下手の横好き

花札


 パチンコ、競馬は当たり前。マージャン、花札、チンチロリン・・・。ヘタなくせに、この勝負事が大好き。といってもここ1~2年、パチンコも競馬もとんとご無沙汰だ。凝るといったら聞こえがいいが、どちらかといえばはまるタイプで、ひと頃、毎週のように石和の場外馬券場に通ったことがある。




 「パチンコだの競馬だの、あんな馬鹿馬鹿しいこと、まだやってるの」


 親しい同級生から笑われた。



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 「まだ、じゃあなくて、始めたばっかりだよ」と言ったら、「遅ボケだね」とまた笑われた。その仲間に言わせればこうだ。



 「俺も若い頃、競馬に凝って、薄っぺらの給料をみんなはたいちまった。帰りの電車賃がなくなっちまうんだよ。それじゃあ家に帰れないから、帰りの切符だけは行きの切符と一緒に買っておくんだ。結局、こんな馬鹿馬鹿しい事、ときっぱり足を洗った。あれほど凝った自分が不思議に思えるんだが、今じゃあ、関心もないよ」



「へえ~、そんなもんかねえ」



 遅ボケと言われたっていい。俺はとことんやってやる、なんて思いながら、コンビニから毎週、400円の競馬専門紙を買って来ては一心に研究?馬券場に通った。女房の蔑みにも似た冷たい目線を横目にしながらである。


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 今にして思えば、この仲間の言う通り。馬鹿馬鹿しいと言うより、馬券場に行くこと自体も面倒になった。じちがなくなったのかもしれない。競馬にせよ、パチンコにせよ、およそ、勝負事というものは、その名の通り勝ち負けがあるから、のめり込むのだし、面白いのだ。もちろん、負けっ放しだったら、何をかいわんや、である。



 ただ、競馬やパチンコとマージャンや花札などは、遊び方そのものが根本的に違うのである。一方が自分ひとりの遊びであるのに対して、一方は仲間がいることだ。

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 「今日は何時から?」



 週末ともなればマージャン仲間からお誘いの電話が。こちらからも電話する。もちろん家庭もあれば地域もあるのだから、仕事や用事がないわけではない。しかし、毎日が日曜日の仲間達だから、すぐに面子は揃うのである。面子の中に、かたくなに「午前零時が限度」という仲間がいる。そんな時はいいが、そうでもなければ確実に午前様。




 「体も身のうちですよ」と、ひと頃はいぶかしがっていた女房も今では「言っても駄目」と思ったのか、さじを投げている。8時間、9時間は当たり前。時には15時間20時間の時も。面白い。時間がウソのように、あっという間に過ぎてしまう。





 さて、その勝ち負けだ。総じて上手なヤツが勝つのに決まっている。「お前はどっち?」。私はどうやら負け頭。不思議だが、人には勝負事に強い人間と弱い人間がいる。ちょっとしたジャンケン、編み蛇くじやビンゴゲームだってそうだ。理屈では計れない先天性のようなものを備えた人間がこの世の中には確実にいる。運の強い人間というのだろう。





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食文化の違い

韓国


 日本のご婦人たちが追っかけまでした、あのヨン様ブームはどこへ行ってしまったのだろう。

ヨンさま


 日本と一番近い国・韓国。顔も体形もそっくりだから、言葉をしゃべらなければ、その区別はつかない。でも、当たり前だが、習慣やモノの考え方はまるで違う。食文化だってその一つだ。




 つい先日だが、在日の韓国のご婦人と昼食をご一緒する機会があった。カレーを注文、カレーをご飯にかけたまではよかった。あっ、と思ったのはそれからだ。ご婦人は一緒についてきたポットの小さなラッキョウや福神漬けを載せ、やおらにかき混ぜ始めた。そのかき混ぜ方は、そんな簡単なものではなく、皿の中のカレーライスは、なんとも言えないグロテスクなシロモノに変身していた。


カレーライス


 それを見ながら、ふと、私たちが焼肉屋さんで食べるビビンバを思い出した。親しい甲府の焼肉屋さんのご主人がこんなことを言ったことがある。



 ビビンと言うのは韓国語で混ぜる、はご飯の意味だ。簡単に言えば、混ぜご飯。よく混ぜることが美味しく食べるコツなんです」



 そのご主人というか、社長はカネの器のビビンバを上手にかき混ぜた。よく見ると、やはりグロテスクだが、それほど違和感はない。ビビンバとはそういうものだと思っているからだろう。ところが、目の前のカレーライスはいかにもグロテスク。人間の食に対する概念かもしれないが異様に写るのだ。




