タイタニック青年の気持ち

タイタニック

 船首の甲板から身を乗り出して、大声で何かを叫んでみたくなる。映画「タイタニック」で見せたあの青年がやったように、年甲斐もなく自分もやってみたくなった。映画の舞台は大西洋だが、太平洋も限りなく広い。




 私たちが乗ったノルウエー船は全長がざっと300メートル。高さ14階建てのホテルが、そのどでかい太平洋を静かに動いているといった感じだ。船尾に立てば、白く、太いスクリューの尾を大海原に長~く引き、船首に立てば、地球が丸いことを嫌でも実感させる。180度の視界は、ただ青く、丸く見えるその果ては海の水がこぼれてしまわないかと思えるほど、別の青さの空との境界をぷっつりと切っている。


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 映画「タイタニック」は、港近くの酒場でのポーカーゲームに勝って、その時は幸運にも豪華客船の乗船チケットを掴んだ貧乏青年が主役だ。確かレオナルド・デカプリオが演ずるのだが、その貧乏青年は、とても庶民とはかけ離れた社会に住む若いセレブの貴婦人と恋に落ちるのである。

タイタニック3


 そんなシチュエーションと私たち夫婦を重ね合わせたら笑われるが、その舞台だけは全く同じだ。違うのは若く、カッコいい二人の恋、デカプリオから見れば、水も滴る妙齢な貴婦人との恋だ。貧乏青年というところはなんとなく共通している。なけなしの金をはたいて日本の、それも片田舎からやって来た、いわば年取った山猿。女房の顔を見れば60も半ばの≪貴婦人≫。女房ばかりではない。自らも、お腹の皮を突っ張らせたメタボのおじさんだ。大海原に眼をやりながらタイタニックのロマンと現実が交錯する。


タイタニック4


 「お父さん、船、沈まないでしょうね。私ゃあ、泳げないんだからねえ・・・」


タイタニック2


 日本を出かける前、女房は冗談とも本音ともつかないように言った。夢なんて類の表現ではない。確かに、87年前(1912年)のちょうど今頃、不沈の豪華客船と言われたタイタニック号は、氷河とのさもない接触が原因で北大西洋の海に沈んだ。映画の影響だろう。大西洋にはそんな冷たく、暗いイメージがあるのだが、太平洋は底なしに明るい。


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 船。クルージングにハマったきっかけは、前にもこのブログで書いたが、自衛隊の護衛艦。山梨市の自衛隊協力会の役員を仰せつかったのをご縁に、何度か横須賀や静岡で護衛艦に乗せて頂いたことからだ。海への憧れは言わずもがな。四方八方を山で囲まれた内陸地に住む「甲州の山猿」の生まれながらに背負った夢なのである。


自衛隊5


 理由はもう一つある。陸上の旅行と違って、移動する度にトランクを抱えてホテルを替える心配がないことだ。今度の旅もそうだが、15日間、宿泊する≪ホテル≫は同じ。「何時までにトランクを廊下に出して・・・」とか「出発は朝の何時・・・」といった煩わしさは一切ない。私のような無精者で、面倒がり屋にはうってつけだ。




 船は乗客が寝ている間に次の目的地に移動するから、旅の移動時間も短縮できる。ツアーは寄港地から存分に楽しめばいい。さまざまなコースが用意されているので、お好みで自由に選ぶシステムだ。オプションだから、都合や具合がよくなければ船にいればいい。





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ドローン

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 子供の頃を思い出した。両手の人差し指を胸元で真一文字に結び、「ドローン」と言うのである。子供達が自分を忍者に仕立て、姿を消す真似事をする遊びだ。「忍者 猿飛佐助」「忍者○○」と言った当時は人気の子供向け漫画雑誌の影響だった。戦後も間もない昭和20年代半ばのこと。むろん、漫画本も今のように豊富な時代ではなかった。




 「子供たち」と言っても今、私達の周りにいる子供さんとは、比べようもない、いわゆる鼻垂らしの、いたずら小僧達である。ケイタイもなければ、スマホや電子化されたゲーム機だってあるはずがない。全てと言っていい遊びが手作り。そこにはガキ大将がいて年下の子供達に遊びを教えた。

男の子

 教えた、と言っても、それは無意識で、また新たなガキ大将が“後輩”に伝え、遊びそのものも知らず知らずに進化させていったのである。「ドローン」と、呪文を唱えて姿を消す忍者遊びも、その一つであった。むろん、姿が消えるわけではない。“つもり”なのだ。




 あれから60数年。「ドローン」は、あどけない呪文ではなく、情報や運搬機器として空を飛んでいる。みんなが「へぇ~」と、科学の進歩に驚いている時、現代のドローンは、我が国、とりわけ政治の心臓部である総理官邸に放射能汚染土を抱いて飛来、政府を震撼させた。放射能汚染土ではなく、もしドローン(無人機)が抱いていたのがサリンなどの化学兵器だったとしたら…。政府・警察庁など関係省庁が仰天したのも無理もない。




 国の心臓部であったり、シンボリックな所へのドローン飛来事件は、我が国だけではない。米国のホワイトハウスやフランスのエッフェルト塔でも起きていて、我が国は、この事件を他人事のように見過ごしていたのだ。平和ボケは、国防とか自衛に全くという程、無頓着な私達国民に留まらず、政府にも浸透していたのである。国民總平和ボケかも。

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 総理官邸や国会議事堂、皇居や各国の大使館など要所、要所は、警備の警察官や車両で固められている。しかし、これは地上のこと。その上空は丸裸。考えてみれば、その教訓は14年も前の2001年に米国で示されていたはず。そう。世界の経済都市・ニューヨークのマンハッタンで起きた9・11同時多発テロである。こちらは、ドローンなどと言う“新兵器”ではなく、れっきとした旅客機。一般旅客機を乗っ取り、世界のシンボリックビルに突っ込んだのだ。全世界を震え上がらせた。事件が鮮烈だっただけに誰もの記憶に新しい。




