしてきた。


消防1


 しかし、その消防団がやせ細る一方。この地域ばかりではなく、世に言う少子化現象を反映、それを担う若者達が減少しているからだ。それに、農業後継者であるはずの若者達の農業離れが拍車をかけた。



 「このままでは万一の場合、地域を守ることは出来ない」



 誰からともなく、そんな声が上がった。そこで登場したのがこの消防協力隊である。いわゆる自主防災組織。消防団OBはもちろん、日中、地元にいることが可能な75歳までの人たち35人余りで編成した。区長代理でもある私が隊長役でもある本部長を仰せつかった。

消防3


 各組長らで本部を構成する一方、機械、水利、交通、筒口ホースの各係りを設けた。本部は部隊の司令塔、機械係はポンプ車、筒口ホース係は最先端での消火作業を担当する。交通係は万一の場合の交通整理だ。水利の確保も含めて日ごろの備えが必要。このため、消防ポンプ車の整備を担当する班も作った。全体を6つの班に分け、ポンプ車の点検整備はもちろん、班ごとに月代わりでポンプ操法の訓練もしている。全員がポンプ車を操れなければ万一の場合、役に立たない。備えあれば憂い無しである。

消防2


 消防ポンプ車の操法訓練は午後6時半からと決めている。夏の時期ならともかく、冬の時期だと真っ暗だ。仕事を終えた時間ということもあるが、実戦に備えるためにはむしろ夜の方がいい。もちろん、指導役は消防団。みんな真剣だ。



 自治体消防はどの地域にもある。しかし、それだけに任せているわけにもいくまい。都市とか農村を問わず、それなりの自主防災組織は欠かせない。特に、農村の場合、消防団への依存度は大きい。その消防団が少子化のあおりを食っている今、全国どの地域でも人事ではないはずである。ただ、実戦の法被は着ないにこしたことはない。





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招かれざる客・猪

「今日、畑に行ったら豪いヤツに行き会っちまったよ」
 「何に行き会ったでえ」
  猪だよ。猪。でっけえヤツだった。俺の顔を見たら逃げて行っちまったけどねえ」

猪1  えぇ汗


 回覧板を持って来ながら、ひとっ話していった近所の親爺さんとの茶飲み話である。たわいもなくと言うか、事も無げに、この親爺さんは言うが、実際は農家とって猪の出没頭痛の種なのだ。




 周りのぶどう園はだんだん葉っぱを落とし、春先から秋の収穫期まで忙しい日々を送っていた果樹農家もこの時期はちょっと一服する時期だ。肥料掛けを終えて、剪定作業に入るまではしばらく間がある。野や山の木々も紅葉を深める一方で、早いものは葉っぱを落とし始める。猪だって餌を求めなければならないので、山ばかりにいるわけにもいかない。山路や里に向かって降りてくるのだ。


猪2


 猪に出っくわしたと言う親父さんの家は、岩手山から延びる三角州のような大きな丘陵のすぐ下にある。私の家からは2~300mの距離だ。親爺さんが猪に出っくわしたのはそこから100m足らずの所。この一帯は、かつては、麦やモロコシ、サツマイモ、さらには養蚕用の桑畑だった。




 ところが米麦や養蚕が衰退して、果樹へと転換、今はサクランボの産地化が急ピッチで進んでいる。サクランボは主にハウス栽培で、小高い山路は一面と言っていいほどハウスの白いビニールで覆われている。もちろんその間に間に野菜畑や柿畑が点在する。

猪親子


 親爺さんによれば、猪に出っくわすのは今回ばかりではなく、たびたびだ。秩父山塊からこの地域の山にかけて猪が急激に増えたのはこの10年ぐらいの間だそうで、その理由を聞いて「へえー」と、驚いた。猪の天敵は狐。猪と言ってもあのでっかいヤツではなく、子どもの「うりぼう」。狐はこの小さいうりぼうを隙きあらばと狙い、食べてしまうから猪の数は自然に抑えられた。

