引ける腰

病院4


 病院の廊下を歩く患者達。車いすを卒業して歩行器で歩く人もいれば、その歩行器を卒業した人もいる。面白いのは、みんな腰が引けているのだ。腰を後ろに尖らせて歩いているのである。面白い、などと言ったら叱られる。自分もその一人だ。トイレに行く時もリハビリの階段歩きの時も同じ。




 「腰が引ける」。健常な日常の中にもある言葉である。物事に消極的だったり、逃げたりする様をいう。言い得て妙、とはこのことだと思った。言葉としては理解しても、身体で理解出来たのは、この時だった。腰の手術を受け、一ヶ月近くの入院生活で実感したのである。


腰痛2


 一方で、「顎を上げる」とか「顎を引く」という言葉がある。マラソンなど苦しい場面に遭遇すると、だんだん、顎が上がる。転じて、顎を上げたらダメで、“降参”をも意味する。顎は、引かなければいけないのだ。腰と顎は反対と言うことになる。




 「今日は、いいお天気です。窓の外を見て下さい.富士山が見えますよ」



 朝食が済んだ時間。白衣姿で回診に来た主治医(執刀医)は、窓の外を指差して言った。手術の翌日。身動きも出来ないほど痛みが激しい時であった。いくら天気が良くても身動き一つ出来ない患者にとって窓越しの目線の富士山が見えるはずがない。



 「富士山どころじゃあ、ありませんよ.痛くてたまらんのですよ」


 内心では、咄嗟にそう言いたかった。でも


 「綺麗ですね。真っ白い雪を厚くして…」


 そんな言葉を返した。医師の患者への思いやり、気分転換の励ましが伝わって来たからだ。私は山梨の人間。窓越しにいつも視ているので、富士山のイメージはまぶたに焼き付いている。


富士山_convert_20120706104053



 「手術は終わったんだぞ。元気を出せ」



 回診の主治医は、そんな励ましの言葉を言外に送ってくれたのだ。今の外科治療は術後、出来るだけ早期に“行動”させる考えらしい。それによって回復への速度を早めるのだ。そうは言っても痛い。




 特に周りが静まりかえる夜中は深刻で、我慢が限界に来た時は、ベッド脇のブザーを鳴らしてはナースセンターに待機する看護師さんを呼んでは痛み止めの処置をして貰うのだ。腕にセットされている点滴装置から鎮痛剤を流し込めばいいのだから、簡単。それが切れたら座薬。そんな日が三日三晩続いた。




 腰を引いて歩く患者たちに、もう一つ共通しているのは、みんな腰にコルセットを巻いていることだ。この病棟は外科病棟であることは間違いないが、恐らく、多くが腰椎の手術を受けた人達なのだろう。コルセットは編み上げのしっかりしたものもあれば、マジックテープでワンタッチで装着出来るものもある。みんなセパレーツの入院着の上から巻いている。もちろん私も同じスタイル。健常者が見れば、滑稽至極だろう。(次回に続く)





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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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