美人とのすれ違い

赤トンボ



 芽を出した大根畑で草取りをしていたら、赤とんぼが飛んでいた。秋の到来を実感する瞬間だった。でも残暑はきつい。今日も30度を超しているだろう。額の汗を首にぶら下げた手拭で拭いながら、その赤トンボを目で追っていたら、その先に真っ白い蝶ちょが。はて? この時期に、こんな蝶ちょがいたっけ。春じゃあなかったか。いかに、自然に無頓着に過ごしていたかを実感した一瞬でもあった。





 問題は、白い蝶ちょだ。これまでなら確実に、ヒラヒラと舞うこの蝶ちょを、可愛らしく思い、目を細めて追っただろう。だが違った。瞬間的に、追っかけて捕まえ、すりつぶしたくなった。「お前は異常性格者か」と、ひんしゅくを買うかもしれないが、異常性格でもなんでもない。単なる立場の問題だ。実はこの蝶ちょ、無邪気に初秋の空を舞う赤とんぼと違い、ちゃんと目的があるのだ。可愛らしく、舞っているようだが、実は魂胆があるのである。


蝶


 やっと芽を出し、二枚葉になったばかりの大根の葉っぱの裏側に、次々と卵を産み付けるのだ。この卵はやがて蝶の幼虫となって、大根の葉っぱを食いつぶすという寸法である。よほどののうてんきでも、可愛い、などと言ってはいられまい。汗だくで種を蒔き、晩秋というか、初冬の収穫を夢見ている百姓にとつては天敵以外のなにものでもない。





 蝶ちょへの恨み節はさておき、残暑はあってももう秋だ。日が暮れれば庭先の植え込みからはコーロギや鈴虫の鳴き声が。私はこの時期になると毎夜のように密かに外へ出る。虫の音を聞くためではなく、ある美人に会うため だ。




 「お父さん、毎晩、外に何しに出るの」。女房の疑いを込めた問いかけに「美人に会いに行くんだよ」と、言ったら「なに馬鹿なこと言ってるのよ」と、これまた、けげんな顔。庭先の月下美人を見に行っていることを知った女房は「ああ、そうか。もうそんな季節になったんですねえ」。うちの女房、極楽トンボで、季節感がねえのかなあ。


月下美人2



 我が家の月下美人は一昨年、親しい友が鉢植えで持って来てくれたものだ。昨年も見事な大輪を三つも四つもつけた。色といい、形といい、まさに美人である。なんともいえない気品も備えている。才色兼備である。その上、なんともいえない、いい香りを放つ。シャネルやエルメスなど世界の香水ブランドでもこの香りはつくれまい。ご存知、月下美人は夜、花を開き、一夜にして萎む。「美人薄命」という言葉はここから来たのだろう。



月下美人1



 今年はその美人とすれ違いになってしまった。マージャン会や無尽会で、留守にした夜に咲いてしまったのである。シワだらけに萎んだ≪昔の美人≫がいくつもぶら下がっていた。私が「美人、美人」と言うものだから女房は何を勘違いしたのか「お父さんねえ、≪美人は三日で飽きる、ブスは三日で慣れる」と言うんだよ」と。「じゃあ、救いようのないブスはどう言うんだ」と聞いたら「一円玉ブス、と言うんでしょう」。「そうだよなあ、これ以上、壊しようがねえものなあ」。「お父さん、美人に逃げられたからといって八つ当たりはよしてよ」と笑っていた。とにかく美人との再会は来年までお預けだ。






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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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