万歳の明暗

 こんな言い方をしたら叱られるかも知れないが、師走の「政治ショー」は終わった。街角はむろん、テレビを囲んだ茶の間を巻き込んで日本中が大騒ぎした総選挙が幕を閉じた。でも、もう一騒ぎしないと年は越せない。3年3ヶ月ぶりに政権を奪還した自民党が安倍首相のもとで内閣を発足させ、名実ともに新政権を樹立して一区切りだ。




 選挙開票の真っただ中で、「万歳」を叫び、その余韻もさめやらないまま登院の準備をする先生達。その一方で永田町の議員会館事務所を引き払う落選組。師走の寒空の下で繰り広げられた政治ショーの舞台裏は悲喜こもごも。「猿は木から落ちても猿だが、政治家は落ちたら只の人」。ある老政治家が残した有名な言葉だが、まさにその通り。自ら選んだ道とはいえ、心中はお察しする。


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 「日本国憲法第7条により衆議院を解散する」


 衆院議長のその一言を合図に一斉に起立して「万歳」を叫んだ480人の先生達。あれから1ヶ月。当たり前の事ながら明暗を分けた。特筆すべきは8人もの閣僚の落選。内閣の半分が討ち死にしたのだから、前代未聞の出来事である。市井の私たち、ちょい悪“雀”どもが「大臣も地に落ちたものだ」と罵っても反論すら出来まい。



 「お父さん、国会という所はおかしな所ね。無理矢理、解散されたのに、どうして万歳、万歳と嬉しそうに叫ぶの?一人一人の国会議員の先生達は、本当は解散などして欲しくはないんでしょう?」



 茶の間で、国会解散を伝えるニュースを見ていた女房が独り言のように言った。



 「あの万歳には“ふてくされ”もあるようにみえるよなあ~。それはともかく、解散国会の万歳には諸説あって、来るべき選挙戦に勝ち抜いて再び、この本会議場に戻ろう、つまりそんな願いを込めての気勢というのが、どうやら一般的らしい。いつからかは定かではないが、歴史は古く旧憲法下の帝国議会から続いている衆議院解散時の伝統だそうだ」



 「へえ~、でもピ~ンと来ないわね…」



 日本人は「万歳」が大好き。忘年会や新年会の座敷でも最後の締めは万歳。間もなく迎える元日の拝賀式でも「この一年、皆様にとって…」と、やっぱり万歳。結婚式や竣工式でもそうだ。「三本締め」とか「一本締め」という“締め方”もあるが、やっぱり万歳の方が…。「一本締め」は「関東の…」と、前置きするくらいだから関東地方特有かも知れない。


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 「万歳」は、お隣の中国や韓国、北朝鮮でも。その国の新聞報道を伝えるテレビで、ちょいちょいお目に掛かる。元はといえば“本家”はそちら。中国などを旅した時、街角の看板でしばしばお目に掛かる。「万歳」は中国からの“輸入品”なのだ。

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 衆院選開票日の夜、当選を伝えられた先生達は、支持者達の「万歳」の嵐の中で平身低頭。「国家、国民のために…」、「党や国の有り様を変え、皆さんの生活を…」と、まるで天下を取ったように大見得を切る。「本当にそんなことが出来るの?」と、茶の間で冷ややかに観ている“観衆”を尻目に選挙戦を熱く戦った支持者達は「万歳」に沸いた。その一方の陣営は…。




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本末転倒

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 テレビを点ければ、やれ新党がどうの、第三極がどうの、とかしましい。


 「お父さん、政治ってどうなってるの?わたしなんかにや~さっぱり分からないわよ。銀行や生保の合併と同じね。お父さんは生い立ちや、それぞれの考え、順序だってみんな言える?」


 女房は藪から棒に言った。


 「オレに分かるわけ、ねえじゃねえか」


 女房のみならず、私だって「どうなってるの?」と言いたいくらいだ。原発、TPP、増税…。政府・与党を除けば総じて反対。原発に到っては経済政策との絡みや国民の電気料という名の経済負担などそっちのけで、反対、反対。その裏にはなんとなく作られたオバケのようなポピュリズムに乗って「勝たんかな」が、見え見え。堂々と将来に向けた原発政策を掲げ、論ずることが怖い? 