 食文化の違いなのである。日本ではかき混ぜる食は少ない。納豆やとろろなど、かき混ぜることによって粘りを生ずるものくらいのもの。盛り付けられた料理を丸ごとかき回すことはない。日本の食文化は味や香り、風味、食感など、いわゆる口や鼻で味わうばかりではなく、目でも食べるのだ。だから、色や盛り付けにも工夫を凝らす。


日本料理2



 考えてみれば、日本料理ほど、繊細な食は世界にないだろう。世界の3大料理と言われるフランス料理、中国料理、トルコ料理。さらに韓国料理やロシア料理・・・。おしなべて、みんな大雑把だ。食べ方ばかりではない。食を盛り付ける器だってそうだ。例えば、フランス料理だって、器のサラも極めてシンプル。


中華



 箸。欧米では主にはフォークやナイフ、韓国や中国では箸を使うが、その箸はカネや竹。これもシンプルである。ところが、日本では、この箸まで凝っている。ホテルや旅館、料理屋さんでは凝った割り箸を使う。そればかりか、綺麗な紙の袋や紅白の水引をもあしらったりする。もちろん使い捨て。古くから衛生面を考えたものだろう。


日本料理


 しかし、この割り箸、ようやく見直されようとしてきた。自然保護、省エネの観点からだ。いわゆるマイ箸の動きである。でも、それによって食の文化が変わるわけではない。





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ザゼンソウの神秘

ザゼンソウ1


 「夏が来れば 思い出す はるかな尾瀬・・・」

そう、あの尾瀬のミズバショウを唄った歌だ。日本人ならだれもが口ずさんだことがあるだろう。この歌の通り、尾瀬のミズバショウが花開くのは夏。私は尾瀬に行ったことはないので、写真のそれしか知らない。尾瀬はともかく、ミズバショウそのものを見たことがない人はかなり多いはずだ。ところがみんな知っているし、ずっと昔から馴染み深い花のような錯覚にさえ・・・。歌の魔力だろう。





 このミズバショウを彷彿とさせるのがザゼンソウ(座禅草)。開花期は夏と初春でまったく違うが、どちらもサトイモ科の多年草だから、ご親戚だろう。ミズバショウと違って、こちらは馴染みが薄く、恐らく見たことはおろか、名前すら知らない方も多いはずだ。そのザゼンソウが今、山梨県甲州市の小倉山の山麓で見ごろ。ここは甲府盆地の東北部、秩父山塊のはずれのような所で、竹森という地域だ。




 「ザゼンソウって見たことあります?実に神秘的な花なんですよ」


ザゼンソウ2



 山梨ロータリークラブでご一緒する仲間が例会の後、その竹森のザゼンソウ群生地に案内してくれた。車で行ったのだが、JR中央線塩山駅から北へ約5㌔、時間にして6~7分の所。いわば塩山駅とは目と鼻の先。眼下に塩山の街並みが見える。




 山あいの人家からちょっとそれて、駐車場らしい広場に車を停め、1~2分歩くと、ある、ある。ザゼンソウがいっぱい。杉木立の中を小川、いや、岩清水と言った方がいいが、その流れの両側にかなりの幅で、帯状に群生しているのである。その群生は山の頂に向かって2~300m延びている。




 岩清水が集まるこの山沢の湿地帯に群生しているザゼンソウは黄色いものもあるが、ほとんどが赤茶色。大きさは15cm前後。仏像の光背に似た形の花弁の重なりが真ん中の胞子を包むように咲いているのである。まさにザゼンソウ(座禅草)の名の通り、花の中で僧侶が座禅を組んでいるように見える。卵型のこの花は別名ダルマソウともいう。


ザゼンソウ3


 回廊のようにジグザグ延びる木造板の遊歩道で、しきりに望遠レンズのシャッターを切っていたアマチュアらしいカメラマンは


 「私たちは毎年、地元の甲州市に見ごろを問い合わせては東京からやってくるんです。華やかさこそないが、ひっそりと山あいの湿地で咲く、このザゼンソウに魅せられるんです。まさに、ひなびた山あいで座禅を組む仏様か観音様。なんとも神秘的な花ですよねえ」



