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赤ひげ先生

 「本当はおかしなことなんですが、この辺りでは農業が繁忙期になると通院患者が際立って減るんです。自分の身体や病より農作業の方を優先させてしまうんですね」

医師


 白衣の開業医は、こんなことを言う。牧丘町。平成の大合併で山梨市に仲間入りした。町から市に変わったとはいえ、地域の姿が変わったわけではない。どこにでもありそうな田舎の町だ。町というより山村と言った方がいい。とり得と言えば、山梨県屈指と言っていい葡萄「巨峰」の里である。標高が高く、昼夜の温度差、つまり寒暖の差が功を奏して色付きのいい、良質の高い巨峰がとれる。





 大きく見れば奥秩父連峰の裾野のような所にある町。白衣の開業医は、おじいさんの代から代々この地で内科小児科医院を開いている。いわば町のお医者さん、赤ひげ先生だ。午前中は医院で通院患者を診察、午後は看護師を伴い地区から地区へと往診する。一方では小中学校の校医も務め、子供たちの健康管理にも一役買っている。埼玉県と県境にある旧村の三富村にも。町から村へ、村から町へと飛び回るのだ。



 往診用に高級車も何台も乗り潰した。山間地が多いため高性能な車でなければ、用をなさないこともある。高級車に乗ることが狙いではない。おじいさんの時代は自転車。8年前に85歳でなくなったお父さんの若い頃は、オートバイだった。一般家庭に満足な自転車すらない時代に「陸王」「メグロ」といったオートバイで颯爽とやってくるお医者さんは戦後間もない地域の子供たちの憧れの的だった。当時の子供たちの見る目、憧れの感覚は今の「ハーレー」など及びもつかなかった。それほど存在感があった。


陸王
陸王


 「柿が赤くなれば医者が青くなる」。実りの秋、つまり、この時季、お医者さんに来る患者さんが減るのは、栄養が豊かになる時季だからではなく、単に仕事に追われるからだ。収穫一つとっても旬に追われる農家の宿命がそこにある。老人の医療費無料化年齢の引き下げが善政視された時代、病院の待合室が「お年寄りのサロン」と揶揄されたことがある。「あの人、今日は姿が見えないわねえ。病気かしら?」。こんな笑い話のような現象とは本質的に違うのだ。




 往診に行けば患者の家族とも話もすればお茶も飲む。世間話もする。家族構成やみんなの健康状態、さらには農業の実態まで知り尽くす。私が帯状疱疹治療のための点滴を済ませて診察室に戻ったら107歳というおばあちゃんが。80歳近い娘さんに付き添われて診察を受けていた。「おばあちゃんねえ・・・」。耳元で大きな声で話す医長さんは孫のよう。

 おばあちゃん

 医療の体制を大きく分けて初期医療だとか高度医療という。さまざまな医療機器を備え、人的にも整備された大学の付属病院や民間・自治体の総合病院が高度医療の中核病院とすれば、地域の開業医は文字通り初期医療の担い手である。その棲み分けがうまく出来れば、医療現場はより機能的になるに違いない。素人でもそう思う。「少しでもいい医療を受けたい」。人間、誰しもそう思ってしまう。ちょっとした風邪や体調不良でも総合病院へ。病院側も経営感覚からか、開業医への振り分けなどコントロールをしないまま抱え込むのだ。




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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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