 ドローンという言葉は、決して新しい言葉ではないのだという。私の高校時代の同級生で、中堅の幹部海上自衛官を定年で退いたT氏によれば、海上自衛隊では昭和30年代、既に「ドローン射撃」と言って、対空射撃の目標機として運用されていたのだそうだ。ただ、主翼の長さは5㍍、双発エンジンのプロペラ機だったという。




 それから半世紀。ドローンは姿も用途も変えて、レジャーや商ビジネスなど幅広い分野で実用化へ。大きな可能性をも秘めている。その購入や運航は、自衛官や航空の専門家ばかりでなく、私のようなド素人でも可能。鼻垂らし小僧だった私だって竹とんぼさながら扱えるのだ。さて国は空の防衛、どうしてくれるのだろう。これからのテロは盲点の空を突いて来るに違いない。折しも今、日米の首脳会談が。これを政治のパフォーマンスと捉える人はいないだろうが、平和ボケの日本。この機会に周りを見て自らの足元を…。





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女房と英会話

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 「お父さん、上手でなくてもいいから今時、少しくらい英語、しゃべれるようじゃなくては絶対ダメだよねえ。私は帰ったら英会話を勉強しますよ。絶対・・・」




 ハワイからマイアミに飛び、そこからカリブ海を通ってロス・アンゼルスに向かう船の中で、女房はしみじみ言った。旅行中、言葉が通じない不自由さを、身を持って体験したからにほかならない。





 「お前、去年、アラスカへ行った時も、その前のハワイの時もそう言ったじゃあないか」




 「そうだったかなあ。でも、今度は絶対、勉強するよ。お父さんも一緒にやらない? そうしないと、やっぱりダメだよ」


USA


 旅行から帰って、現実の生活に戻れば、そんな事を言ったのがウソのように忘れてしまうに決まっている。でも、この時の女房の気持ちはウソでもなければ、かりそめでもない。本当の気持ちだろう。これじゃあダメだと、思うのは女房だけでなく、女房の前では言わないが、俺だって同じだ。





 日本人が多いハワイだったらまだいい。あっちこっちで日本語は聞こえるし、日本人が多いから、相手側も日本語で話てくれる。タクシーに乗っても、買い物のお店に入っても、あまり心配にならない。仮に相手が日本語を話せなくても「日本語、話せませんか」で済む。人間の心理とは不思議なもので、ここでは「なあ~んだ、日本語、話せねえのか・・・」と、なぜか日本人としての主体性を持っているのである。


ハワイ


 ところがどうだ。文字通り海の中に放り出された今度のクルーズでは、右を向いても左を見ても一日中、聞こえてくるのは英語ばかりだ。ノルウエーの船だそうだが、この船には約2,500人の乗客と約1,000人のスタッフが乗り組んでいるのだという。たまたまだったかも知れないが、日本人は私たち夫婦を除いてほとんどゼロ。カルチャーショックなんてもんじゃあない。それを通り過ぎてコンプレックスだ。普段、いくらうるさくても日本語を話してくれる女房が、無性に可愛くなる。女房も女房で普段と打って変わってなんでも「お父さん、お父さん」と、従順だ。


クルーズ1


 豪華賞品に目がくらんで?女房と早速、ビンゴゲームに参加した。広いホールの、ふんわりした豪華なボックスシートで、大勢の人達が日本でもおなじみのあのビンゴゲームを楽しむのだ。ところが、数字くらいなら・・・と思いきや、これだって一筋縄ではいかない。最初は数字の発音が聞き取れないのである。20がトエニーくらいならまだいい。40をホーリー、41をホーリーワンとやるから女房なんかハナからカードの枡を潰せないのだ。




 このビンゴゲームくらいだと早い数字の発音に慣れればなんとか大丈夫。とこらが、シアターでのコントショーとなると、チンプンかんぷん。あの掛け合い万歳のようなものだから話のテンポが命。当然のことながら早口だ。そんなヤツを聞き取れるはずもない。一緒に行った90歳近いハワイの老夫婦は、大好きで、みんなと一緒に笑っている。しらけている私たち夫婦を除いてみんながどっと笑うのだ。その度に悲哀を感ずるのである。





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ダメ人間の開き直り

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 開き直る、という言葉がある。人間とはよくしたもので、どんな場面でも「どうにでもなれ」と開き直ってしまえば案外、怖いものはなくなるものだ。約一カ月間を予定した女房と一緒のアメリカ旅行で、それを覚えた。覚えたというより、知らない土地で、言葉が満足にしゃべれない人間にとって、それより方法がないのだ。





 中学3年、高校3年、そして大学の半分の2年、合計すれば8年も英語を勉強したはずなのに、と自らの情けなさに、恨み節を言ったところで、どうにもなるものではない。もっと一生懸命勉強しておけばよかったと、思ってみたところで後の祭りだ。




 開き直るとはこんなことか。多少は頭の中に残っている文法なんてクソ食らえ、そんなものが役立つはずがない。知っている限りの英単語を並べては話してみる。話すなんてスマートなもんじゃあない。言葉というか、単語の積み重ねに毛が生えたようなものだ。もちろん、悪戦苦闘は否めないが、よくしたもので、大筋の話はどうにか相手に伝わる。


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 ところが、ツアーのことなど専門用語になると、にっちもさっちも行かなくなるのである。でもこちらには困った時の切り札はある。伊達に90歳近い従兄弟の老夫婦をエスコートして来たわけではない。ホノルルに60年、70年近くも住むこの老夫婦はこの太平洋のど真ん中にあって唯一、強~い見方だ。開き直りの安全弁はちゃんとある




 でも、はるばるやって来た日本男児、多少の面子があるから、お年寄りのお出ましを、出来ることなら頂かないようにしたいと思うのは人情というもの。しかし、素直じゃあない、このヘンなツッパリがまた悪戦苦闘を招くのである。