ザゼンソウ4


 この群生地に程近いところに住み、毎朝、ランニングのコースにしているという仲間のロータリアン氏によれば、シーズン中、週末ともなれば大勢の見物客で賑わう。県内外からのお客さんを当て込んで茶店も出るほどだ。ザゼンソウの群生地は、栃木県の大田原なども知られているが、この甲州市の竹森は、自生地としてはわが国の南限。その意味でも貴重だ。



 ただイノシシが天敵らしく、周囲には弱い電流を流す細い鉄条網が張り巡らされていた。




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座敷の雛飾り

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 「灯りを つけましょ ぼんぼりに・・・」

この間、節分、立春を過ぎたと思ったら、もう雛祭り。今年も女房が奥座敷に七段飾りのお雛様を飾った。一人娘が生まれた時、義父母、つまり女房の親から贈られたものだ。もう40年も前のことだ。でも少しも痛んでいない。サラリーマン現役時代、甲府に住んでいた時分は家が狭かったから、そこで飾ることもママならなかったが、今はスペースに事欠かない。こんな時は田舎家はいい。心なしか一つ一つのお雛様ものびのび、生き生きしているように見えるから不思議だ。



雛人形



 娘が生まれたのは昭和45年10月。この年は作家・三島由紀夫が東京・市ヶ谷の陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で壮絶な自決を図った年。このショッキングな事件は娘の誕生の一ヵ月ちょっと後だったので鮮明に覚えている。私が28歳になろうとしている時だった。今の娘の年よりずっと若かったことになる。




 43年という歳月。あっという間だった。光陰矢のごとし。雛飾りを眺めながら、しみじみとこの言葉を実感した。ふと、周りを見れば、この雛飾りを贈ってくれた女房の両親と私の親父もとっくに他界。唯一残っていたおふくろも96歳、この世を去った。晩年は自力での生活は困難になって、病院にお世話になっていた。認知症の症状が進んでもいた。主役の娘ばかりではなく、私たちにもこの雛飾りにはさまざまな思い出がいっぱい詰まっているのだ。お袋にとっては昨年の雛飾りが最後だった。


雛人形3


 田舎でも住宅構造は、どんどん変わり、合理的で、コンパクトな間取りになったので雛飾り、特に大型の雛壇飾りはしにくくなった。だからなのか、訪ねて来る近所の人や女房も含めての友人、知人はみんな自分の事のように大喜びするのだ。そこにはそれぞれの子ども達や自らの若かりし頃の思い出をオーバーラップしているのだろう。その一つ一つの顔は歳をとっても純真そのものである。
 その一人が言った。


「俺のところは男の子。毎年、端午の節句には鯉のぼりと武者のぼりを立てるんです。のぼりを立てるための竹竿が痛んでしまったので、知人にお願いして竹やぶから太い立派な竹を何本か頂いて来た。準備は万端。大きな鯉のぼりが今年も五月の風に泳ぎ、それを上回る武者のぼりがはためきますよ」


鯉のぼり



 自分の事のように嬉しそうだった。他の地方のことは分からないが、山梨では端午の節句に鯉のぼりと共に武者のぼりを立てる。文字通り武者絵をあしらったのぼりで、その丈は10m近くもある大きなものだ。鯉のぼりだって大きい。だから、それを支える竹竿だって、よほど太く、頑丈なものでなくてはダメ。市販の金属製のものだと風の圧力に負けてしまうのだそうだ。杉などの木を使う人もいるが、弾力のある竹の方がいいという。




 女の子にせよ、男の子にせよ、子どもの健やかな成長を願わない親はいまい。桃の節句、それを追っかけるようにやってくる端午の節句。そんな機会に大人たちも自らの子どもの頃を懐かしんでみるのもいい。しかし、我が家もそうだが、一人っ子が気になる。私の兄弟は4人だった。すでに結婚した甥、姪達には「子どもはたくさんがいい」と言っている。自分が歳を取ったらよく分かる。

雛祭り




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神頼みの心

鳥居


 本当に祈っているのかと言うとそうでもない。それでは祈っていないかと言うと、それも違う。頼みごとも同じだ。先頃の初詣や、普段、旅行などで寺社、仏閣に参拝した時の心の内だ。神様を信じているとか、いないとかではなく、なんとなく手を合わせ、なんとなく賽銭を投げて、手を合わせている自分に気付く。私だけだろうか。


