ハウスの中の転落

病院4


 脊髄の圧迫骨折。知人が救急車で病院に担ぎ込まれた。脚立から落ちて腰を地面に叩きつけられたのが原因である。サクランボのハウスの中で作業中、ちょっとした弾みでバランスを崩して脚立ごとひっくり返った。8段、高さ2・5mぐらいの脚立の中段、やや上からだった。私も経験があるが、脚立は怖い。今の脚立はアルミ製で軽く出来ているので、持ち運びや移動には便利だが、バランスを崩すと、ひっくり返り易いのか欠点。知っているだけでも何人かの人たちが痛い目に遭っている。



 「俺ねえ、注意はしてたんだよ。ビニールハウスの鉄骨の歪みをなくそうと力を入れた、ちょっとした弾みだった。ひどい目に遭っちまったよ。やっぱり脚立は怖いね」



 私より四つ上だから今、72歳。奥さんと一緒に1ha近い果樹園を耕作している。巨峰やピオーネなど大房系のブドウとサクランボが中心。夏から春のブドウ、春から夏のサクランボと、上手に労力配分しているのだ。冬場には枯露柿作りも。いわゆる篤農家。そればかりではなく地域のリーダー的な存在で、私の前任区長としてもご苦労頂いた。その前は山梨市の市議会議長。若い時は市の消防団長も務めた行動派の方である。


病院3


 それが一転、しおらしくなって病院のベッドの上に。転落から救急車までの顛末を話してくれた。それによると、サクランボのビニールハウスは山地にあって一人で作業中だった。脚立ごとひっくり返った時、しばらくは唸ったまま身動き出来なかった。この時季の日暮れは早い。夕刻が迫っていた。「このままではヤバイ」。必死の思いでハウスの外に這い出し、止めておいた軽トラックで、やっとの思いで自宅に戻った。無我夢中だった。



 「救急車を呼んで病院へ・・・」と促す奥さんを「一晩寝れば大丈夫だ」と一喝。泥だらけの身体だけ洗ってもらって床に就いた。救急車が嫌だったという。翌朝。痛みが治まらないばかりか、起き上がりようにも全く身体が動かない。救急車に頼るほかなかった。





 この辺りは、南アルプス市の白根という地域と並んでサクランボの一大産地。サクランボの本場といえば、もちろん山形。その植生上、山梨はわが国の南限。本場の山形に対抗するためには、タイムラグを狙うほかはない。気温差の露地ばかりではなく、ビニールのハウス栽培に力を入れている。大きな木を畑ごと包み、加温して促成栽培をするのである。


サクランボ


 もちろん燃料は重油。このところの重油の値上がりで、ハウス栽培農家は頭が痛い。温度調節は自動制御。たまたま降った雪を尻目にハウスの中は、もう春。間もなく白い花を着け、授粉作業へとリレーする。4月から5月にかけて収穫期を迎えるのだ。真っ赤なサクランボが、本場山形に先駆けて東京や関西などの市場に出回るのである。人は「赤いダイヤ」という。もちろんお値段は・・・。出始めは私たちの口にも入りにくい。



 「治療はどうやら時間がかかりそう。場合によっては、ハウス栽培を諦めて露地栽培に切り替えなきゃあならんかなあ・・。この身体、ミノムシのようにギブスで固めるんです」



 そんな治療が待っている。後を委ねる後継者が居るわけではない。気丈な人だけに泣き言は言わないが、その言葉の裏には限りない、無念さがにじみ出ていた。




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他山の脚立

 貴方も確かトラブルが有りましたね。
後遺症も無く復活とお見受けいたします。
他山の石ならぬ 脚立ですね。

柳居子さんへ

 後遺症は大ありなんです。ムチウチ症(頚椎捻挫)というヤツはダメですねえ。一生のお付き合いかもしれないと、もう覚悟しています。
 一方、植木の剪定中、脚立からの転落は幸い大きな怪我にはなりませんでした。
 怪我というものは、いろいろな意味で思わぬところで遭遇するものかもしれません。はたまた予期する所で起きるものかもしれません。
 よく考えれば、それが運命かもしれません。注意していても外から、例えば、天から降ってくるかもしれませんしね・・・。

No title


我々の年代になると、医者も真剣に対応してくれて居るのかと疑いたくなる時があります、当然経年劣化と云う事も考えられますが

 『今まで元気だった事を大いに喜ばねば』と友人の医者に言われた時、『其の台詞は年とった事を納得させる自分自身に言い聞かせる言葉だ 医者の君に言われると策は無いのか?と技量を疑うよ』

 可愛げの無い患者をいつも演じます。 多分彼は年寄りには同じ事を言っているのだと思います。

 末筆乍 頚椎捻挫症状が少しでも軽くなりますようお祷り申し上げます。

柳居子さんへ

 可愛げのない患者を演じていられるのも、よく考えたら今のうちかもしれません。問答無用、なんでもいいから医者にすがる、そんな時が遅かれ早かれ来ることは確かです。今は人事のように言っているのですが・・・。自分はいつまでも、と気持ちでは思っていても実は足腰が自由に行かなかったり・・。そんなことをとみに感ずる昨今です。
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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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