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教えるもの?盗むもの?

刺繍展示



 上海から車で小一時間。江蘇省は蘇州市の市街地の一角にある刺繍研究所を訪ねた時、「なるほど・・・」と頷く半面で、なんともいえない違和感を覚えたものだ。作業机を並べ、職場を共にする職人さんがすべて刺繍の裏側を覆面にしているのである。この研究所は私達のような観光客、しかも内外不特定多数の人たちに買い物を前提に見学を許しているのだから、当然のことながら、その道の専門家も虎視眈々と見に来るだろう。伝統の裏技をみすみす盗まれるようなヘマはしまい。


刺繍1



 伝統は守ってこそ伝統。特殊な技術や裏技は守り育ててこそ値打ちがある。そのこと自体は私のような盆暗でも分かる。でもここでは≪職場≫の同僚同士でさえ、その技術を教え合わない。両面刺繍の裏面でのテクニックを外部に漏らさないばかりか、親しい仕事上の仲間にも秘密だという。両面刺繍だから表から差した糸は裏で恐らく特殊なテクニックを施して、また表に返す。これが糸かと思うほど極細の糸を使っての気が遠くなるような連続作業なのだ。




 表側の作業を見る限り、≪気が遠くなる連続作業≫の匠の技を百歩譲って「へえ~」と驚き、賞賛する程度に収めたとしても、気懸かりなのは同時に行なっている裏面での作業。それぞれの職人さんたちが大きな布で覆い隠しているので、まさしく≪裏技≫は誰にも見えない。裏面で糸を返す時に施すテクニックは匠一人一人の固有の財産なのだろう。その技は単なる裏技ではなく、匠たちの修練がもたらす知恵の結集であることだけは容易に想像出来る。


刺繍展示2


 陶芸、彫刻、漆工芸、錬金、宝飾・・・。日本にも伝統工芸といわれるものはいっぱいある。むしろ、繊細な技術に長けた日本人だからこそ、世界的に見ても、その種類や、それに携わる匠の数は多いのだろう。しばしばテレビや雑誌に登場して、その人生を語る匠たち。そこには、それぞれの道を極めたり、極めつつある人達のなんとも表現の仕様がない風格と自信に満ちた顔がある。




 匠とは言わないまでも、おしなべて職人と言われる人達は「仕事は教わるものではなく盗むもの」と、よく言う。「盗む」という言葉がよくないとすれば、優れた技をいかにして自分のものにするかの貪欲さだ。「技を盗め」の反対語は「手取り足取り教える」。生産性を追い求めたり、何事においても忙しい現代社会にあっても、およそ匠とか職人と言われる人達は「手取り足取り」の教え方はしない。


刺繍2


 どんな仕事でもそうかも知れない。「手取り足取り」教わったとしても肝心の教わる側がそれへの意欲がなかったら結局は元の木阿弥。その逆に意欲ある者はその仕事や技術を「盗む」こともする。これも何の事はない。意欲がないものにいくら教えたって所詮はダメ。時間がゆったり流れていようが、いまいが匠や職人の技は技術や知識への貪欲さに源があるのだろう。「手取り足取り」の教育ママ、教育パパは増える一方。そこで無理やり教えたものは≪本物≫にはならない。いつの世も本物の技や知識は貪欲に盗むものかもしれない。




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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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