 「ジャパニーズ?」



 「いえー」



 「東京からですか・・・?」


 「あなた、日本語出来るの?」



 「ええ、少しだけ・・・。私、この船に乗る前、東京のホテルで勉強しました」





 レストランでのディナーの折、出会った自らがタイ人というウエーターは、私たち夫婦を日本人とみて、たどたどしい日本語で語りかけて来た。





 地獄で仏。ちょっとオーバーだが、そんな気持ちになった。こんな高級レストランではなく、酒場だったら「おい、一杯やろうよ」と、言いたいくらい嬉しかった。なにしろ、他人と日本語で話すことは初めてだったからだ。30半ばぐらいのこの男が古い友人のように思えた。マイアミを出て、ロス・アンゼルスに着くまで、顔を見るたびに声を掛けた。



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 私が住む田舎の小さな小学校で、この四月から文部科学省の指定を受けて英語科が新設された。一年から六年生までの児童全員が定められたカリキュラムで英語を勉強するという。いいことだ。どちらかと言えば、受験に傾いた英語教育を根本から改めて、頭ではなく、身体で覚える英会話教育を実践して欲しいものだとつくづく思った。そうしないと国際化、グロウバル化が進む社会の中で、日本人は世界に通用しないことを実感した。





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豪華客船のカジノ

ベネチアン

 全体が煌びやかなネオンで埋まり、夜を知らない、いわゆる不夜城の街と言ったらラスベカス。この街のもうひとつの顔はカジノ、つまりギャンブルだ。5、6年前ロス・アンゼェルスを経て、このラスベカスに行った事がある。宿泊したのはホテルベネチアンだった。宿泊というよりはカジノにどっぷり浸かったと言う方がいいかもしれない。


ベネチアン2


 ベネチアンはホテルというより、それ自体が一つの大きな街といった感じで、そのスケールに圧倒された。ホテルの中にショッピングロードやくつろぎ、散策の広場があり、ホテルやカジノがあるといった感じである。ビルのなかの街が昼間ばかりでなく、夕暮れや朝まで演出する。また一つカジノを例にとっても、そのスペースはとんでもなく広い。ゲームの途中トイレに立ったら、その帰り、自分のテーブルを見失ったくらいだ。


ベネチアン3


 ラスベカスはカジノのメッカ。しかし、その規模ではマカオがラスベカスをしのいだとも言う。マカオのカジノには30年ぐらい前、会社の同僚と行った事があるが、もう街全体ががらりと変わっているのだろう。私は自分が根っからの勝負事好きではないかと思うことがある。ちょっと誘われればソウルぐらいならいつでも飛んでいってしまう。今年の秋に、中学時代の同級生と、またソウルのカジノに行くことになっている。




 昨年のハワイ、アラスカの旅でもラスベカスに足を伸ばす予定だった。それを取りやめたのはアラスカクルーズでカジノを楽しめたし、今度のカリブ太平洋クルージングでも存分に楽しめるからである。大型客船は6階に大きなスペースを割いてカジノを設けていた。バカラブラックジャックポーカーレット・イット・ライドなどのカードゲーム、それにクラップスビンゴルーレットスロットルマシーンなど何でも楽しめる。


カジノ2  


 カジノの雰囲気とは不思議で、そのすべてをやってみたくなる。だが、残念なことにルール、つまり遊び方を熟知していないので、いつも比較的気軽に出来るブラックジャックのテーブルに着く。カードゲームのテーブルはみんなランク別、つまり10ドル以上、50ドル以上、100ドル以上といった具合に分けてある。10ドル~500ドルのテーブルが私の遊び場である。ランクでは一番低いテーブルだ。




 テーブルはいずれも6,7人掛け。100ドル紙幣5枚をテーブルに出すとデーラーはまず紙幣をテーブルの上に並べて客の見ている前できちっと確認した後、それに見合ったチップを客の手元に出してくれる。カードの配り方を含めて、その手さばきは鮮やかだ。賭けるチップの量はリミットの範囲内であれば自由。客はカードの流れを見ながらチップの量、つまり賭ける金額を加減するのである。ブラックジャックは日本のオイチョカブとやり方は同じ。ただカードと花札の違い、それに上限の勝負数字が21と9の違いである。オイチョカブを知っていれば遊べるゲームだ。


カジノ


 オイチョカブも同じだが、デーラー(親)が強いに決まっている。お客の方は勝負勘とツキ以外のなにものでもない。結局は負けてしまうのだが、≪好き≫≪欲≫が後を追わせる。いつも女房が嫌がるのも無理はない。でもギャンブルとはそんなものだ。




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クルージングの魅力

クルージング


 凝っているといったら、ちょっと大げさだが、今、クルージングにはまっている。3年前のハワイ諸島めぐり、昨年のアラスカクルージングに次いで、今度はマイアミからロス・アンゼルスまでの旅を女房と一緒に楽しむことにしたのだ。前2回は8日間だったが、今回は15日間である。クルージングは豪華客船の旅ということもさることながら、毎たび、ホテルを変えずに旅行を楽しむことが出来るのがいい。




 陸の旅だとバスや汽車で移動し,その行く先々でホテルを変え,あの重いトランクを持ち運ばなければならない。それに比べ船の旅だと、そのわずらわしさがない。しかもお客が眠っている夜の時間に目的地まで移動してくれる。決まった船室が旅の期間中のホテルであり、行動拠点である。面倒がり屋にはこんな好都合はない。


部屋


 船はざっと20万トン。収容人員は乗客数2,500人。それに1,000人の乗務員が乗り組んでいるのだそうだ。14階建ての船には3箇所のエレベーターホールがあって、それぞれ6基のエレベーターが稼動している。船の全長は300メートル近い。いってみれば、どでかいホテルが海に浮かび、太平洋を動いていると考えればいい。その大きさゆえか、少しもゆれないから快適だ。船酔いなどの心配は全くない。
船


 船の中には大小13のレストランをはじめ,1,500から1,600人収容できるシアターやボーリング場、大人も子供も一緒に楽しめるゲームコーナー、インターネットルームや静かに本を楽しめる読書室、子供専用の遊戯室や大人の遊技場・カジノもある。普通のホテルではロビーに当たる部分は7階にあって、8階まで吹き抜けになっているこの空間には、大小の豪華なソファーがアトランダムに並び、お客同士の待ち合わせや団欒の場となる。

