紙の門松

 慣れとか、習慣とは恐ろしいものだ。玄関先に飾る門松(松飾)が簡易式の紙になってもう何年、いや何十年になるのだろう。大きな紙に刷り込まれた松竹梅の門松に少しも違和感がなくなった。「な~んだ。紙か」と言った頃がウソみたいだ。


賀正ポスター


 私たちの地域では区で全世帯の(紙の)門松を一括購入、組長がそれぞれの組の世帯にお届けするのである。昨夜は公会堂で区の役員会を開き、この門松の配布はもちろん、年末、年始の諸行事について打ち合わせた。




 年末、年始の行事のメーンは、なんと言っても新年拝賀式と互礼会。全戸の代表が集まって、地域の氏神様に参拝、その年の地域とそこに住む人達の安泰を祈願し、一年をスタートさせる行事だ。そのために、区の役員が総出で、氏神様へのしめ縄飾りや、その周辺の清掃はもちろん、拝賀式の後、区民がお神酒を交わす公会堂の大掃除もする。




 こちらは女房達の役目。それぞれの家庭で行う大掃除と同じように区民の拠り所になって来た公会堂の一年の垢を洗い落とすのである。毎年その日は30日を充てている。しめ縄や門松など正月飾りは31日の大晦日や29日にもしない。31日の飾りつけは「一夜松」といって昔から嫌ってきた。縁起担ぎなのだが、29日の場合も同じ。こちらは「九」「苦」で、大掃除もしない。もちろん「九餅」「苦餅」といって餅つきもしない。


門松


 松竹梅の門松が絵入りの門松に変わって久しい。かつて、この門松はクリスマスツリーのモミの木と共に、その調達は子供たちの年末行事の一つだった。ちょうど冬休みになったばかりの子供たちは、当たり前のように近くの山に入り、松を取って来るのである。もちろん、子供ながらにも、小さな松を根元から切って来るようなことはしなかった。松の木によじ登り、手頃な枝を切り落として来るのである。




 子供たちは誰に教わるともなく、山を大事にすることを知っていた。今のように、自然保護がうるさく問われたり、第一、そんな言葉が無かった時代である。山は人々の生活の一部だったからだ。山の木は、今の電気やガスに匹敵する燃料、つまり薪であり、その落ち葉は田んぼや畑の有機肥料だった。




 そのことを大人たちはむろん、子供たちも知っているから無茶な伐採はしなかった。むしろ、年に一度の門松採りやクリスマスツリーとなるモミの木採りは格好の枝払いであり、下刈りでもあった。しかし、都会の人達には自然破壊に写ったに違いない。特に、教条的ともいえる自然保護団体にかかったらどうにもならなかったのだろう。


屋台2


 確かにむやみに切ったら自然の破壊だ。だが、間伐と伐採は違う。門松採りはともかく、人々の生活環境の変化は、山の無視を加速させた。松はもちろん、杉やヒノキに至るまで、やらなければならないはずの枝払いや下刈りもしなくなった。お陰で、山という山がいたる所で荒れ放題。そのツケは花粉症惹起の要因にもなっているという。


お飾り


 女房が「九」を避けて早いうちに組の各戸に紙の門松を配り歩いた。クリスマスが済んでつかの間、今度は街角に松飾りやしめ縄飾りの屋台がお目見えした。いよいよお正月だ。




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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
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