大きさを増す女房の座

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 「わたしゃあ、あなたのお母さんじゃあありませんよ。まったく・・・」

 時々、女房ははき捨てるようにこう言う。風向きによってご機嫌斜めの時だ。世の中の半分を占める女性の皆さんにバッシングを受けることを覚悟で言えば、女というものは単純なものだと思っている。わが女房だけかもしれないが、とかくその時の感情だけでモノを言うのだ。





 しかし、このことに限れば、女房の言う通りだ。確かに、女房は私のお母さんではない。女房を「お母さん」と呼び始めたのは何も今に始まったことではない。恐らく一人娘が生まれた頃からだろう。もう38年近くになる。我が家ではそれが定着したかのように普段は「お母さん」で通っているのだ。




 そういえば、私が女房を「お母さん」と呼び始めた頃、おふくろがキョトーンとした顔をしたことを今でも覚えている。逆算すれば、おふくろはその頃、50台も半ば。息子が嫁を「お母さん」と呼んだのには、違和感を覚えただろうし、面食らったに違いない。よく考えてみれば、そういう私は娘が生まれて、子供を中心の家庭を無意識のうちに考えたのかもしれない。待てよ、「わたしゃあ、あなたの・・・」と言う女房だって私のことを「お父さん」と呼んでいる。


2

 嫁と姑。古くから、確執の代名詞のように言われてきたが、私が見る限り我が家にはそれがなかった。おふくろは若い頃からなぜか隣近所で起きる嫁、姑間のトラブルの調整役をすることが多かったせいか、その徹を踏んではいけないと、女房に一定の気配りをしていたことも事実だろう。女房との喧嘩や諍いは、後にも先にも見たことがない。しかし女房にしてみれば姑であることに間違いないし、おふくろもそれを意識していただろう。


嫁姑  


 人間、当たり前のことだが、それがいつの間にか逆転するのである。それがいつ頃であったかは定かではない。一つ言えるのは、おふくろ自身が老いを感じ、身体に偏重を覚え始めた頃だろう。大きくなるお尻と並行するように、女房の存在感が増して行くのである。うっかりしていると亭主すら尻の下に敷くのだ。




 おふくろは大正5年生まれ。93歳を過ぎた。今は介護医療の病院にお世話になっている。ほとんど毎日のように行って話し相手になったり、身の回りの世話をしている女房には、全く頭が上がらないようで、息子の私より頼りにしている。それは今に始まったことではなく、おふくろは丈夫の時からも、女房を相談相手にし、その立場を立てていた。やがて面倒を見てもらうのは嫁、と考えていたのだろう。
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 おふくろは足腰が不自由になっているばかりか、痴呆も始まっている。しかし、残り少なくなった自らの兄弟や、次男坊や三男坊など息子たちのことは忘れても、私の女房、つまり嫁のことは忘れない。世話になっている、また世話にならなければならないという気持ちの一方で、姑としての嫁に対する緊張感があるのかもしれない。姑を子供のように優しく扱う女房。片やおふくろは息子の私より頼りにし、感謝していることは確かだ。




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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
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