船の中

 また様々な問い合わせに応ずる案内カウンターやドリンクコーナー、それに大型のスクリーンを見たり、歌や楽器のライブを楽しめるようゆったりした空間を演出している。夜のひと時ともなると、臨時の写真スタジオがお目見えして、気軽に記念写真を撮ってくれる。若者たちのグループや老若を問わず、カップルたちがお気に入りのコスチュームに着替えてやってくる。どの顔もみんな楽しそうだ。
ボーリング


 このロビーがある7階は主にシアターや読書室などの娯楽施設、それに大衆レストランなどがある。長い通路の両側にはバックや香水、時計、めがね、ネクタイ、男性、女性用の衣類など各種のブランド店やお土産品店が並んでいる。その通路の一角では、臨時のスタジオばかりではなく、レストランやロビーなどでプロのカメラマンが撮ったお客さんの写真が翌日には展示される。沢山のアングルの中からお気に入りの写真だけをチョイス出来る仕組みだ。


クルーズ3



 屋上には大小のプールがあって、家族連れや若者たちが水しぶきを上げている。ちょっと気温が下がる日には温水に代わる。プールサイドには沢山のビーチチェアが置かれ、人々はサングラスをして日光浴を楽しんだり、透けるような青空の下で読書を楽しんでいた。ドリンクコーナーもある。


ジム




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とりつかれた海の魅力

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 ハワイから空路、フロリダ州のマイアミに飛んだ。太平洋に浮かぶハワイ諸島の中心、オハフのホノルル。マイアミは成田からホノルルより、ずっと遠い。マイアミからロス・アンゼルスまでのクルーズが目的だから、文句も言えないが、その飛行時間の長さにはうんざりする。




 ファーストクラスとまでもいかないまでも、せめてビジネスクラスのチケットを取ればいいのだが、そこが・・・。財布と相談すれば我慢、我慢。少しぐらい窮屈だって・・・。貧乏人は我慢することを知っている。そこで考えることはただ一つ。飲ん兵衛の飲ん兵衛たる所以。飲みながらシートにセットされたゲームでも楽しむに限る。





 アメリカの航空会社だから、いくら自分が日本酒党といえども、そんな訳にもいかないことくらい分かっているので、ビールで我慢だ。ところがだ。日本航空や全日空など日本の航空会社なら「銘柄は? キリンですか? それともアサヒ? サントリー?・・・」とやってくれる。当然のことながら、そんなビールを用意して置いてくれるはずがない。


ビール


 仕方なく、比較的、馴染み深いバドワイザーを注文するのだが、これがまた・・・。やっぱり、ピーンとこない。それどころか、なんとなく損をしたような気分になるのは、ビールに限らず、全てが有料だ。「JALやANAだったら飲み放題なのに・・・」と、また貧乏人根性が頭をもたげるのである。「いっそのこと、飲んじまえ・・・」と、開き直って、今度はスコッチ。


スコッチ  


 その辺の理屈はよく分からないが、気圧の関係もあるのだろう。飲めば飲むほどに気持ちはご機嫌に。そこで、いつものように飛び出すのが隣にいる女房のきついブレーキだ。「お父さん、いい加減にしたら・・・」。いつものことだが、そんなことでへこたれる俺じゃあない。しかも、シートは満杯。隣の人達に気遣ってか、女房のブレーキのトーンも、心なしか低い。それをよいことに、また・・・。




 しかし、人間、それぞれに上戸というヤツがあって、人に止められなくっても、やめる時はやめるのだ。女というヤツはバカだなあ~などと思っているうちに、いつもの睡魔が・・・。どのくらい眠ったのか分からないのだが、目が覚めて窓の外を眺めたら、まだアメリカ大陸の上を飛んでいた。




 アメリカはでっかい。数年前、カジノが目的で、ロス・アンゼルスからラスベカスに飛んだことがある。地図で見れば目と鼻の先だが、下界に広がる景色は行けども行けども茶色い荒野。その、全く所々に住宅の屋根や牧場がポツン、ポツンとが見える。




 60数年前、この国と戦争をしたのかと思うと・・・。ラスベカスひとつとってもそうだ。一本の木も草も、さらには一滴の水もない砂漠のど真ん中に、アメリカ人は、あの大きな町を造ってしまったのだ。町というより都市といった方がいい。人間が住む町を造る基本は水。その水は100㌔も先から引いたというのだ。アメリカ人の開拓魂はすごい。そんな事を考えているうちにマイアミへ。世界のリゾート地だ。


マイアミ上空



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ハマルということ

 人間、その年齢や環境で、ハマル事のひとつやふたつあるものだ。プラモデルであったり、切手など趣味の収集であったりする。競馬やマージャン、パチンコ、カジノ遊びなどギャンブルだってある。釣りやカメラだってあるだろう。人、それぞれさまざまだ。


テニス   色鉛筆

 私の場合、なんと言ってもパソコン。今度の外国旅行を兼ねたクルージングもそうだ。こちらはお金と時間がかかるから、そう度々という訳にはいかない。ところが、今度ばかりはパソコンとクルージングがブッキングしてしまった。


PC     クルージング


 えっ、何の事?と、お思いだろうが、実はこうだ。15日間のカリブー太平洋クルーズをはさんで一ヵ月近いアメリカ旅行を計画したものの、ブログの更新も休みたくない。何しろ、パソコンを覚えてから、ぼつぼつ2年。そして昨年の7月からハマり出したブログは、ずっと定期的に更新してきた。


富士の山ちゃん


 ハマルという事は恐ろしいもので、自分でも信じられないほどのエネルギーを発揮する。いつもならだらだら飲んで、女房から嫌がられた晩酌も適当に切り上げるし、マージャンや仲間との無尽会で飲んで午前様で帰っても、必ず、一度はパソコンの前に座る。「お父さんのおもちゃ、いつまで続くかな?」。女房から「いつかは飽きる」と見られ、半ば笑われたって何のそのだ。そんなブログだから、一ヵ月近くも更新を休むわけにもいかない。