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 しかし、訳も分からない“ポピリュズム”に陥ったら…。選挙に勝つため?の各党の思惑、戦略だから百歩譲って、これもいい。政治家の離合集散。これも“先生達”の保身の術だから気持ちも分からないでもない。




 でも、ちょっと待てよ。「政治主導」、「官僚支配の打倒」、「霞ヶ関との戦い」。政治家先生が党派を超えて口をそろえていらっしゃる、この言葉。ちょっとおかしくありませんか。政府を担っている民主党でさえ同じことを言う。




 財務省、外務省、国土交通省、厚生労働省…。いわゆる霞ヶ関は今も昔も内閣・行政府の事務局、事務部隊のはず。「官僚支配の打倒」も「霞ヶ関との戦い」も、全くの本末転倒。国権の最高機関にいらっしゃる衆参両院の先生方が言う言葉ではない。主客転倒ともいう。


国会議事堂


 主の言うことを聞かない使用人、部下は一般にはあり得ない。内閣総理大臣は行政府の長。その行政府、つまり内閣の仕事を分担する大臣は、それぞれの担当分野の長なのだ。




 「政治主導」。当たり前の事。その当たり前の歯車がどこで狂ったのか。「政治主導」という言葉は、よく考えたら民主党政権が言い出した新しい言葉。政権交代した民主党は「よう~し、オレ達が霞ヶ関を変えてやる」と、すごんで見せた。




 ところが、おっとどっこい。「変えれるものなら変えてみろよ」。霞ヶ関からそんな声が聞こえてきそう。それもそのはず。3年数ヶ月の民主党政権中、総理大臣は3人目。霞ヶ関の現場を預かる大臣は「改造」という“洗礼”を受けるから、その任期はもっと短い。「私は素人です」。何処かの大臣が言ってひんしゅくを買った。




 この大臣、正直ですよ。1年足らずで、内政はおろか外交、果ては防衛まで理解し得たらスーパーマン。政治家先生が「政治主導、政治主導」とハナから粋がること自体がどだい無理。そのために「事務局」の霞ヶ関があるのであって、官僚のしっかりしたレクチャーを受け、それを基に判断を下すのがトップたる大臣の取るべき姿。




 分からないのに「オレがやるからいい」と言ったら、部下は「それならやってみろよ」と言うに決まっている。巨大なシンクタンク・霞ヶ関をしっかりと動かさなかったらこれこそ税金の無駄遣いだ。官僚は、“一夜限り”の政治家と違ってキャリアですものね。




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一番を目指さなくてどうする

事業仕分け3


 「一番でなければいけないんですか?」。この言葉、このフレーズはテレビを見ていた国民にインパクトを与えた。政府がやって見せた事業仕分けで、その筋の官僚を相手にズバリ切り込んむ事業仕分け人の民主党のご婦人が天下り官僚に浴びせた言葉である。理屈抜きの、その痛快な切り込みに拍手を送った人もあれば「なんとご粗末なことを・・・」と、いぶかしげに受け止めた人も少なくないはずだ。




 このフレーズを生んだ事業仕分けという名の≪ショー≫は科学技術の開発関連。さすかに科学者は黙っていなかった。すかさず記者会見して真っ向から反論した。そこに並んだ科学者は当時、ノーベル化学賞を受賞したばかりの学者さん達だから、これまたインパクトは十分。結果的にはどうやらこちらに軍配が。


事業仕分け2


 日本人は何故か東大生や東大出身者を「頭のいい人」の代表のように決め込み、憧れを抱く一方で、それへの反発を心のどこかに隠している。そんな東大出身者が主流を占める官僚を心のどこかで快く思っていないのだ。人々の東大コンプレックス、官僚コンプレックスの表れなのだろうか。政治家は「政治主導」の名の元に力でその官僚を押さえつける。




 判官びいき。そんな人たちが事業仕分けという≪法廷の被告席≫に座っているのだから≪傍聴席≫の国民は、理屈なんかどっちでもいい。厳しく切り込めば切り込むほど痛快に思い、拍手もしたくなるというもの。もちろん、事業仕分けは事業の中身や予算の使われ方を赤裸々にし、ムダを省くのが狙い。そこに政府のパフォーマンスが見え見えとしても「無駄の排除」に反論の余地はない。テレビでやって見せる事業仕分けは一部分なのだが、私達は全てに事業仕分けのメスを入れてくれているような錯覚に陥って拍手してしまう。だからこのオバサマだって勢いヒロインにも。参院選の結果も見えようというもの。