おみくじ

 ズボラではないとは言い切れないのだが、私自身、そんなにもズボラではないと思っている。だが、はたまた、日常の生活の中で、身近にある神棚に向かっても、これとまったく変わりない自分に気付いて「おれって、ちょっとヘンかな」と思ったりすることがある。そんな私と比べ、女房は毎朝と言えばウソになるが、よく仏壇と神棚に水を上げ、手を合わせている。だから、私だけがおかしいのだろう。



 そんな私でも、神棚の祭り方でずいぶん迷ったことがある。勤めを定年で辞め、甲府から山梨市の実家に戻る時のことだ。私の実家は祖父の時代に建て替えたという築80年以上の昔風の田舎家。大きい事は悪くはないのだが、幾つもの部屋という部屋はみんなふすまや帯戸一枚の仕切りだけ。住みにくいことこの上ない。


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 このふすまなどを取っ払えば、一つの大きなホールになってしまう。その上、天上が高いから、夏場はいいのだが、冬は寒くてしょうがない。そこで、女房とも相談、一部を生活し易いようにリフォームした。居間とキッチンはカウンターを隔ててワンフロアーにし、さらに、そこと、ひと続きの所に書斎とベッドを設けた。つまり、キッチンを伴う居間と、寝室として区切らないベッドと書斎のある部屋は4本の引き戸で自由に開閉できる、文字通りのワンフロアーにしたのである。




 もちろん、それはそれでいい。ところが、はたと困ったのが神棚の取り付け場所だ。神棚の置き場所にはいくつかの条件があるのだそうで、その一つは方角。南、または東向きにし、北、または西向きにはしないのだという。もう一つ、神棚の下を人が通り抜けしないところを選ぶこと、だそうだ。もちろん目線より高い所であることは当然である。


神棚


 そんな所は、いっぱいある、とお思いだろう。ところが、この幾つかの条件を満たす所は、あるようで、ないものだ。夏、冬の冷暖房のためのエアコンだって取り付けなければならないし、部屋全体の調和や美観だって考えなければならない。当たり前のことだが、神棚に足を向けるわけにはいかない。人は寝る時、北枕はしないから、その足側、つまり、その西、または北、南はダメ。そこに方角の南、または東向きの条件が絡むのだ。こう書いている本人だってこんがらかってしまうのだから、お読みになる方はなおさらだろう。


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 人によっては、そんな事どっちだっていいだろう、と言われる方もおいでだろうが、いざ自分のこととなると、案外、縁起や風習に拘るもの。結局、幾つかの条件に適った所は、たったの一箇所だけ。それも、大きさを考えないと全体の調和が取れなかった。神棚の拝殿?には天照皇大神宮の分厚いお札。地域の道祖神や氏神様のお札も。女房は何か頂き物をしたりすると、仏壇と共にお供えしている。言葉には表さないが、えらいいものだ。



神棚2



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「世論」は化け物?

 「百万人と言えども、われ往かん」


今の時代では、何か古めかしい響きさえある言葉だ。お前はどうだ? 俺? 気概としては持ちたいのだが、さて・・。やっぱり「赤信号、みんなで渡れば怖くない」の類かな。


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 この言葉、正しいと思ったら勇敢、果敢に物事に立ち向かっていくことを言う。その根本を一歩間違えると、一転、頑固オヤジ、偏屈人間に成り下がる。しかし、しがない私達のような市井の人間はともかく、国の将来を左右する政治家の先生方には、少なからずこの気概をお持ちいただきたいものだ。茶の間で、アホ面してテレビを見ながらそんな事を思った。世論なんてクソ食らえ。国家百年のため・・。そんな先生がいたっていい。





 柄でもない、ちょっと堅苦しい話になるが、大勢いる、あの衆参両院の先生方が「世論」の名の元に、みんなで右往左往している。言葉を変えれば、その「世論」を背中に背負って、言いたい放題。そこには政治家としての「自分」があるようには見えないのだ。世論、という百万の味方を背にしていると思っているからか、その顔は自信たっぷり。


国会議事堂


 でも、この「世論」とはいったい何者だろう。ヘンな世の中、こんなことを閣僚や政党のボスが言ったら、その日のうちに首がすっ飛ぶのだろうが、この「世論」というヤツ、私は、得体の知れない、いわば、化け物だと思っている。政治家先生だって、むやみに「世論」を言うわけにはいかないから、新聞やテレビ、いわゆるマスコミの論調を引き合いに出したり、多くはそこが実施する「世論調査」のデータを楯にする。




