集中治療室

 冥土への助走路、肉親や親しい仲間達との別れの助走路は、ちょうど一か月続いた。心筋梗塞で倒れた友は、病院のICU(集中治療室)で酸素吸入のパイプをくわえたまま逝った。日川高校時代の同級生。言うまでもなく集中治療室はナースセンターのすぐ脇にあって、患者のベッドを中央に、かなりのスペースをとっている。



 病院に入院して居ながら意識不明に陥ってしまった友。10日くらい経ったころだろうか。面会が出来ないことを覚悟しながらも病院に見舞った。幸い病院側の計らいで集中治療室へ。親しい友、を理由に聖域でもある集中治療室への入室を認めてくれたのである。あとで考えれば病院側は≪結果≫を見越していたのかもしれない。


 「オイ、俺だ。分かるか?頑張れ、頑張れ…」

 「お父さん、○○さんが来てくれましたよ。目を開けて…」


 奥さんの叫びにも似た、そんな呼びかけにも、何の反応も示さなかった。額を撫ぜてやった。微熱のせいか汗ばんでいた。眠っているような顔だった。酸素マスクではなく、酸素吸入のパイプを直接加えた友の姿にいやがうえにも≪ただならぬ事態≫を感じた。集中治療室という独特の環境がそれに拍車をかけるのである。




 無表情。しかし、その奥底で死と向き合い、必死で戦っていると思うと、身を切られる思いがした。辛かった。「元来、ご主人は強い男。必ず意識が戻りますよ」。今にも崩れそうな奥さんを、そう言って励ましてはみたものの…。正直言って不吉の予感が脳裏を走ったことも確か。普段、底抜けに明るく、あっけらか~んとしている奥さんだけに痛々しい。




 虫が知らせる、という言葉がある。私はこのブログで、なぜかこの男のことを二度ほど続けて書いた。一度目が「海釣りと一宿一飯の恩」、次が「釣りキチの季節」。意識不明に陥って病魔と必死に戦っていることなど知る由もなかった。彼は普段、私のブログをよく読んでくれていて、いろいろな反応を示してくれる≪読者≫の一人だった。




 内心、どんな反応を示すか楽しみでもあった。「俺のこと、書いたね」。そんな友の言葉を待っていた。電話がかかって来た。彼のケイタイからだった。ところが、電話の向こうから飛び込んで来たのは息子さんの声。「実は…」。そこで初めて心筋梗塞で倒れたことを知った。まさに寝耳に水。「今は集中治療室で…」と付け加えた息子さんの言葉は、言外にただならぬ事態に置かれていることを伝えるのに十分だった。



 親しい仲間、とりわけ同い年の同級生を亡くすことは、ある意味、年老いた親を亡くすことより辛く切ない。そんなことを葬儀が終わった後の初七日法要のお悔やみの言葉で申し上げた。同席した仲間達も頷いていた。




 毎朝配達される新聞の片隅に「おくやみ」という訃報の欄がある。この欄は極めて閲読率が高いのだという。ご不幸の義理を欠かしてはいけないという思いばかりではない。その記事の中にある年齢を見て、多くが自分をオーバーラップするのだそうだ。つまり自分に置き換えて≪人の最期≫を見るのである。今年はやけに暑い。みんなが健康には注意したいものだ。




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やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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