赤富士と紅富士

 「♪頭を雲の上に出し 四方のお山を見渡して 雷様を下に聞く 富士は日本一の山」
ご存じ、唱歌「富士山」の一節である。

富士山


 むろん頻繁ではないが、外国からの親戚や知人が来ると必ず、富士山にお連れする。ホームステイでお預かりする中国などの学生さんも同じだ。登山など望むべくもないから、五合目までだが、その度にお客さんのみならず、富士山の大きさと≪日本一≫を実感する。





 「♪木曾の御嶽山 ・・・・・夏でも寒いよ・・・」。御嶽山ですら、と言ったら叱られるかもしれないが、標高3,067mの御嶽山が夏でも寒いのだから、日本一の富士山は言わずもがな。昨年夏も山梨県人権擁護委員連合会の人権啓発イベントで登ったが、寒いこと寒いこと。たまたま天候が乱れたので、みんなで震え上がった。「富士山」の歌にあるように雲海は眼下に。雨は上からではなく下から吹き上げるように降って来るのだ。




 これも当たり前。夏の富士山は肌をむき出しにする。車で五合目まで行けば、すぐそこに3,776mの山頂が見え、そこには木一本、草一本生えていない。あるのは崩れた黒色の溶岩と赤茶けた荒目の土。それも溶岩土で、カサカサにあれた山肌だけ。


富士山2


 人によっては「富士山は登る山ではなく、見る山」という。まさに言いえて妙。素肌を見ずに、遠くから曲線美を楽しみ、下界で妄想に耽る方がいい。荒れた山肌や、その真っただ中に立たされたら、ロマンにも絵にも字にもなるまい。

 


 写真家や絵師、文人はいつの世でも、この山を題材にし、その表現にあくなき挑戦を続けて来た。浮世絵師・葛飾北斎の「富岳三十八景」もその一つだし、横山大観も好んで富士を描いた。山岳写真家の白旗史郎はその師・岡田紅陽と共に厳冬の富士を狙った。松本清張は、その裾野に広がる青木が原樹海を小説「波の塔」で有名にし、皮肉にも自殺の名所に作り上げた。「富士には月見草がよく似合う」と書いたのは太宰治だ。


富岳三十八景_convert_20120112174054



 時代をずっと遡って万葉の時代。歌人も好んで富士を詠んだ。ろくに勉強しなかった高校時代だが、何故か一つだけこの歌を覚えている。「田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に雪は降りける」。山部宿祢赤人の歌と先生は教えた。若い頃、一人娘を連れて静岡の伊豆に海水浴に行き、連絡船で田子の浦から見た富士が瞼に焼き付いている。




 万葉集全二十巻には、この山部の歌のほか十の歌が詠まれているのだそうだ。調べてみたら三巻と十一巻、十四巻にあった。古代から人々は、この山を崇め、畏れ、文化人は、それぞれの視点で富士山を見つめ、表現し続けた。この営みはこれからも永遠に続くのだろう。




 久しぶりに早起きして窓越しに見た富士は朝日に真っ赤に映えていた。その日の新年会の酒席で「今朝の『赤富士』は見事だったよ」と言ったら笑われた。この男は日川高校時代の同級生で、私のパソコンの師匠。「萩さん」というのだが、勉強家で実は万葉集11首も彼から。彼によると、赤富士は夏の富士。今の時季、冬の冠雪した富士が朝日に赤く染まった富士は「紅富士」という。正月早々、ひょんなことから勉強させていただいた。




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No title

世界文化遺産にするというお話は、いくらかでも進展しているのでしょうか? 地元メディア辺りが主導で、文化遺産登録の国民総署名運動など始めたら、如何ですか。国民の何割かの支持があれば登録の可能性が見えてくるのではと考えます。 署名簿が廻ってきたら署名しますよ。

進んでいます

 富士山の世界遺産登録への準備は着実に進んでいます。作業は山梨、静岡両県の行政主導です。もちろん、民間の有識者も交えてのことです。来年の今頃には実現する、とみています。
 両県が目指している世界遺産への登録は、文化遺産のジャンルです。当初は自然遺産としての登録を目指したのですが、失敗。理由は心無い登山客がもたらしたゴミ、つまり汚れと言われています。表には出ていませんが、北富士、東富士の自衛隊(米軍)の演習場もネックになったはずです。
 柳居子さんがおっしゃる「署名評価」、面白いですね。ただ、この世界遺産登録は、ご存知のようにユネスコ(国際連合教育科学文化機構)の指定。実際には、その胸三寸にあるのです。推進当局も、その腹の内を探りながらの準備であり、作業であると思います。
 

横浜からは黒富士が綺麗

「富士は日本一の山」、日本の象徴ですね。トイレの浄化槽建設も進み、世界遺産登録も近いように思われます。北斎、広重などが見た富士山と同じ山が何時までも見られるように祈ります。横浜からの黒富士(夕刻)も綺麗です。

横浜からの富士

 広重にせよ、北斎にせよ、多くの浮世絵師の絵は、多くは神奈川や静岡から。多くの人が、そこからの富士を「表富士」といい、山梨県側からの富士を「裏富士」といいます。
 私たち山梨県人は、これには少なからず、抵抗感を覚えるのですが、それもある意味、うなづけるのです。人は古くから天下の街道、東海道を往来するのですから、当たり前と言えば当たり前ですね。
 ただ、この山は山梨県と静岡県の両方にまたがって、どっか、と座っているのです。表も裏もありません。
 見る角度、四季折々、その雄姿が楽しめる日本一の富士山であることは、間違いありません。日本人の心のシンボルであることも…。
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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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