 さて、その世論調査である。新聞やテレビがその都度明記するサンプル数は、およそ3,000。全国でである。当然、回答率は100%というわけにはいかないから、いつも、その数は1,600~1,700。多くても2,000に満たない。一億2,000万人分の、その数だ。統計学的にはそれでいいのだそうだが、感覚的には、なんとなく首を傾げたくなる。


電話



 調査の手段は電話。私の家も過去に、たまたまその対象になったことがある。感情移入を避け、調査の公正化を期すためだろう、音声はコンピュータ。そこで、はたと考える。男女とか年齢が偏らないだろうか。独り暮らしならともかく、一家で電話に出る場合、確実に主婦・女性の方が多いはずだ。もちろん、統計学的には回答者の中で分析すればいいのだろうが、全体的なウエイトは主婦層に掛かっていることは間違いない。住民票の台帳を基にした、かつての調査方法と比べればかなりラフだ。




 そんなことはどっちでもいい。問題は、結果的に「世論」として世に出て来る個々の回答だ。身近な問題ならいざ知らず、内閣支持などといったら、私なんか、何を判断基準にしたらいいのかわからない。勢い、知らず知らずのうちに新聞やテレビの論調に左右されている。特に今のテレビのように、良きにつけ、悪しきにつけ、ことある度にあの大合唱をされたら、しがない私なんかどっちだって行ってしまう。ただ、私たちが普段、野良や炬燵でするお茶飲み話と、国会の先生達やマスコミが言う「世論」とは、何か、ちょっと違うことが多いような気がする。誘導されているような気がして。私ばかりだろうか。



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女房と手紙

 「お父さん、ハワイに手紙、書いてよ」

 「お前が書けばいいじゃないか」

 「だって、私、ヘタだもん。頼みますよ」


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 私の従兄弟で、ハワイに住む老夫婦からの度々の手紙を受け取った後、女房とこれまた度々交わす会話だ。従兄弟は私と20違う89歳。その連れ合いは女房とやはり20違う87歳。このところ、私たち夫婦がハワイに行ったり、あちらの夫婦が日本に来たりして交流する機会が案外多く、その度に世話役となる女房の方が、この老夫婦とは仲がいい。


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 望郷の念もあるのだろう。近況を伝える手紙や写真、贈り物が度々届くのだ。女房もまた枯露柿を作れば枯露柿を、それに山梨の名物・鮑の煮貝や老夫婦の健康を気遣っては日本の栄養剤を送ってやっている。普段、腰が軽く、フットワークがいい女房は郵便局に行っての贈り物の処理は苦にならないようだが、なぜか手紙となると二の足を踏む


エアメール   ペン


 人間、不思議なのか、当たり前なのか、女房も70近くになると、威張ったもので、時に、亭主に対して高飛車にモノを言う。ところが、こんな時ばかりは極めて低姿勢。「お父さん、頼みますよ・・・」。



 「バカっ、手紙くらい、お前が書け」


 「でも・・・」



 手紙っちゅうもんはな、自分の思ったことをそのまま書けばいいんだ。うまく書こう、なんて考えるから、億劫になるんだ。継ぎ足し、継ぎ足しでいいんだよ。うまい手紙なんて味もそっぺもないじゃないか。むしろ、まずい手紙の方が味があり、親しみや、温もりがあるんだよ。途中で間違えたら、二本棒で消して、また続ければいいじぁないか」



 「お父さんはそんなこと言うけれど、そんなに簡単にはいかないわよ」



 こんな時、私は絶対に手を出さないことにしている。いくら言ってもダメ、と悟った女房は自分で書き始めるのだが、そっと見ていると下書きをしているのだ。



 ここでまた「バカっ、下書きなんかするヤツがあるかよ。うまく書こうとしたらダメ、と言っただろう」と言ったら、女房はまた「でも・・・」。


手紙



 女房ばかりではない。私たちは手紙というものを本当に書かなくなった。もう正月から三ヶ月近くも経ってしまったが、年に一度の年賀状も決まりきった印刷文字。年賀状は出すからまだいい。暑中見舞いや寒中見舞いなんか忘れてしまった。あっという間に日本中、世界中を席巻したケイタイのメールというヤツがこれに取って代わった。


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 そして文章などとはおよそほど遠い、あの絵文字の氾濫だ。絵文字が使いこなせないアナログおじさんのひがみ、と、お若い方々から叱られるかもしれないが、この絵文字は確実に日本語をダメにし、日本人の文章力を弱めていくと思っている。絵文字ファンの皆さん、ごめんね。毎日ポストに入る郵便物はダイレクトメールと公共料金や税金の請求書くらいのものだ。いまに、本来の郵便屋さんはいらなくなる?