 「そんなの簡単じゃない。パソコンを持って行って、そこで更新すればいいじゃない」



 その通りだ。いくらアナログ人間でも、そのくらいの事は考えた。インターネットだから地球上のどこからだって、その施設があれば接続できるに決まっている。問題は接続の仕方と、派生する経費である。ITには詳しい知人に聞いたり、調べてもらったりした。ハワイにお住まいのブログ仲間「マダムさん」にもお知恵をお借りした。

ハワイ


 結果はそんなに難しいことではなかった。今度行くところには日本語バージョンのパソコンがなさそうだから、端末をこちらから持って行けばいい。その場合も、船の客室やインターネットルームにも接続口があって、そのパーツもアダプターなどを使用しなくても、そのまま使えるらしい。ウイルス対策はちょっと微妙だが、まず問題はなさそうだ。




 ところが、私にとって最大の問題は、それに伴う経費。100分で55ドル、200分だと100ドル。私のような新米が、そんなに流暢にパソコンを叩き、ブログの更新が出来るわけがないから、時間は100分ばかりでは済まないに決まっている。更新を毎日しなくても、その間、お訪ねいただくエディタの友達への返事などを書かないといけないから、インターネットの使用料は平均しても一日5,000円では済まない勘定だ。




 そこが貧乏人の貧乏人たる所以。5,000円 × 約1ヵ月。とても出来る相談なんかじゃあない。昨年、アラスカクルーズに行った時、その出港、帰港の拠点となったシアトルでは、どこのホテルも只。さすがはマイクロソフト社のビル・ゲイツのおひざ元だけはある。世界一の大金持ちが神様に見えた。とにかく日本語バージョンでないと・・。持って行くことに超したことがないのだろう。






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ピンクのじゅうたん

桃  


 「山梨の人間はバカだねえ・・・」


 「先生、どうして山梨の人はバカなんですか」


 「バカなんだよ」


 「だからどうして・・・」


 「だって、そうだろう。山梨の桃の花はすごい。わたしゃあ、電車で甲府に来たんだが、勝沼駅から塩山駅にかけて見渡す甲府盆地の桃の花は素晴らしい。あれを山梨県のヤツらは、世に出すことも、ましてや活用することすらしねえ・・・」


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一宮町観光協会



 その人はツボのような丸い目をむき出すようにしながら、まるで掃き捨てるように言った。その語り口調はドスが利いていて、声はかすれている。ご存知の方は、そのイメージからお分かりになるかもしれない。そう、今は故人となられた岡本太郎画伯だ。大阪万博の、あのシンボルモニュメント「太陽の塔」の作者としてもおなじみ。その作風からピカソを連想する方も多いだろう。

岡本太郎



 もう30年以上も前のことだ。甲府で岡本画伯にお目にかかってインタビューさせて頂いたことがある。お話をお伺いする前、その生い立ちをちょっと調べさせて頂いた。その記憶によると、芸術一家に生まれた岡本さんは、子供の頃は名うてのやんちゃ坊主で、小学校を度々、転校させられた。ところが絵を描かせれば何を描いても上手で、18歳の時、東京美術学校(現東京藝術大学)に入り、その後、一家でフランスに渡るのである。




 岡本青年は、家族が日本に帰った後もパリに残って絵を勉強、そこで出会ったピカソの絵に心酔して、抽象画に傾倒していくのである。原色を使ったあの力強い抽象画を見て誰もがピカソを連想するわけはそこにあるのだ。大阪万博は当時、圧倒的な人気を集め、その入場者総数は6,400万人を数えた。日本人の二人に一人が万博を見た勘定だ。そのシンボルとなった「太陽の塔」の制作費は30億円とも言われた。




 なんとなくピカソを連想しながら向き合っていた私は、この岡本画伯のお話に、頭をガツ~ンと、ぶん殴られたような気がしたのを今でも鮮明に覚えている。なぜって? 今でこそ桃の花をいけばな用に市場化したり、桃の花見の場を設営して観光客を誘致するようになったが、当時、桃作り農家も農協など全ての周囲は、いわば「いい桃の実を作ってなんぼなんぼ」という考えに過ぎなかったのだ。岡本さんが言うように、あの見事な桃の花をビジネスに使うことなど考えなかったのである。


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 いくら素晴らしい花が咲こうと、その中にいれば、当たり前のことで、その素晴らしさに気づかない。岡本さんが言う桃の花に限らず、そこにいる人たちが空気のように誰も気づかず、見過ごしていることって案外多いのかもしれない。色から来る景色を見ての感性、それが芸術ばかりはではなく、ビジネスチャンスにも繋がることを思い知らされた。岡本画伯の感性はひとつキャンパスの上だけではなかった。事実、あの30数年前の乱暴とも思える発言が、やがて農家も周囲も山梨の桃の花に対する視点を変えるきっかけになったことは確かだ。




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ビルの林の花粉症

都会



 「わたしゃあねえ、先日、病院関係の会議に出席するため、久しぶりに東京に行ったんです。そこで改めてびっくりしたのは、マスクを掛けて街ゆく人がなんと多いことか。インフルエンザではなく、花粉症なんですねえ。その数は半端じゃあないんです」




 ロータリークラブの例会での会食中、隣り合わせた仲間の話である。この人は山梨市にある、いわば地域中核病院の理事長で、自らもドクターだ。




 東京は巨大なビルの林。もちろん、公園や街路樹などがあるから、スギ花粉など花粉症を惹き起こす花粉の飛散源がないわけではない。しかし、山梨のように四方を山で囲まれ、その中に点在する森や林。東京と田舎の飛散源の量は比べものにならないはずだ。花粉症を持ち出した、このドクターの話を補足するように、別の仲間がこんな話をしてくれた。


スギ2


 「花粉の飛散は、単なる発生量だけではないと思うんですよ。確かに東京と山梨の発生量を比較すれば、山梨の方が圧倒的に多いはずだ。問題は蓄積度の問題じゃあないんでしょうかねえ」



