医療現場と人間
人間ドックでお馴染みの胃の内視鏡検査や胸部のレントゲン検査、心電図やエコー検査ならいざ知らず、CTとかMRIなどのハイテク医療機器にお目にかかるとは思いもよらなかった。トンマが故のムチウチ症に遭遇しなかったら、恐らく、ここ5年や10年、あるいは一生、出遭わなかった機器かもしれない。PTとかOTといった、医療の世界では当たり前でも、一般には知る必要もない専門医療用語も知った。
逆から言えば、思いもよらない事故に遭遇したから、そんな体験も出来たし、知識も得た。こんな人ごとのようなことを言えるのも、症状が回復して来たからこそだ。健常時に受ける人間ドックとは違って、苦しい時は、このハイテク医療機器が神にも仏にも見えるのである。「この機器にかかれば、必ず完治の糸口が見つかり、痛みや切なさから解放される」。まさに、まな板の鯉。そんな気持ちで初めての医療機器と向き合うのだ。
医療に関わる機器や用語、治療の仕方ばかりではない。日常茶飯事に起きている交通事故で障害を負い、リハビリ治療を余儀なくされた人。農作業や植木の選定中、脚立から落ちて重症を負って後遺症に悩む人。自宅のさもない階段から落ちて骨折や頭への障害を引きずらなければならない人達もいる。そのケースはさまざまだし、いかにそうした人の数か多いことも目の当たりにした。
自分が同じ立場に立てばよく分かる。病や疾患と真正面から向き合い、闘う患者の気持ち。それを懸命に手助けしてくれる医師や医療従事者。そんな医療の現場が手に取るように分かるような気がするのだ。
「オジサン、歳だよ。俺達にはCTもMRIもPTもOTも、そんなもの関係ないよ」
そうおっしゃる、お若い方々もお出でだろう。でも、そのオジサンが今、痛感するのは人間生きていれば何があるか分からないということだ。よしんば自らに、こうした災いが降りかからなくても、身近には、お父さんやお母さん、さらには年老いたおじいちゃんやおばあちゃんもお出でだろう。そう考えれば全くの無関心でもいられまい。知っていても損はない。
PT,OT。治療を受けていて気持ちがいい。主治医の説明によれば、PTとはPhysical Therapy(理学療法)の略。またOTはOccupational Therapy(作業療法)の略。いずれもマッサージやさまざまな機器、道具を使っての機能回復訓練だ。何度も通った山梨県石和温泉郷のリハビリテーション病院にある機能回復コーナーには、各種の機器のほか、オルガンやお手玉、輪投げ、ボール、移動ブロックなど子供の遊び道具のようなものもいっぱい。
訓練は、いずれも患者と療法士のマン・ツーマン。30分間の治療訓練が続く。その影にはインターンといわれる研修生がピタリと張り付いていた。PT、OTの卵たちだ。高校を卒業した後、4年間、専門学校で学び、国家試験をパスして、この医療現場に立つのだ。先輩療法士の一挙手一投足を、目をサラのようにして見守り、患者と医師のやり取りを聴く。「俺達のような患者のために頑張ってくれよ」。素直に応援したくなった。
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