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お葬式の不思議

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 地元紙の山梨日日新聞は、紙面の一角に「おくやみ欄」を設けて、毎朝、県内の物故者と、その葬儀の日取りを伝えてくれる。地域別に整理してくれているから見易いし、第一、便利だ。当たり前だが、結婚式などのようにお祝い事の場合は、招待状が来るから分かる。見方を変えれば、その招待状が来なければ、行けないし、行かない。




 しかし、お葬式は別だ。招待状が来るわけでもないから、何らかのルートで連絡がない限り、お伺いすることが出来ない。だから、このお悔やみ欄は便利で、必ず目を通す。うっかりすると、友人、知人はともかく、そのご家族となると、お悔やみを仕損じかねない。ご不幸を後で知って、改めてお悔やみに参上するハメになるのだ。こんな時はいい訳タラタラである。


お焼香


 病人やお年寄りが最も身体にショックを受けるのは、暑さと寒さ。だから、ご不幸が起き易い時期は夏場であり、冬場である。新聞のお悔やみ欄も、それを顕著に物語っている。この冬はいつになく寒い。正直なことに、新聞のお悔やみ欄もやたらと大きい。




 この一年、お葬式にお伺いする回数がいつもより多かったような気がする。特に、夏から秋にかけてだ。昨年の夏が異常に暑かったためだろう。誰もがそうだろうが、私も親戚や友人、知人はもちろん、地域の人達のご不幸には、何をさて置いても焼香にお伺いする。年齢なのだろうか、結婚式など慶事は少なくなる半面、ご不幸の葬儀に行く回数がやたらと多くなった。

葬儀


 山梨の場合、葬儀の弔問は、特別の都合でもない限り、通夜と告別式の両方にお伺いするのが半ば慣例だ。弔問者は黒の礼服(略式)を着て列を作り、僧侶もお経の中身は違っても、同じようにお経を読む。だから弔問者の数は通夜、告別式共にほとんど変わらない。




 東京や埼玉、神奈川など他都県の葬儀にお伺いしたことがあるが、一般の弔問客のほとんどは通夜の一回。告別式は親族、つまり、お身内の方々中心のようにお見受けした。通夜に、焼香に来る一般の弔問客の服装を見ても、ネクタイだけ変えて、スーツは平服。会社の帰りに弔問するケースが多いという。いかにも都会の合理性が浮き彫りになっているように見えるのだ。




 いつ頃から葬儀当日に行うようになったのか分からないが、いわゆる、ぶっつけ七日と呼ばれる初七日法要の仕方も違う。東京などの方式が親族中心であるのに対して、山梨は多くの一般をも巻き込み、参列者は100人,200人は当たり前。多いケースでは斎場には入りきれないので、ホテルなどで300人を超す規模の法要も。


盛り籠


 各地に斎場が出来て、かつての自宅葬はほとんど姿を消した。農協、つまりJAも参入して斎場業界は、そのシェア拡大にヒートアップ気味だ。人間、誰しも迎える終末。遺族が受け持つ葬儀の仕方も所変われば、である。いつかはみんなが行くあの世へのお見送りもさまざまで当たり前か・・・。




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犬の散歩

犬


 庭の植え込みと葡萄園の向こうを東西に走る幅六尺弱ぐらいの古道を、近くのおばさんが大きな犬に引かれるようにして通る。ふと、机の脇を見たら、時計の針は午後五時ちょっと過ぎを指していた。この散歩、毎日の日課のようで、決まってこの時間に通る。今日は寒い。おばさんは、夏場に農家の主婦が日焼けを防ぐために、両方の頬まで包むように使う大きなつばつきの帽子を頭からすっぽり被って、寒さに完全武装といった格好だ。