 「蓄積度?」



 「そう。山梨などの田舎の場合、土などの自然が飛散した花粉を吸収してくれる。しかし、東京のような都市、つまり、ビルの林の中では花粉を消化しないんです」


ビル



 この話、私のように、ど素人でも、分かるような気がする。確かに巨大なビルの林の東京はその一つ一つがコンクリートの塊。網の目のように張り巡らされた道路という道路もどこまでもアスファルトの舗装である。自然の土がないのだから、飛んできた花粉だって行き場がなく、たまる一方だろう。それが沢山の車や人によってかき回されて、また舞い上がる。その繰り返しだ。




 私たちの地域の山や林では、もう少し経つと青い空を黄色くするほど風に煽られてスギ花粉が飛散する。こんな話を聞くと、花粉症でお悩みの方だと即倒するかもしれないが、これホント。いわば、季節の風物詩みたいなもので、私なんか、これと言ってびっくりもしない。それ自体が地域の人たちに免疫を施しているのかもしれない。


スギ



 私たちは子供の頃、この杉林の中で遊んだ。小さなスギの実を使ってスギ鉄砲あそびをするのである。花粉症などという言葉もなかった。それとも知らずに漆の木を使ってチャンバラごっこもした。でもかぶれることもなかった。免疫力も日常の生活や、遊びの中で備わっていたのだろう。今でも漆の枝でチャンバラごっこが出来るかって?まったく自信がない。恐らく、体中、かぶれで腫れ上がるだろう。




 スギ花粉をひとつとっても、その飛散量は、昔よりずっと多くなったという。人間が山を荒れ放題にしたツケだ。かつては、スギ山はヒノキ山と共に宝の山だった。ところが安い外材が入って来るようになって、その宝の山も持ち腐れ。下草刈りや間伐などをしないから、成長を妨げる。子孫を残そうとする本能からスギは余計に実を付けようとするのだそうだ。山を大事にしなくなった日本人が、こんな所でも、ツケを背負わされている?


木



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摩訶不思議な桜

桜2


 どちらにお住まいかは存じ上げないが、テンテンさんからこんなコメントを頂いた。
「たかが花見、されど花見ですね。この風習が続く限り、日本の自然は美しく残されていくのだと信じています」



 このコメントに私もこうお返事させていただいた。


 「そう言われれば、その通りですね。日本人に花見の習慣がある限り、花を愛で、自然を大切にする心が育まれていくのでしょうね。私のような花をおかずにする飲ん兵衛も一役買っている?のですね」




 飲ん兵衛の一役は、もちろん冗談。とにかく、という花は不思議な魔力を持っていて、人々に春を実感させ、人の心をウキウキさせるのだ。100年に一度の不況だの、なんだのといっても、日本全国、至る所の桜の名所は、今年も花見客で賑わった。当然のことのように、私のような酔客も。

桜



 毎年、2月から3月になると新聞、テレビ、ラジオは競うように日本列島の桜前線を予想し、各地の地方気象台も、それぞれが持つ標準木と首っ丈で、役にかかって開花宣言を発表する。そこには、平年比、前年比で何日早いの、遅いのまで解説するのだ。人々はそれによって気候や気温の移り変わりを実感したり、農村地帯や果樹地帯では、その作業の目安にさえするのである。




 梅の花からバトンタッチする水仙や、後に花開く桃の花、さらには西洋など外来種の草花もあわせ、一斉に花を開かせる。いわゆる春爛漫を演出する自然界にあってはその象徴的な存在なのだ。山梨、特に私が住む甲府盆地の東部は、日本一の桃の産地。間もなくすると桃の花が満開となって、一帯がピンクのじゅうたんに変わる。しかし、このスケールの大きいピンクのじゅうたんも、やっぱり花としては桜には位負けだ。




 日本人は、なんと言っても桜が大好き。だから映画や舞台にも桜を登場させる。今は全体的に少なくなったが、時代劇、つまりチャンバラ映画には桜がつき物だった。あの遠山の金さんにいたっては、背中から二の腕に掛けての刺青は桜吹雪。北町奉行所のお白州で片方の裃をはずして「手前ら、とぼけるのもいい加減にしろい・・」と二の腕に掛けての桜吹雪を見せながら啖呵を切ると観客は拍手喝さい。いわば最後の見せ場となるのだ。



桜4


 子供たちの学生服のボタンや小学校の校章も、かつては桜をあしらったものが多かった。外国人から見た日本の象徴は、今でもフジヤマ芸者と並んで、やっぱり桜。日本人に桜を重ね合わせるのである。昨年、アメリカのシアトルに行ったとき、ワシントン大学を訪ねたら三木首相時代に日本が贈ったという桜並木が、その構内で幹を太くし、立派に息づいていた。ワシントン州での日米友好の証なのだ。




 桜は全ての花に比類がないほど、散り際がいい。日本人のDNAにある「侍」にも似た共通点がどこかで人の心をくすぐるのだろう。しかも、散った後も「葉桜」という言葉があって、まだ桜が生きているのである。花は散れば終わりだが、なぜか桜だけは違うのだ。


桜3




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散る桜、残る桜も…

写真_convert_20120416143633  


 桜、桜と言っているうちに、前線は細長い日本列島をどんどん北上、やがてはどこかに行ってしまうのだろう。手前味噌かもしれないが、私たちは山梨を「日本列島のヘソ」と言っている。その山梨の桜は今が盛りの満開。日曜日、女房と娘、それにご近所のご家族をも巻き込んで、花見の宴を張った。




 舞台は我が家の前にある地域のふれあい広場。かつては我が家の梅畑だった所で、普段はお年寄り達のゲートボールや子どもたちのブランコ遊びなどに使われている。7畝ぐらいの面積で、それほど広くはないが、そうかといって狭くもない。手頃な広さの広場だ。その周りに20本近いソメイヨシノ枝垂桜を植えた。もう何年ぐらい経つのだろう。特に数本のソメイヨシノは見事な枝ぶりになって、今年も溢れんばかりの花を咲かせた。


