「不自由と不幸は違う」

風景


 「私は(目が)不自由だけど、不幸じゃあない。そんなことを思ったことは一度もありません」



 この人は、はっきりとこう言い切った。その顔は極めて明るく、その話し方はあっけらか~んとしていた。甲府市で鍼灸マッサージの治療院を開業している先生。今は59歳のお歳だが、27歳の時、突然襲った目の病で光を失った。失明である。そのいきさつを話してくれたことがある。


11.jpg


 「その頃、私も、どこにでもいるようなサラリーマンでした。仕事、仕事で夢中に毎日を過ごしていました。ところが、ある日を境に目がかすむようになり、医者の診察を受けたのです。医師の診察結果を聞いた時、頭の中が真っ白になりました。『残念だが、あなたの目は光を失う』と言うのです」


光1  


 その病気、症状から治療するすべがないと言うのだ。完全失明を宣告されたのである。この人の、その時の驚き、これから先への不安と言いようのない暗闇への恐怖・・・。心のありようは手に取るように分かるし、察するに余りある。「もし、自分がその立場にいたら・・・」と考えると、同情以上のものを禁じ得なかった。




 この人は強かった。もちろん動転したという。しかし、動転などしている余裕はなかった。時間がない。われに返った時、それまで夢中でやって来た仕事と会社に決別、やはり甲府市内にある県立の盲学校の門を叩いた。これからの人生の活路を鍼灸マッサージの仕事に求めたのだ。少しでも光があるうちに勉強しなければならなかったという。


光


 鍼灸マッサージ治療院を開業して30年を超えた。甲府に住んでいた時分、ギックリ腰による腰痛や四十肩、五十肩で悩んだ時、随分お世話になった。なぜか息が合う。先生というより友達のような真柄である。山梨市の実家に引っ込んでしまったことやムチウチ症(頚椎捻挫)のリハビリで病院通いをしているせいもあって、しばらくご無沙汰気味。甲府に出た折に治療方々、覗いてみた。元気で頑張っていた。




 面白いと言ったら言葉が適当ではないかもしれないが、この人は治療室の隣にある居間のテレビをいつもつけている。もちろんテレビなんか見っこない。音を聞きながら仕事をするのだ。ニュースであれ、バラエティー番組であれ、≪見える≫のだという。




 「私は言葉さえ発してくれれば、みんな見えるんです。歌手であれ、タレントさんであれ、30年ちょっと前までの人だったらまぶたの裏にあります。若い方々は分かりませんが、それでも声を聞けば、私なりに、その表情まで想像できるんです。富士山の積雪やダイヤモンド富士が話題になれば、その光景も、またやがて来るお花見だって、分かりますよ。目の見える人より、想像力は豊かですから、場合によっては普通の人が見えないものまで見えるかもしれませんね・・・」


富士山


 あっけらか~んと、しかも事も無げに言う。「障害を不幸だとは思わない」と言い切る。この先生の方が目の見えるはずの私達よりはるかに周囲が見え人の心も見えているのかも。




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comment

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すごいです

すごいですね・・私たち目の見える人間には想像を絶しますが、その生き方は学ぶべきことが沢山あると感じました。
目が見えても、そういう気持ちで生きていきたいと思います。

No title

こんばんは^^

奥深く考えさせられる記事内容ですね・・・。

障害がある方にとっては、それは変えようのない現実であって、考えようによっては、個性と言えるかもしれません。
障害と長く付き合えば付き合うほど”不幸”は薄れて行く気がします。もしくは、最初から”不幸”と思わない・・・”それが当たり前”と思う方もいらっしゃるかも。

”障害”がなくても、人それぞれ色んな悩みを抱えて生きています。
こんな世の中だから、かなり深刻な悩みの方もたくさんいらっしゃると思います。

でも”不幸”と思っても現状は変わらない。それよりも前向きな気持ちで、日々過ごすことで、道が開かれて行くんだと思います。

どんな人も楽して生きているわけじゃないんですよね。

大切なのは、精神的なバリアフリー状態で、色んな人の立場を理解しあって、皆で生きて行くことだな~と思います^-^



なおさん、ビオラさんへ

 恐れ入ります。私が言外にいいたかったことを、お二人に全部言っていただきました。本当にお二人がおっしゃる通りです。障害とはなんでしょうか。健常とは・・・。障害を、あっけらか~んと考えれば「個性」だし、健常だと思っている私達は本当な意味での健常なのか・・・。目に見えない障害をいっぱい背負っているのではないかと思うのです。それに気付かず、違った目線で障害者を見ているとすれば、まさにトンチンカン。自分は健常、みんな見えていると思っていたら実は・・・。

心の目

はじめまして!
ミゾグチファームの笹本と申します。

心の目ですよね。
いくら目がよくても、心の目で周囲を見ることができなくてはいけませんよね。

そう、自分に言い聞かせてしまいました。
良いお話をありがとうございました。

また、勉強させて頂きに来ます。

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ミゾグチファームの笹本さんへ

 自分は健常者、と思っている自分が実は障害者と言うことがあるような気がいます。言い方を帰れば人間なんてみんな障害者かもしれませんね。完全な人間なんているわけがないし、もし、いたら、これも面白くも可愛くもないのかもしれません。人間はそもそも、さまざまな障害をお互いに補い合って生きているのでしょうね。
 「心の目」とはうまい言葉です。そんな目を持ちたいとは思うのですが、なかなか・・・。
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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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