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隅田川のダンボール小屋

 「お前の物好きというか、野次馬根性にはあきれるよ・・・」


 もうかなり前になるが、ある休日、野暮用で上京した折、隅田川沿岸を歩いたことがある。そこを根城にするホームレスと話をするためだ。親しい仲間が言うように確かに物好きかもしれない。スーツとズボンの両方のポケットに駅のキヨスクで買った4本のワンカップの酒を忍ばせて隅田川に向かった。街ゆく人たちは、まだコートの襟を立てて歩いていたから桜の春には、ちょっと早い時季だった。


隅田川5


 仲間が言う「どっちでもいいこと」を思い立ったのには、ちょっとした訳がある。誰と一緒だったか忘れたが、浅草から水上ボートや屋形船で、何度か隅田川の川下りを楽しんだことがある。幾つもの橋をくぐり、日の出桟橋か、その先辺りまで4~50分の「船旅」。頬を刺激する冷たい川風が逆になんとも気持ちいい。船内アナウンスは両国国技館や高級マンション群、それに橋の数々をくぐるたびに、そのいわれやエピソードを説明してくれる。



隅田川桜


 そんなアナウンスを聞くともなく聞きながら目に留まったのが沿岸のダンボールやビニールシートで囲った小屋だった。目に留まるなどといった感じのものではなく、隅田川の両側にへばりつくように並ぶ、その数々の小屋の風情は異様にさえ見えた。沿岸の陽だまりを選ぶように並ぶそれは、小屋と呼ぶにもふさわしくないほど粗末なもの。言ってみれば雨風をしのげればいいといった程度のものだった。




 川下りの水上ボートには100人ぐらいの乗船客がいただろうか。中国人や韓国人の団体観光客も目立った。みんな私たちと同じ顔をしているが、ガヤガヤと、なにやら早口で話す言葉で否応なく日本人ではないことが分かる。「あれはなんだろう」と言っているのか、岸辺を指差して奇異な目つきで話しているのだ。




 「いい天気だねえ。花見にはちょっと早いが一杯やろうぜ」



 ダンボール小屋の前で日向ぼっこをしていたホームレスの男に話しかけた。この男、予期せぬ来客に一瞬、疑い深そうなまなざしを向けてきた。

 「こんな所にやって来て、『一杯やろう』などと、ダンナも物好きだねえ」

 
「川下りをした時、ここの住人と一度、話をしてみたいと思ったのさ。ここに来がけにワンカップの酒を買ってきた。一緒にやるかい?」

ワンカップ  


 最初は構えていた二人が、なんとなくうちとけるのにそう時間はかからなかった。「俺にもあるが、せっかくだから頂くか」。二人でワンカップの酒をちびちびやりながら話し始めた。男は50代半ば。ダンボール小屋の内側に同じようなワンカップが転がっていた。




 「俺ねえ、自分で言ってはなんだが、そこそこ名のある会社に勤めていたのさ。でもね、堅苦しい宮仕えが無性に嫌になっちまって、この世界に飛び込んじまった。ダンナと同じだよ。あっち(隅田川の上)から川っ淵のヤツらを見て、なんとなく惹かれちまったのさ。もちろん、そんな俺に女房がついて来るわけねえよ」



 「ダンナねえ、この稼業もまんざら捨てたもんじゃあねえ。でもねえ、ただ一つだが、絶対にあっちゃあいけないものがあるんだよ・・・」。(この続きは次回)。




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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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