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上海で見た車の洪水

上海

 30年以上も前と比較するから当たり前だろうが、その空間がついこの間のように思えるのでびっくりする以上にびっくりした。視界には数十階建てのビル群が並び、今、走っている道路は車の洪水。中国は上海のひとコマである。



上海2

 上海の人口は統計上、1,800万人。これに農村部から流入する季節労働者を加えると3,000万人をはるかに上回るという。中国全土の人口は13億人と言われているが、それはアバウトな数字で、実際には定かではない。このことは地元の中国人の話として後で書くことにするが、とにかく、その縮図のような上海は人、人、人。車、車。活気に満ちていた。



上海3


 私はこれまでにも2回、中国の地を踏んでいる。一度目は1981年。37年前だ。二度目はそれから5~6年後。その間はほとんど変化はなかった。上海、北京、西安、杭州、石家荘、桂林、蘇州・・・。いずれも遊びではなく、仕事でお訪ねしたのだが、その頃の都市はどこも人と自転車の洪水だった。



 人々はみんな紺の人民服に、これも申し合わせたように同じ帽子を被り、黙々と、それもゆったりと自転車をこぐ。決して急ごうともしない。その間を自転車が引っ張るリヤカーや牛馬の荷車が。そのおびただしい数と、えもいわれぬ迫力に圧倒されたものだ。


上海7

 車と言えば、恐らく政府高官が乗るのだろう、「紅旗」「上海」などわずかな高級車と、日本などからの観光客を乗せる大型バスだけ。その乗用車や観光バスは、それ程広くもない道路をまるで我がもの顔で、土煙を上げて走る。観光バスはほとんどと言っていいほど日本の中古車。中には山梨、静岡両県を走る富士急行のネームをそのまま付けたバスも走っていた。そこのけ、そこのけとばかりに鳴らすクラクションの音に一瞬、クモの子を散らすように脇に逃げるのだ。センターラインもなければ、ましてや信号もない。運転手が鳴らすクラクションが≪法律≫だった。その時の政府派遣の案内役は「事故に巻き込まれたら轢かれ損ですよ」と、事も無げに言った。


上海4

 そして今。その自転車は車に代わっていた。トヨタや日産、ホンダやいすゞなどの日本車もあれば、ベンツやワーゲン、BMW・・・。世界の車が。もちろん中国国産の車も多い。それぞれの合弁現地法人が供給しているもので、いずれにしても車が自転車に取って代わった。アリのように自転車に乗って群れを成していた人間が車に乗り換えているのだから、車の量たるもの、おおよその見当はつくだろう。



上海5

 もちろん、みんなが乗用車に乗るわけではない。日本の都市部と同じように定期バスが。どのバスも満員だ。乗用車、バス、トラック。日本で言えば、高速道路のような片側3車線、4車線の道路はどこも車の洪水。そんな光景は東京など日本の都市部にとどまらず、山梨など地方の市街地だって珍しくもない。問題はその交通体系、ドライバーのマナーやルールのありようだ。日本ではおおよそ考えようもない追い越しや割り込みは普通。車線変更も右左折も先に首を突っ込んだ方が勝ち。危ないと思ったり、都合が悪かったらクラクションを鳴らせばいい。車の騒音とクラクションの音が異様なハーモニーを奏でていた。

上海6

※再掲 上海の旅シリーズ

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あがりの茶碗

すし屋1


 15日間にわたった船の旅(大西洋―カリブ海―パナマ運河―太平洋クルーズ)を終えて一旦ハワイに戻り、日本に戻ったのはそれから一週間後だった。飛行機も混むし、第一、航空運賃が割高になるゴールデンウィークを避けたからだ。



 食べ物も農作業も現実の生活が待っていたのだが、そんな山梨の片田舎に、ハワイから小さな小包が届いた。中にはなんと寿司屋さんであがりを飲む湯飲み茶碗が。ホノルルの官庁街に程近いところにある寿司屋さん「KABUKI」(歌舞伎)の大将が送ってくれたものだ。



湯のみ


 この茶碗は日本の寿司屋さんでもどこにでもある魚偏の漢字、つまり魚の名前を連ねたあれだ。ビールを飲み、寿司をつまみながら、目の前のカウンターに置かれたその茶碗を手に取り「大将、この魚偏の漢字、みんな読める?」と、茶碗の漢字を酒のつまみにしたことを思い出した。




