ピンクのじゅうたん

桃  


 「山梨の人間はバカだねえ・・・」


 「先生、どうして山梨の人はバカなんですか」


 「バカなんだよ」


 「だからどうして・・・」


 「だって、そうだろう。山梨の桃の花はすごい。わたしゃあ、電車で甲府に来たんだが、勝沼駅から塩山駅にかけて見渡す甲府盆地の桃の花は素晴らしい。あれを山梨県のヤツらは、世に出すことも、ましてや活用することすらしねえ・・・」


桃_convert_20120418091221
一宮町観光協会



 その人はツボのような丸い目をむき出すようにしながら、まるで掃き捨てるように言った。その語り口調はドスが利いていて、声はかすれている。ご存知の方は、そのイメージからお分かりになるかもしれない。そう、今は故人となられた岡本太郎画伯だ。大阪万博の、あのシンボルモニュメント「太陽の塔」の作者としてもおなじみ。その作風からピカソを連想する方も多いだろう。

岡本太郎



 もう30年以上も前のことだ。甲府で岡本画伯にお目にかかってインタビューさせて頂いたことがある。お話をお伺いする前、その生い立ちをちょっと調べさせて頂いた。その記憶によると、芸術一家に生まれた岡本さんは、子供の頃は名うてのやんちゃ坊主で、小学校を度々、転校させられた。ところが絵を描かせれば何を描いても上手で、18歳の時、東京美術学校(現東京藝術大学)に入り、その後、一家でフランスに渡るのである。




 岡本青年は、家族が日本に帰った後もパリに残って絵を勉強、そこで出会ったピカソの絵に心酔して、抽象画に傾倒していくのである。原色を使ったあの力強い抽象画を見て誰もがピカソを連想するわけはそこにあるのだ。大阪万博は当時、圧倒的な人気を集め、その入場者総数は6,400万人を数えた。日本人の二人に一人が万博を見た勘定だ。そのシンボルとなった「太陽の塔」の制作費は30億円とも言われた。




 なんとなくピカソを連想しながら向き合っていた私は、この岡本画伯のお話に、頭をガツ~ンと、ぶん殴られたような気がしたのを今でも鮮明に覚えている。なぜって? 今でこそ桃の花をいけばな用に市場化したり、桃の花見の場を設営して観光客を誘致するようになったが、当時、桃作り農家も農協など全ての周囲は、いわば「いい桃の実を作ってなんぼなんぼ」という考えに過ぎなかったのだ。岡本さんが言うように、あの見事な桃の花をビジネスに使うことなど考えなかったのである。


桃2_convert_20110412202905



 いくら素晴らしい花が咲こうと、その中にいれば、当たり前のことで、その素晴らしさに気づかない。岡本さんが言う桃の花に限らず、そこにいる人たちが空気のように誰も気づかず、見過ごしていることって案外多いのかもしれない。色から来る景色を見ての感性、それが芸術ばかりはではなく、ビジネスチャンスにも繋がることを思い知らされた。岡本画伯の感性はひとつキャンパスの上だけではなかった。事実、あの30数年前の乱暴とも思える発言が、やがて農家も周囲も山梨の桃の花に対する視点を変えるきっかけになったことは確かだ。




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Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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