 ひと頃より、陽が長くなった。あたりはまだ明るい。こうしてパソコンを叩いている私と目が合ったのか、おばさんはぺこっ、と頭を下げた。私も窓越しに頭を下げた。立ち上がって窓を開け、手招きをすると、おばさんはニコニコしながら石の門柱の間を通って、30mぐらいのじょう口をゆっくりとこちらに入って来た。


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 「毎日、よく歩きますねえ」



 「この犬、繋ぎっ放しじゃあ、可愛そうだからねえ・・・。でも、本当は自分のため。言ってみりゃあ、このワンちゃんに一緒に歩いてもらっているんですよ」



 おばさんは、足元に静かに座り込んだ身長7~80cmもありそうな大きな犬をいたわるように見ながら



 「私等、こうでもしないと、一日中、なんぼうも歩かんですもの。野良に行くのは軽のトラック、買い物も、もちろん車ですもんねえ・・・」



 「そうだよねえ。俺も、ここに帰ってきてからというもの、本当に歩かなくなっちまった。寒いから家に籠ってパソコンなんか叩いていりゃあ、なおさらだよねえ。暖かくなったら万歩計でも買って、歩くことにするか・・・」



 「そうですよ。人間歩かにゃあいけませんよ。この辺でも、みんなよく歩いていますよ。お若い人だってねえ・・・」



 「ところで、おじいちゃんの足腰はどう・・・」



 「それが、あんまりよくないんですよ。特に寒い時期だからねえ。病人と二人暮しだと、こうでもして、外でも歩かないと、気がめいっちゃいますよ。私ゃあ、このワンちゃんと話しながら歩くんですが、知らず知らずのうちにワンちゃんに愚痴を言ってるんです・・・。さあ、ぼつぼつ帰って、おじいちゃんの夕飯の支度、しなきゃあねえ」




 おばさんのご主人は、もうとっくに80を過ぎている。体の具合も悪いから、もちろん畑仕事なんか出来っこない。やっと、かなりの面積の葡萄園やサクランボ畑を耕作してくれる人を探して委ねたという。



 「おばさん、ほうれん草、持って行ってよ。俺が作ったもんだから、大したもんじゃあないけどねえ」



 「いつも、済みませんねえ」。年老いたおばさんは新聞紙に包んだ、ほうれん草を小脇に抱え、また犬に引かれて帰って行った。その小道を、このおばさんとすれ違うように中年の夫婦がやっぱり犬を連れて歩いてきた。陽はすぐ西の山にとっぷりと沈もうとしていた。


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結婚式の今昔

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 桜が咲き乱れる春爛漫には、まだしばらく時間がかかるが、その前座を担う梅は、あっちこっちで花開き、これと歩調を合わせるように人間達の営みも春の幕を開けた。若者達の結婚式もその一つ。春の結婚シーズンの到来である。


ブーケ


 カレンダーを見たら「友引」だった。知人の息子さんの結婚式にお招きを受けた。甲府の湯村温泉郷にある甲府富士屋ホテルの披露宴会場。黒のスーツに白のネクタイ姿の男性陣、和服を着飾ったご婦人方が沢山のテーブルを埋めていた。招待客の数はざっと見ても300人近くいるだろう。



 「大変お待たせしました。新郎新婦のご入場でございます」



 男性司会者の甲高いアナウンスと共に会場の照明が落ち、中央の扉が開いて新郎新婦が登場。ちょっと強めのBGM.と嵐のような拍手。スポットライトに浮かび上がった晴れやかな若い二人は、いっぱいの笑顔をこぼしながら会場正面の雛壇に着く。司会者は地元テレビ局の若手アナウンサーだった。


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 披露宴の始まりである。ここまでは、このブログをお読みいただく≪経験者の皆さん方のそれ≫も、大なり小なり同じだっただろう。まったく違うのは仲人さんの存在だ。かつては新郎新婦の両脇には二人の縁を取り持った仲人さんご夫妻がいて、「それでは、新郎新婦のご紹介も合わせまして、媒酌人としてのご挨拶を・・・」と続くのである。




 ところが、この仲人さんがいつの間にか雛壇から消えた。この10年ぐらいの間だろう。ひと頃は結婚式の脇役として重要な役割を果たした媒酌人・仲人さんは、その言葉すら死語になったと言っていい。その過渡期で、恐らく方便だろう、「人前結婚式」などという言葉を使ったのだが、これもほんの一時。若者達は、あっ、という間に新しい結婚式のスタイルを作った