 茶碗に書かれた魚偏の漢字はちょうど50。かながふってあるから「ヘ~、こう読むのか」と分かるのだが、かながふってなければ読めない漢字がいっぱい。50の文字は日本人なら比較的ポピュラーな魚ばかりだが、案外知らない自分が情けなく思った。鯉、鮎、鯖、鯛、鰻、鯨、鰹、鰤、蛸、鰯、鰺などはどうということはないし、鮟、鮒、鯱などは字のイメージからなんとなく分かる。しかし鰌、鰆、鯰、鮠、鰈、鰊、鱸、鯊、鰾、鯔となるともう分からないのだ。中には明らかに当て字のようなものもある。





 「ところで大将、ここの寿司のネタ、どこから来るの?」


 「アメリカ国内もあれば、南米カナダもある。マグロなんかハワイで揚がるんですよ」




 考えてみれば、私たちが日本で食べている寿司ネタだって大方、同じような所から来ているのだ。ウニはカリフォリニアやシアトル、トロはスペイン。恐らく近海ものなんか少ないのだろう。鮪の場合、日本では「大間のマグロ」が有名だが、私たちの口には入らない高級品だ。カニにしたって「越前ガニ」のブランド物になると値段は跳ね上がる。


すし屋2

 そんなことを話している時、隣の白人客は「ODENN」(おでん)をオーダーするのだ。カウンターに置かれたカラフルなメニュー表には載っていないが、壁には手書きの特別メニューが。あるある。おでん(7・50$)ばかりではない。「KOMOTI SISHIYAMO」(子持ちししゃも3pieces 6・50$)「CHICKEN WINNG」(てばやき)「KIMPIRA GOBO」(金平ゴボウ4・50$)「ONSEN TAMAGO」(温泉たまご2・05$)・・・。


メニュー  

 これがまた白人達に人気があるのだそうだ。ゴボウは世界中でも食べるのは日本くらいのものだと、聴いたことがある。しかし、白人たちは結構、旨そうに食べている。それもそのはず。このカウンター席に来るお客はお馴染みさんが多いのだそうで、自称、日本通。中には週何度も来る人もいるという。寿司はもちろん、こうした日本の食べ物がダイエット食として注目されつつあるのだそうだ。

※再掲載=「クルーズ船の旅」シリーズ」


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食料の供給基地

クレーン2  

 「お父さん、あれなあに・・・」

15日間にわたった船旅の最終日の朝、いつもの朝と同じように12階にあるビッフェで朝食を摂っていた。女房はフォークとナイフを持ちながら、目で窓の外を差した。そこには、ただ青い空と海だけで、何もなかったはずなのに、いつのまにかの風景が。速度を落として滑るように動く窓には貨物船のような大小のクレーンが写っていた。船旅のゴール・ロス・アンゼルスに着いたのだ。


クレーン3


 ロス・アンゼルス港はとてつもなく大きな港だった。女房が「あれなあに・・・」とびっくりしたのは、クレーンの林。まるで飛び込んで来るように見える目の前のクレーンばかりでなく、広い港のあちこちに林立しているのだ。その間に間に貨物船が浮かびコンテナの山も見える。思わず、窓辺に寄って外を覗き込んだら、それはずっと向こうまで続いていた。




 ロス・アンゼルスはサンフランシスコと並んで米・西海岸の主要都市。海の港、空の港、共にアメリカの西の玄関口だ。世界の旅行者にとって、それぞれの交差点でもある。人の交通は、時間をかけずに移動出来る空の方がずっと多いのだろうが、海だって私たちが乗った船のように一隻寄港すれば4,000人近い人が一度に吐き出されるのだから、バカにならない数だろう。500人乗りのエアバス8機分だ。


クレーン4


 定かなデータがあるわけではないが、人の移動が空にウエイトがあるとすれば、物流は海の航路にある。船の方が一度に大量の物資を輸送できるに決まっている。石油なんかほとんどが船だろう。ロス・アンゼルスがあるカリフォルニア州は、世界の穀倉地帯のひとつ。米、麦、大豆、とうもろこし・・・・。メロンやパイナップル、マンゴウ、パパイヤ、葡萄、トマトやナス、キュウリなどの果物や野菜もそうだろう。




 日本の食料自給率はわずか40%。大半を外国に依存している。このロス・アンゼルスの港からも数多くの農産物が運ばれているのだろう。恐らく海産物だって同じだ。毎日、毎晩、山梨の片田舎の食卓に載っているものの一部がこの港から来ていると思うと、港ばかりか、港のあちこちに停泊する貨物船や、コンテナの山が無性に身近に感じた。


