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ホームレスは不労者

風景


 子どもの頃、しばしば、浮浪者がやって来た。当時、この辺りは今のような果樹地帯の形成には程遠く、米麦養蚕の貧しい農村地帯だった。そんな農業形態は戦後の昭和20年代はおろか、30年代後半の高度経済成長の足音が聞こえて来る頃まで続くのである。米麦は供出制度があり、養蚕が大切な現金収入の手段、といった時代であった。ちょっと注釈をつけるとすれば、その養蚕の衰退が果樹への転換の引き金となり、今の果樹王国の形成を導いた。日本の養蚕の衰退、消滅は安い韓国産生糸の出現だったことは誰でも知っている。




 浮浪者のことを、この辺りの人たちは「お乞食(おこんじき)」と呼んだ。子供心にもいかにもぴったりの言葉だと思った。汚い身なりで、物乞いをして歩くからだ。服ともいえないボロボロの布をまとい、日焼けした浅黒い顔は、剃刀なんか何日も当てないから、髭ボウボウ。お碗片手におこぼれに預かりそうな家を回るのだ。その風体こそ違うが、歳末、僧侶が修行の一環で行なう「托鉢」に似ている。そんな托鉢を例えにすると坊さんに叱られるが、なにしろ「お乞食」「浮浪者」という言葉がぴったりだった。


風景2


 世の中全体、戦後の貧しい時代だから、子ども達だって、今のような恵まれた身なりや食生活をしていたわけではない。貧しい農家の経済がそうさせたのである。でも親達は無し無しのお金をお碗に入れてやり、お米をも持たせた。そんなうしろ姿を見たのか、子供たちも、これこそ無し無しの小遣いの中からニ円、三円と恵むことを覚えた。ウキウキと心を弾ませて行く祭りのお小遣いが30円、40円の時代である。




 ところが、ある時、その「お乞食」の本領を見透かしてしまうような出来事に出っくわした。学校からの帰り道、川べりの林で仲間と道草を食っている時のことだ。物乞いをしていた「お乞食」がそれまで着ていたボロボロの服を小奇麗なスーツと着替え、それを風呂敷に包み、颯爽と自転車で立ち去るではないか。髭はそのままだが、髪には丁寧にクシを入れているのだ。子供心にも「この詐欺野郎め」と思ったものだ。




 それからうん十年。わが国は経済大国と言われるようになった。よく考えるとホームレスはいるが、物乞いをする「お乞食」はいなくなった。そのホームレスの一人とワンカップの冷酒を飲みながら話した。東京・隅田川の川っ淵に自ら設けたダンボールやビニールシートの小屋を根城にする浮浪者だ。たまたまかもしれないが、出合ったホームレスは脱サラ男。「堅苦しい会社勤めが嫌になった」という50男だった。「俺たちゃあ、何不自由なく暮らしている。決して強がりなんかじゃあねえ」と言い「自由が財産だ」とも言った。


隅田川1


 このホームレスは「みんな自分自分。他人のことは分からねえが、大なり小なり、みんな同じだと思うよ」とも言う。子どもの頃、出合った「お乞食」と今の「ホームレス」。呼び名こそ違うが、共通した言葉に置き換えるとしたら「不労者」。これこそまさにぴったりの言葉だ。文化人とか評論家と呼ばれる人たちは、もっともらしく政治の貧困だとか、社会構造の欠陥を指摘する。でも何の事はない。平和ボケ日本の落とし子なのではないのか。分かり易く言えば、仕事嫌いの「不労者」だ。




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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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