エメラルドの海

マイアミ海2   

 やがては紺碧の海に変わるのだが、マイアミの海はエメラルド色だった。エメラルドグリーンといった方がいいかもしれない。4月19日午後4時、ざっと2,500人の乗客と1,000人を超す乗員スタッフを乗せた豪華客船「NORWEGIAN」は、動いていることすら分からないほど静かにマイアミの港を出港、15日間のクルウジングのスタートを切った。





 さすが北アメリカの南端、午後4時といっても日差しは強い。しかし焼き付けるような暑さではなく、全く爽やかだ。涼しい風と混じって心地いい。表現の仕様がないほど美しいエメラルドグリーンの海に、デッキに出ていた乗客は一様に歓声を上げた。隣にいた女房も同じように感激したのだろう。


マイアミ海  


 「お父さん、綺麗だね。こんな海、見たことないよね。写真撮ってよ。写真・・・」



 まるで子供のようにはしゃいだ。私は、そのエメラルドグリーンの海をどこを見るともなく真っ直ぐ眺めながら、女房との新婚旅行、南紀白浜の海を思い出していた。その時も、これほど見事なエメラルドグリーンではなかったものの、その素晴らしさに感動したものだ。




 私が28歳、女房が26歳。もう38年、いわば40年も前のことだ。昭和45年1月。この頃、日本列島の真ん中・山梨からの新婚旅行といえば、この南紀白浜あたりがせいぜい。思い切って足を伸ばしたとしても九州・宮崎くらいだったのだろう。それから間もなくハワイ、グアム、そしてアメリカの西海岸、東海岸、ヨーロッパと日本人新婚旅行のエリアは世界に広がっていくのだが、その時分は海の向こうなど思いもよらなかった。



マイアミ海4  


 大学を出て社会人となったのは昭和40年。通勤の足といえば50ccのバイク。仕事の足も同じだった。中古のマイカーを持てたのはそれから数年後のことである。昭和45年といえば、今の天皇が美智子さまとご成婚されてちょう10年。東京五輪を経てわが国は高度成長路線を走り、3C(カー、クーラー、カラーテレビ)などという言葉が生まれた時代だった。





 新婚旅行の足は女房が花嫁道具の一つとして持って来たマークⅡ。 富士・河口湖に一泊、その足で山中湖から籠坂峠を越えて東名高速に乗り、京都、大阪、南紀へと向かったのである。エメラルドグリーンの海は、ドライブ中に見た、恐らく白浜か勝浦あたりの太平洋だ。その海は私たちがこれからパナマ運河を経て、やがて見る中南米の海と繋がっていたと思うと感慨深い。やや傾きかけた冬の柔らかい日差しに照らされて、きらきら輝くエメラルドの海が40年経った今も瞼の奥に鮮明に焼きついている。


マイアミ海7

 「お父さん、ダメじゃない。早く写真撮ってよ」


 同じように見たはずだが、40年も前の南紀の海や、まして新婚旅行のことなどみんな忘れてしまっているのだろう。女というヤツは現実的で、およそロマンなどというものは持ち合わせていないのだ。ただ目の前のものだけを見てはしゃぐ女房の声を聞くともなく聞きながらそんな事を思った。


マイアミ海6

 「早く、早く・・・」。振り向いて見た女房の顔は丸々太り、ウエストも大きなお尻とほぼ同じだった。そういう自分も出っ張ったお腹をデッキの手すりに引っ掛けていた。


マイアミ   



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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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