花見2
 

 花見の宴を張るにはうってつけ。桜の木の下にブルーの大きなシートを敷き、テーブルの上にはサトイモや大根の煮っ転がし、ほうれん草や菜の花のおしたし、ネギの酢味噌和え・・・。みんな我が家の畑で採れたもので、女房や娘の手作りの逸品?である。




 もちろんお酒やビールも。私なんか、むしろ、こっちの方が主眼である。風情のないヤツ、と風流人から目をしかめられるかもしれないが、本音で言えば、花などどっちでもいい。酒と肴があればいいのである。夜の居酒屋やスナックバーで飲む酒とは一味もふた味も違う。時折、盃に風に舞い散る桜の花びらが・・・。


花見3  


 「散る桜 残る桜も 散る桜」


 私のような無粋者でも、調子に乗って、こんな句をなぞってみたくもなる。良寛さんの作と伝えられるこの句、なんとも味わいがある。「散る」と「残る」と「桜」の三つを組み合わせた、一見、単純すぎるほど単純な句だが、考えれば、考えるほど、奥深い。




 「もののあわれ」は古典の昔から、相場は秋。十五夜の月を眺めながら、ものの哀れにしたり、やがて来る晩秋の風、舞い散る枯葉に人生のはかなさを重ね合わせるのだ。いかにも日本人らしい感傷だが、そのシチュエーションはぴったりだ。


月見


 秋は色に例えても白。白髪が意味するように人生も黄昏れ時。これに対して春は青。はつらつとした時期、つまり、青春なのだ。しかし、良寛さんは、春爛漫の桜に人生のはかなさを重ね合わせた。これ、私の読み違いかな?とにかく、意味深な句であることは間違いない。




 そんなことはどっちでもいい。無粋者は花より団子。飲むほどに、酔うほどにオンチな歌のひとつも飛び出す。みんな満面に笑みを浮かべ、大声で笑っている。近くを通りかかる人達もニコニコ笑っている。「俺も仲間に入れてよ」。一人、二人と花見の宴は、人数を増やした。その後はお決まりのコース。「お父さん、あんまり飲みすぎないでよ」。それ来た。女房のいつもの、きついブレーキだ。




 東京は上野のお山の桜、隅田川沿岸の桜・・・。今頃はやっぱり私のような飲ん兵衛が・・・。しかし、不景気なご時世、盛り上がり方はちょっと違うかも。でも、こんな時だからこそ、飲んで、歌あって、明るくしなけりゃあ・・・。これ、飲ん兵衛も言い訳?




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桜の下の入学式

入学式5

 「お庭の桜が皆さんの入学をお祝いしているように、いっぱい咲いていますね。私は、今日から皆さんの担任となる○○といいます。仲良くしてくださいね」




 25歳前後の女教師は、緊張した面持ちで一列に腰掛けている新入学児童に優しく語りかけた。自らの名前をひらがなで大きな紙に書いた文字を一字、一字分かり易く説明した。


入学式


 新入学児童は9人。その後ろには2年生から6年生までの在校生や新入学児童のお父さんやお母さんが。演壇前の両サイドには校長先生ら教職員が、その向かい側には山梨市教育委員会の代表や私たち学区内の区長、市議会議員、PYA会長、公民館長、民生児童委員会会長、老人クラブ会長ら来賓がずらりと並ぶ。

入学式4


 在校生は、晴れ着姿の新一年生と、うって変わって、色とりどりで、まばらな、いわば、普段着。上級生になるほど身体も大きくなって、いかにも、わんぱくそうな子らも。校長先生は黒の式服に白いネクタイを結び、ほかの教職員も明らかに普段と違うように服装を正している。新入生のお父さんやお母さんも同じだ。


入学式6


 地域の小学校の入学式風景である。私たち地元民にとっては、みんなの母校でもある。もちろん、校舎も木造のオンボロ校舎から鉄筋、耐震構造のモダンな校舎に生まれ変わった。周囲の風景も変わった。水田や養蚕のための桑畑はすっかり影を潜め、葡萄園や桃畑に。そのまにまに点在したかやぶき屋根のいわゆる農村型住宅も小奇麗で、カラフルな近代住宅に変化した。




 私がこの小学校の校門をくぐったのは、ちょうど60年前。あの時も校門や校庭の周りでは、今と同じように桜が満開だった。おふくろに手を引かれて校門をくぐったことをかすかに覚えている。恐らく、今日の新入学児童と同じ心境だったのだろう。手を引いてくれたおふくろは今、93歳。足腰が不自由になった上、認知症が進み、病院生活を余儀なくした。逆算すると、今日と同じように入学式に臨んだのは33歳の春だったことになる。今の姿からは想像もつかない女盛りだったのである。満開の桜も二世に代わった。

入学式3


 話を元に戻そう。入学式の式場となったのは体育館。校長先生の案内で私たち来賓が着席、最上級生に手を引かれて、新一年生が入場すると式の開始。女性の教頭先生が新入生の名前を一人ずつ読み上げると、ちょっぴりはにかみながらも、児童たちは精いっぱいのお返事。演壇に立った校長先生は「みなさん全員の入学を許可します」とした上で「みんなが、まず、第一に元気よく、そして仲良く・・・」と緊張気味の児童たちに優しく語り掛けるように挨拶した。来賓のおじさんたちも同じように子供たちを励ました。 交通安全の黄色い帽子も贈った。


入学式2


 いわば、今も昔も、恐らく変わらない入学式の風景だが、誰もが気になるのは新入学児童の数。田舎の小さな小学校といっても私たちの時代には少なくとも40人前後はいた新入生がどんどん減って、ついに一ケタ台に。ここにも統廃合の嵐が吹きすさぶ日が来るのは時間の問題だ。おめでたの一方で、区長会はそれへの対応を考えなければならない頭の痛い課題を抱えている。





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墓所の風景

墓


 その人が建立した墓所甲府盆地を一望でき、その向こうに富士山の雄姿が望める湯村山の中腹にあった。春といっても頬をなぜる風はまだ冷たい。なにしろ小高い山の中腹だし、そこから見渡す見事な眺望のせいもあってか、その風は一層爽やかだ。墓所建立の竣工法要に参列した人達が誰ともなく「いい所ですねえ」と、つぶやいた。