クレーン5

 林立するクレーンは、あるものは船からコンテナを下ろし、あるものは積み込んでいる。見る限り、コンテナは大小2種類。クレーンは手際よく貨物船への積み下ろしをしている。コンテナは、当たり前だが、輸送中に崩れることのないよう積み込む時に一つ一つロックされていく。コンテナの大きさを統一している訳が分かった。積み重ねるたびに「ガチャン、ガチャン」と音がする。崩れないように上下、左右をロックするのだ。




 収支と言ったらおかしいが、船に載るコンテナの数は入港時と出港時が同じであることが貨物船の掟だと言う。コンテナの中に荷物があろうがなかろうが、つまり空っぽでもコンテナを積まなければならない。もしこのバランスを崩せば、港によって空のコンテナが山積みされることになるのだ。空のコンテナを積んで帰らないのが経営手腕なのだろう。

※再掲載=「クルーズ船の旅」シリーズ」


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俺はやっぱり日本人

お茶漬け

 人間というヤツは我がままというか、贅沢なものだ。
「お父さん、やっぱりお茶漬けや味噌汁がいいね。ステーキやロブスターなんかもういいよ。わたしゃあ、温かいご飯にお新香だけだっていいさ」



 弥次さん、喜多さんではないが、女房と二人、外国人ばかりの船に乗って、一週間ぐらい経った頃だろうか、女房は私に向かってしみじみと言った。アメリカの最南端フロリダ州のマイアミを出て大西洋からカリブ海、パナマ運河を経て、太平洋に出た頃だった。


クルージング

 「お前もよく言うよなあ・・・。あれほど嬉々として食っていたくせに・・・」



 「それはそれよ・・・」



 事実、毎日、レストランやビッフェで、まるで食わなきゃあ損だ、といわんばかりに食べることに嬉々としていた女房が一転するのだ。15日間のクルーズ中、朝、昼、晩、食事は船の中のレストランやビッフェで摂った。コロンビアやパナマ、エクアドル、コスタリカ、メキシコ、サンディエゴなど寄港地でのツアーの時も船に戻って食べた。


船

 13あるというレストラン、ビッフェのうち、低額だが有料のバー方式のレストランを除いて全てが無料で食べ放題。その時の好みやお腹の調子で≪食事処≫を変えるのだ。気軽に何でも自由に食べたい時にはビッフェ。ディナーのようにちょっとお洒落に落ち着いて食べたい時にはそれなりのレストランへ。普段着だと、ちょっと肩身が狭いような、そんなレストランもあれば、比較的軽めのメニューを用意してくれているレストランもある。


船上

 ビッフェは、いわゆる大衆的で、日本風で言うヴァイキング方式。パンやハム、ベーコン、サラミ、ヨーグルトや牛乳、ジュース、肉や魚、豆やコーン、フルーツ・・・。それぞれあらゆる種類が用意されている。肉を例にとってもステーキを好みで焼いてくれもすれば、ローストビーフも好みの厚さに。もちろんチキンだってある。フルーツだってオレンジ、バナナ、葡萄、梨、林檎、桃、西瓜は当たり前。メロンやパイナップル、アボカド、マンゴー・・・。名前も分からないようなものも並んでいる。




 チーズやヨーグルト、ジャムも同じで、よくもこれほどそろえたものだと思うほどの種類が。朝は目の前でスクランブルやオムレツを作ってくれる。その具も何種類もあって、好みに応じてくれるのだ。そんな具合だから、例え朝であっても、あれもこれもと目が食べたくなってしまうのだ。勢い、大きなお皿はいっぱい。てんこ盛りに。

オムレツ


 レストランだって同じ。フランス料理、イタリア料理とさまざまなメニューを用意してくれていて、欧米人との胃袋の違いだろうか、一つ一つの量が多いのだ。確かに美味しい。目が食べたいばかりか、貧乏人の嵯峨が頭をもたげ、正直言って≪欲≫で食べてしまうのだ。「せっかくのダイエットが・・・」と、一方の自分がブレーキをかけるのだが・・・。




 しかし、そんな毎日が続くと、女房ではないが、あっさりした日本食が恋しくなる。ある意味、カルチャーショックだ。外国へ旅行したあと、いつも思うのだが、お茶漬け、お新香、熱い味噌汁が一番旨い。やっぱり俺達夫婦は日本人だ。根っからの貧乏人かも。

味噌汁

※再掲載=「クルーズ船の旅」シリーズ」


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おきてがみ
プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 職場を離れた後は«農業もどき»で頑張っています。傍ら、人権擁護委員やロータリー、ユネスコなどの活動も。農業は«もどき»とはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定もします。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは、身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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