サクランボとなまくら息子

サクランボ1


 サクランボといえば山梨県の人たちは南アルプス市の白根をイメージする。しかし、今では白根に勝るとも劣らないのが山梨市の旧岩手地区だと思う。私が住む村だからという贔屓目ではない。東南に面した山付きを中心にサクランボ畑が広がり、そのスケールはけして小さくない。路地ものばかりではなく、シーズンには一面ビニールハウスで埋まる。その立地とおそらく地味の良さも手伝って味もいいのだそうで、人気は年々高まり、4月から5月にかけての最盛期には首都圏からの観光バスがどっと繰り込む。




 その姿を横目にちょっぴり複雑な思いに駆られることがある。全体では一部分でしかないが、一等地のような1~2町歩の土地がかつては我が家の畑だったからだ。あの土地が俺のものだったら、とつい助平根性が頭をもたげる一方で、あの土地が今も残っていたら、と思うと、ゾッとするのである。助平根性などとんでもない。なまくらになってしまっている俺に耕作出来るわけがないからである。


サクランボ2


 子供の頃を思い出した。この地方ばかりではないが、山梨県は米麦、養蚕が農業の主体を成していた。平地は水田、それも二毛作の米と麦、山付きは桑を作って、養蚕をしたり、とうもろこしや薩摩芋も作った。この地方では大きな農家だったから、中学生の頃の農繁休暇には、10人前後の仲間や上級生が宿泊研修という名のお手伝いに来るのである。自分ばかりでなく、みんな懐かしい思い出であったに違いない。70歳近い男たちが今もその思い出話をするのである。




 私が大学に入った頃、つまり昭和30年代の半ばごろから、この地方は桃、葡萄を中心とした果樹への転換が始まり、あっという間に米麦、養蚕の農業スタイルは姿を消した。我が家も水田から桃や葡萄などの果樹園に転換したことは言うまでもない。農家の長男でありながら大学を卒業した後、家に帰らず、いわゆる会社人間の歩みを始めてしまったのである。

葡萄9月



 広い農地を抱え、家業を見向きもしないせがれに親父は頭を抱えたに違いない。我が家の農地の大部分を処分せざるを得なかつた親父の心中が、ちょうど親父の年になる今の私には分かりすぎるほど分かる。その処分の仕方も、やけくそなのか、一生懸命手伝ってくれたお礼なのか、近所の人に、いわば只同然で分けてしまったのである。


桃



 俺がもし親父の立場だったらと考えると、親父のような大胆なやり方はできないだろう。もう大分前になるが、今は南アルプス市となった旧白根町の知り合いがこんなことを話してくれたことがある。



 「うちの畑を道路でも何でもいいから走ってくれないものかとつくづく思う。親から譲り受けた畑を売っぱらうのはちょっと気が惹けるが、公共用地としてなら大義名分がある。息子は大学を出て、会社勤め。百姓なんかやる気はねえんだ」




 なにか自分と親父のことを言われているような気分になったものだ。百姓の長男とはそんなもの。しかし、その百姓をめぐる環境や価値観は何十年かのサイクルで変わるのである。





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Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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