 もう60年以上も前、富士山麓に程近い御坂山塊の麓の片田舎から、山梨県の県都・甲府に出てきて運輸業を興した。この人の手腕、力量がモノをいって、会社は着実に業績を伸ばす一方、人柄、人望が手伝って、次第に山梨県経済界の重鎮としての座を不動なものにした。80歳になったのを機に県内の中小企業を束ねる経済団体の会長職を退き、後進に道を譲った。



風紀2


 自らの人生に、ひとつの区切りをつけたのだろう。墓所建立の法要を済ましての、おときの席で、大勢の来賓を前に「やっと念願が叶ってホッとした」と、自らの80年の来し方を振り返った。その顔は経済界の重鎮でも、企業を率いる会長の顔でもなかった。一人の年老いた柔らかな人間の顔に戻っていた。




 「建設中も大勢の人が見に来てくれたんですよ」と、控えめながらもこの人が言うように、墓所は掛け値なしの立派なもの。広く囲んだ玉垣の中には中央に大きないしぶみと、その両側に石塔が。左側の石塔にはこの人の戒名が、やはり健在の奥様のものと並んで刻まれている。もちろん、お二人の戒名の一字は紅。「慶徳院和山宗睦大居士」。戒名の一字「大」がこの人を誰にも分かるように物語っている。


墓2_convert_20130408100312


 中央のいしぶみには大きな文字で「孝順」の二文字が刻まれている。墓所建立法要のあとの、おときの席で、この「孝順」を揮毫した臨済宗向岳寺派の管長と、墓所建立の施主であるこの人は、それぞれの立場で、この言葉の奥深い意味を説いた。いつの世にあっても普遍な親や先祖への敬い、感謝、畏敬の念・・・。みんなが頷いた。


孝順


 管長は、挨拶の中で、こんなことも話した。

 「最近の風潮として≪個≫を重んずるあまりに人と人との絆がどんどん弱くなっている。例えば、一番小さな社会である家庭を見ても≪個≫を優先し、親子や家族の絆が希薄になって、そこから家庭内暴力など、さまざまな問題を露呈している」




 そんな僧侶のお話を拝聴しながら「確かに」と頷いた人は多かっただろう。≪個≫を尊重することは決して悪くない。しかし、それが一人歩きすると「自己虫」がどんどん増える。身近な日常でも度々出っくわす「自己虫」。これからの日本は、いったい・・・。




 ところで戒名。この人のそれに、さりげなくというか、重々しくついている「大」の一文字には大きな意味がある。この人の人となりを見事に表しているのだ。社会への貢献もさることながら、広い意味での先祖を敬い、お寺、宗門への貢献度がその基調になっているのだ。権力の象徴でも、ましてやお金でもない。その人がどう生きたかにほかならない。霊園の大小を問わず「大」とか「殿」の文字がつく戒名は少ない。





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パソコンに向かっている時間

 机に向かっている時間、正確にはパソコンに向かっている時間と言うべきなのだろうが、そんな時間が長くなった。


パソコン_convert_20110106220352


 「お父さん、子どもの頃から、これほど熱心に机に向かえば、さぞかし、今頃は博士か大臣か、でしょうね」


 近くでわたしの晩酌の後片付けをしていた女房が、皮肉混じりにこんな軽口を叩いた。



 「お前、俺の子どもの頃なんてよく分かるじゃあないか」



 「分かるわよ。もう40年以上も夫婦、やっているんですもの。お父さんがそんなに勉強しなかったことぐらいお見通しよ」


マウス


 確かにそうだ。パソコンを覚えて5年半。特に、このブログを始めてぼつぼつ5年。暇さえあれば机に向かっている。自分でも不思議に思うくらいだ。インターネットはおろか、パソコンすら触ろうとしない仲間達は「70歳を過ぎて、そんな肩の凝ることを・・・。第一、目に悪いよ」と、笑うのだが、とにかく惹かれるのだ。




 肩が凝るのは今に始まったことではないから、このパソコンが原因じゃあない。もう一つの目もくたびれない。夜、遅くなっても、案外、眠くならないのである。言葉には出さないが、女房が言うように、子どものころこれほど熱心に机に向かっていたら、俺の人生が変わっていたのではと、正直思う。


鉛筆


 考えてみれば、子どもの頃、こんなに意欲的に机に向かったことも、いわんや勉強したこともなかった。女房の言う通りだ。今の教育ママと違って、親達もたくさんの子どもを抱え、生活そのものも楽ではなかったからか、子ども達にそれほど「勉強しろ」などと言わなかった。そんな暇もなかったのだろう。それが幸か不幸か・・・。



 宿題をしていかないと明日、先生から怒られるので、仕方なく机に向かうのだが、これまた昼間の遊び疲れで、すぐに眠くなるのだ。そんな事を繰り返しながら中学、高校へ。3年生になる頃になって大学受験を意識して「これじゃあ困る」と、自覚?にも似た心境になるのだが、その体質が一夜に変わるはずもない。面白くないから、また居眠りだ。




 ところがどうだ。これまでだらだらと飲んでいて女房から嫌がられた晩酌も、さっと切り上げて机に向かうし、マージャンをしたり、お酒を飲んで午前様で帰っても一度はパソコンに向かう。ブログを開き、留守中の訪問者にコメントを返すのだ。



 「お父さん、今何時だと思っていらっしゃるの。眠れないじゃない。早く電気消して、寝てくださいよ」



 女房がうるさいから、仕方なく止めるのだが、このうるさいヤツがいなかったら・・・。



 何事にも言えることだろうが、興味を持つということは恐ろしいものだ。矢印マークやハンドマークを動かしては手当たり次第にクリック、そこにまた「へえ~」と思える発見が。ブログ記事のカット写真を作るため、デジカメも持ち歩くようになった。若い頃、仕事にも使ったアナログのカメラは押入れの中だ。レンズの先の視点も変わった。




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おきてがみ
プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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