木枯らしと枯露柿作り

小春日和


 小春日和。この時期、いかにものどかな冬の一日を連想する。どこか哀愁を秘めた「木漏れ日」とはまた違った味わいのある言葉だ。そこに住む人々の年代や人それぞれの地域や環境によって受け止め方は微妙に違うかもしれない。




 今は住宅構造がガラリと変わり、縁側のある家は皆無といっていい。サッシ戸が雨戸に取って代わり、のんびりした縁側空間は合理的ともいえる住宅間取りに飲み込まれて姿を消したのである。年老いたおばあちゃんが小春日和の柔らかい冬の日差しを浴びながら、縁側でのんびりと孫の手袋やマフラーを編む。その脇で玉糸にじゃれて遊ぶ子猫。田舎育ちの私達が子供の頃は、当たり前に目にした光景だ。

おばあちゃん
 この小春日和。今、私達の地域ではみんなが恨めしがっている。以前にもちょっと紹介したことがあるが、山梨県甲府盆地の東部一帯は「松里」という地区を中心に枯露柿の一大産地。知る人ぞ知る全国的な産地なのである。その枯露柿作りには小春日和ではなく、冷たい木枯らしが必要。温かい小春日和は、むしろ大敵なのだ。


枯露柿


 巨峰やピオーネ、甲斐路、甲州・・・。果樹の最終ランナー・葡萄の収穫を終えて農作業を一段落させた農家は、つかの間の息抜きを挟んで11月の声とともに枯露柿作りに取り掛かるのである。農家は仕掛けを作った竹竿を使って柿をもぎ取り、一家総出で皮剥きに精出す。夜なべ仕事になる事だってある。皮剥きした柿は縄や紐で、簾状に吊るし、天日干しする。吊るす前に硫黄薫淨を欠かさない。仕上がりの色付けをよくするためだ。100度ぐらいの熱湯に湯通しする人もいるが、仕上がりの色は硫黄の方が優るのだという。ただ味は湯通しの方がいいのだそうだ。


柿


 ある程度乾いたところで平干ししながら仕上げにかかる。この過程では「筋切り」というこれまた欠かせない工程があって、全体を揉みながら形を整え、柿の脊椎ともいえる筋を切るのである。これにはちょっとしたコツがいる。この筋切りは、揉む作業とともに枯露柿作りの技術的なポイントでもある。これらの工程を経て平干しした柿はやがて「粉」と呼ばれる白い粉状な物を噴出すのだ。そこまで来るとほぼ完成。




 枯露柿作りの最大のポイントは乾燥硫黄薫淨を除けば全てが自然に委ねるのが枯露柿作りの特徴。私は自然が作る、まさに高級菓子ともいえる芸術食品は枯露柿をおいてないと思っている。それだけに自然の成り行きを拠り所にしなければならない。


柿4


 最も肝心なのは天日による乾燥工程だ。暖冬だと乾燥が遅れ、カビが生えてしまう。生柿を乾燥させるためには、一定の寒さと木枯らしのような通風が大切なのだ。今年のようないわゆる暖冬と雨続きがもたらす湿度の多さが大敵。暖冬と小春日和は厳密には意味が違うが、ある意味、紙一重でもある。誰だって寒い冬より暖かい冬の方がいいに決まっている。しかし、死活問題、と言ったら大げさかもしれないが、枯露柿農家にとっては生命線であることは確か。今年は暖冬に加えて甲州百目など原料の柿が不作。枯露柿は間もなく年末年始の贈答用品として市場に出回るが、例年より高値になることは避けられまい。




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No title

今年も美味しい枯呂柿を作る事ができました。
これも毎年ご教授していただける奥様のおかげです。

横浜でも母親が作っているのを見て、枯呂柿や熟み柿作りを
する人が増えて参りました(笑)

柿は昔からその甘さと美味しさで、そのままでも「和菓子」
としても高級品として取り扱われていたと聞きました。

今年は横浜でも暖冬と雨でカビが発生してしまい大変だったようですが、
陽が陰っている日はエアコンの送風口の側に置いたりと
工夫して作っていたようです。

今後もまたご教授の程よろしくお願い致します。

o内さん

 そうですか。横浜でも枯露柿を・・・。枯露柿は微妙な加減を伴う自然の力を借りながら人間が作る果物加工の最高芸術品だと私は思っています。
 いつも拙いブログ、お読み頂き、恐縮です。
 年の瀬に向かいます。風邪などお引きになりませんように・・・。
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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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