結婚式3


 ただ変わらないのは招待客の多さと宴の中途で行なう余興だ。山梨だけかもしれないが、招待客の数は200人、250人は当たり前。多いケースだと300人、400人、時には500人前後の大型の披露宴もある。若い二人にそんな広い交際範囲があるわけではないから、こちらは親側の判断。ただ、このド派手な披露宴、不況とどのように連動していくのか・・。


結婚式2


 一方、親達とは関係なく、若い二人が仲間達と演出する余興というヤツだ。新郎新婦の勤務先の上司や親の知人でもあるお歴々など、いわゆる主賓のご挨拶や何人かのスピーチが終わると、それを待ち受けていたように始まるのが宴の余興である。もちろん、「愛は二人のため」?など結婚式にちなんだ歌をカラオケで歌うくらいはちっとも珍しくない。


結婚式1


 ドタバタと言ったら若い方々に叱られるかもしれないが、若者達はさまざまの芸を披露するのである。どこで調達するのか貸衣装をまとい、役者さながら化粧までして登場するのだ。みんなの呼吸を合わせなければならないので、事前の練習もしているのだろう。まるで子ども達の学芸会さながらである。今の若者達は表現力が豊かになっているのだろうか。それとも、だんだん強まる自己主張の現われ?とにかくみんなが楽しそうにやっているのだからいいのだろう。水をかけることもあるまい。結婚式の今昔である。




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蛍が一匹

蛍


 蛍?立春を過ぎて間もない、この寒空に蛍でもあるまい。その通りだ。世の中の虫たちが動き出すと言われる啓蟄にさえまだ間がある。ここで言うのは蛍族といわれる寂しい人間のことだ。タバコをお吸いにならない方々には縁がないばかりか、ご存知なくて当然。夜、自分の家であるのに家族から締め出されて、一人寂しくタバコを吸う亭主たちを言うのだそうだ。


タバコ


 この蛍は、夏の時期に限らず、春夏秋冬、一年中生息している。本当の蛍は人間がもたらす自然の破壊で、どんどん減っているが、恐らくこちらはどんどん増えているのだろう。定かなことは分からないのだが、わが国の喫煙人口は、恐らく減ってはいるものの、激減と言うほどでもあるまい。健康志向の年配者が禁煙に動いている一方で、次々と、はたちを迎える若者達や、ダイエット?やファッション?を考える女性がその数を埋めているからだ。




 喫煙人口はともかく、喫煙者はますます悪者扱いされ、隅へ、隅へと追いやられていることは間違いない。バスや電車は当たり前、飛行機も禁煙になって久しい。ホテルや旅館、会社、官庁のオフイスだって同じだ。喫煙者は肩身が狭くなる一方だ。


タバコ



 世の女房族が強くなるばかりの家庭にあっては、何をかいわんやである。小さな部屋でタバコをプカプカ吸われたら嫌に決まっている。部屋の壁や柱ばかりか、衣服まで臭いが染み付く。吸っている本人だってそのことが分かるのだから、吸わない人が不快に思うのは当たり前のことである。




 私も小さな蛍。小さな、と言ったのはそれほどのヘビースモーカーではないからだ。お酒を飲んだり、マージャンをする時以外はほとんど吸わないのだが、晩酌の後、なんとなく、一服が欲しくなるのである。そう言うと「私をバカにしているのね」と叱られるので、大きな声では言えないのだが、女房ならそれほど気に留めないのに娘に「お父さんダメ」と言われるのが怖い。




 仕方なく、そっと外に出て、その蛍なのだ。すると、あっちから一匹の蛍が。近くの中年のオヤジだった。

夜


 「あなたもですか?」



 「ええ、うちは女房がうるさいものですから・・・。佇んでいると寒いので、こうして歩きながら吸うんです。いい訳かもしれませんが、散歩も出来るし、一石二鳥ですよ」



 この中年オヤジは笑い飛ばすように、さらりと言うのだが、その後姿は、やっぱり寂しそうだった。その中年オヤジもそうだろうが、女房達が喫煙をただ嫌がっている訳ではないことはよく分かる。亭主の健康を気遣っているのだ。




 特に娘の場合、「お父さん、身体に悪いよ。だからタバコ、止めて・・・」と、いかにも心配そうに言う。これには本当に弱い。「娘の言う通り、やっぱり止めよう」と、思うのだが・・・。そんな蛍が今夜も寒空に一匹・・・。よわったものだ。




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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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