時代の皮肉

 時代は繰り返されるのだろうか。それとも結果的に皮肉になってしまったのだろうか。文藝春秋創刊90周年記念号と銘打った最新号が特集したエッセイ欄で、宇野千代の「もしあのとき」と並んで掲載されていた松下幸之助のエッセイ。宇野の「もしもあのとき」が「昭和五十二年十一月号」なら、こちらは「昭和四十一年六月号」とある。


松下幸之助2



 松下は「デマ」と題して1ページ半ほどのスペースで書いている。


 「(前略)最近の我が国では、たとえば政府の高官や一部の人のちょっとした言動によって、株価が上下することがしばしばあるようだ」




 つい先頃の総選挙で大勝、次期政権を再び担うことになった自民党の安倍晋三総裁は日銀法改正でのデフレ脱却を訴え、結果的に株価を上げ、円安を導いた。その発言から10日あまり、安倍氏は国会で首班指名を受けて内閣総理大臣のポストに就くのだが、松下がエッセイで書いた「ちょっとした言動によって株価が上下した」ことは46年もたった今も変わりはない。




 松下は46年前、こんなことも言っている。


 「これは何処の国においても多少はあるようで、それも妙味かもしれない。しかし、政情が安定し、経済がしっかりとした自立性を持った国では、こうした傾向は比較的少ないのではなかろうか」


松下幸之助



 衆院選で、政権を担う自民・公明両党が安定多数を確保したとはいえ、参院は与野党の勢力が逆転。いわゆる“ねじれ国会”だ。我が国は決して「政情が安定」という状況にはない。松下がこのエッセイを書いた昭和41年当時は、自民党が単独政権を誇っていた時代。政権構造的には、今と違った。




 松下のエッセイ「デマ」は、何処からか流布された「松下危篤」のデマ。駆けつけて来た新聞記者とのやりとりをユーモラスに書きながら「世間というものは面白いものだ。好むと好まざるとに関わらず、この世の中ではデマやウワサというものがある程度の力を持っている」と。デマは松下電器の株価の操作を狙ったものであることは言うまでもない。




 たまたま文藝春秋のエッセイ欄で“顔を合わせた”宇野と松下。この二人には、共通した事業家としての顔があった。言うまでもなく松下は我が国を代表する大実業家。一方、宇野は、もちろん小説家であり、随筆家だが、着物デザイナーという事業家の側面をも持っていたのである。


宇野千代



 しかし、この二人の“生き様”は月とスッポンほど違う。小さな町工場から身を起こし、「世界の松下」を築き上げた松下。努力の人であり、やがては政治や経済にアイデンティテーを示した。彼が起こした松下政経塾は、政治の世界に一歩一歩根を張り、大きなインパクトを与えているのだ。片や、宇野は自由奔放に生き、普通の人たちから見れば破天荒な生き様をさらした。でも二人に共通しているのは、人生を真正面から生き、それぞれの哲学を世に示したことだろう。中でも私は奔放で、あの破天荒な宇野の生き様に憧れる。生半可ではない生き様が好きだ。




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Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
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