うりぼう  

 ところが、最近、この一帯の狐が急激に減っているのだそうだ。減っている原因は定かではないが、狐の間に病気が流行?したためだという。親爺さんはこうも言う。


キツネ



 「最近、野良に行っても狐にほとんどと言っていいほど出会わなくなった。時々出会うのは野垂れ死にしている狐ばかりだよ。そのはっきりした原因は分からないが、何らかの病気であることは間違いない。伝染病かも知れない。とにかく猪はだんだん増えていて、畑ばかりでなく、家の軒先まで来たことがある」


house.jpg   イノシシ    きつね   狐



 猪は作物を荒らすばかりでなく、畑のあっちこっちをほじくり返す。ミミズなどを食べるためだという。こんなことを書くと「やまびこさんは、そんな山の中に住んでいるの?」とお思いの方がおいででしょうが、どこにでもあるのどかな農村地帯である。もう何年も前になるが、甲府市の中心街に猪が出没、デパートに飛び込んで大騒ぎしたことがある。これは猟師の追い方が悪く、山とは逆の里に追い出してしまったのだそうだ。





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大根足と大根役者

大根5


 「この大根め・・」


 大根の収穫をしながら、なかなか抜けない大根にちょっぴり腹が立って独り言を言ったらそばにいた女房が何を勘違いしたのか


 「大根とは何よ。お父さんの足なんかゴボウじゃない。まったく・・・」


 なにやら女房は自分の足のことをいわれたと思ったらしい。いい歳をしてそそっかしいのは今に始まったことではないが、それにしても面白い。確かに大根はずん胴で、女房の足によく似ている。


大根4



 真面目に怒っているのがまた面白くなって「これなんか、おまんにそっくりだよなあ」といったら、また怒っていた。この会話が聞こえたのか隣の畑で仕事をしていた老夫婦はこちらを向いて、軽く頭を下げ、ニコニコ笑っていた。



 いい天気だ。小春日和とはこんな日のことを言うのだろう。



秋の空



 「今日は暖かいですねえ」と声をかけたら、その老夫婦は帽子を取りながらこちらにやって来た。


 「立派な大根を作りましたね。これじゃあ百姓顔負けですよ」



 「お宅じゃあ、大根作らなかったですよねえ。これ持って行って、沢庵に漬けてみて下さいよ」


大根2


 このあたりは葡萄や桃、サクランボなどの果樹地帯だから本格的な農家は手のかかる野菜作りは、どちらかというと敬遠するのだ。大根をネコと呼ばれる一輪車に載せて女房に隣の家まで運ばせた。大喜びしてくれる老夫婦がまたうれしい。大根足と勘違いしてさっきまで怒っていた女房も愛想よくニコニコしていた。





 さてその大根だが、殺菌作用も持ち合わせていて、決してアタル心配のない野菜だそうだ。刺身のつまや、そのパックの下に大根の千切り?が敷いてあるのもそんな理由からだ。それが転じて生まれた言葉が「大根役者」。当たらない、つまり、いつになっても人気が出ない役者のことを言うのである。女房が言う「大根足」は、その形容から誰とはなしに言うようになったのだろう。


大根2


 大根作りには土地が深い火山灰土の地域が適しているのだそうだ。山梨県では八ヶ岳と向かい合う茅が岳山麓の北杜市明野町の「浅尾大根」が有名。真っ直ぐであることはともかく、皮が薄く、沢庵漬けにはうってつけ。味もいい。茅が岳はあの登山家であり、エッセイストでもあった深田久弥さんが亡くなった山としても知られている。




 大根は、「青首」という種類のように地上にも伸びるが、当然、地下に生長する野菜だ。だから土の浅いところは適さないのである。私の地域は粘土質で土地が浅いから大根が真っ直ぐ伸びずに曲がったり、二股になりやすい。抜くのに一苦労する。そればかりか、力を入れると途中からポキンと折れてしまうのである。でも商品として出荷するわけではないからかまわない。今年も大根足ならぬ、しなびた女房の足のような沢庵が食べられる。





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おきてがみ
プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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