村のお医者さん

点滴


 ここは隣村(地区)の内科小児科医院。小奇麗な点滴ルームのベットの上で、細い管を伝わってポト、ポトと落ちる点滴を見るともなく見ていた。1m7~80㎝はあろう吊り台にぶら下がるビニール製の袋には300cc近い水溶液が。帯状疱疹の治療薬のほかビタミン剤なども加えてくれているのだろう。水溶薬は黄色く染まっていた。





 「(点滴が)終わるまでには一時間ちょっとかかるよ」


 私の左腕に手際よく点滴をセットした従兄弟の院長は、部屋の照明を落として診察に戻っていった。診察室からは院長と女性の患者さんの会話が聞こえてくる。患者さんの顔は見えないが、その声から70歳半ばの農家のおばさんらしい。




 「薬をちゃんと飲んでいないね。ほら、血圧がこんなに上がっている。薬はちゃんと飲まなきゃあダメだよ。自分の身体だから大切にしなきゃあ~・・・」




 「このところ、稲刈りや何やかんやで忙しかったからねえ・・・」




 「それも分からんじゃあないけど、あなたが倒れちまったら稲刈りどころじゃあなくなるんだよ。〇〇さん家(ち)は・・・」




 「先生のおっしゃる通りだよ。オレもそう思うし、80近い亭主も、そう言ってくれるんです。でも畑仕事に追われる、お父さんを見ていられなくてねえ・・・。やっぱり野良に出ちまうんだよ」




 しばらくして、おばさんは「先生ありがとうございました。いつも感謝しています」と、言葉を残して帰っていった。その後を院長の言葉が追いかける。



 「無理しちゃあダメだよ」。


聴診器



 続いて診察室に入ってきたのは、やはりその声から今度は年配の男性。




 「どう?具合は?・・・。顔色が悪いね。舌を出してごらん」


 「どうも調子が優れなくって・・・」


 「しばらく来なかったね。ちゃんと治療しなきゃあ治るものも治らなくなっちゃうよ・・・」


 「分かっちゃあいるんだけど、野良が忙しくって・・・」


 さっきのおばさんと同じようなことを言う。


血圧計


 「ところで先生、ぼつぼつインフルエンザの予防注射をしてもらわなくちゃあ・・・」




 「予防注射をする前にこの身体を直さなきゃあ・・・。予防注射は体調を整えなきゃあ出来ないんだよ。ところで、お宅の地区の〇〇さんは元気にやっている?」




 「毎日、野良に出て頑張っていますよ。先生のお陰、と言ってましたよ」


 患者さんとの、このやり取りは声だけで姿は見えないが、二人の表情が手に取るように分かる。広いスペースの待合室で長い間待たされ、機械的に診察を受ける都市部の総合病院とは、全く違う雰囲気だ。そこには患者と医者のコミュニケーションが。たわいもない会話の中に患者と医者のスキンシップが伝わってくる。ちゃんと信頼関係が根付いている。




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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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