事業仕分け


 でも「二番ではいけないいんですか?」の切り込みには、私のような凡人でも、「このオバサン何言ってるの」と首を傾げたくなる。誰でもが分かっているように日本は国土が狭く、資源もない国。それをカバーして生きるには一般的な技術もさることながら、特に科学技術の開発に力を入れなければならないことは絶対条件。その場合、一番を目指さない科学技術の開発なんてあるのだろうか。一番を目指しながらも結果的に二番だったり、三番だったりするのだ。逆に言えば一番を目指さなければ二番も三番もない。





 事業仕分け人のこのオバサンの口をついて出たこの言葉。実は日本のあっちこっちに顕在化している。例えば、小中学校の運動会。100m競争など全ての競技に一番、二番の順位をつけない学校が増えているのだそうだ。「子どもたちを差別してはいけない」という≪先進的な先生≫の考えが優先された末の現象だという。


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 そんな風潮の中で育った人たちから見れば事業仕分け人先生が口にした言葉はむしろ正論かも。しかし、子供達から、人間から競争意識をもぎ取ったら・・・。むしろこの方が怖い。学校という社会を離れれば大なり小なり競争は付きまとう。人間は本来、動植物と同じように生存競争の中に生かされているのだ。




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本音と建前

恩賜林


 「私だったらこの広大な山林原野を今、国・政府が困っている基地に貸しますね。もちろん、条件付。基地の誘致で、過疎化する麓の地域を再生するきっかけを作るんです。沖縄の普天間基地移設問題で今、政治が揺れています。反対運動が前面に出ていますが、そこには必ず地元住民の本音と建前があるはず。世論として表に出ているのは建前と、もっともらしいマスコミや文化人といわれる人達の声。本音は基地がなくなっては困る人たちも多いし、徳之島(鹿児島)のように本当は基地を持って来たい人達もいるんですよ・・・」


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 ここは山梨県と埼玉県の県境にまたがる奥秩父山塊の山梨県側の一角。こんな話をしたのはこの一帯の山林を保護する「金峰前山恩賜県有財産保護組合」の元組合長。年恰好は80歳前後。同組合はこの一帯の山麓にある山梨市と甲府市の一部地域で構成されている、れっきとした特別地方自治体である。先頃、今年度第一回の組合議会が招集され、この日は組合執行部と議会合同の現地視察が行なわれたのだ。



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 視察に加わったのは今年度、新たに選出された議員と私のような監査委員など組合役員に任命された人達の、いわば新人研修。執行部と議会側、合わせて約20人が揃いの法被姿で参加。1,400haにおよぶ持ち山をいくつかのポイントから一日がかりで視察した。「私だったらこの山林原野を・・・・基地に貸しますね」と、本音とも冗談ともつかない口っぷりで話した元組合長は、この日の案内役。広大な山の隅々まで熟知しているようで、つづら折れの凸凹道を車で走り、その要所要所で歴史的な経緯も含めて説明した。




 通称「恩賜林組合」。都会にお住まいの方なら聞いたこともなければ、縁もゆかりもないだろうが、明治の時代、天皇から御下賜された県有地の保護団体。山の植林や下刈りなど、その保護、保全と管理をしているのである。山梨県は県土の約75%が山林原野。その多くが、この恩賜林、つまり県有地だから、その総面積は概ね見当がつくだろう。山梨県には64の恩賜林組合があって、それぞれのテリトリーで保護・管理の活動をしているのだ。


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 その中で最も大きなのが富士吉田市ほか2カ村(山中湖村、忍野村)恩賜林組合。ここは特異な組合で、管理区域内に自衛隊の「北富士演習場」を抱えている。日米の地位協定に基づき米軍の演習にも使わせている。いわゆる基地を抱えているのである。今は平静を保っているものの、かつては基地を巡る賛否が県政を揺るがし、「県政の分水嶺」とも言われた。その一方では莫大なお金が恩賜林組合や地元市村に落ちているのだ。事実、「防音」の名で小中学校の校舎は整備され、さまざまの公共施設や周辺道路も立派になった。




 基地がない世の中の方がいいに決まっている。しかし、国や地域が抱える現実を無視しているばかりにもいくまい。「私なら・・・」。恩賜林組合元組合長の冗談とも本音ともつかない言葉の裏には、いくばくかのリスクを背負っても最大公約数の「地方、地域の利益」を考えなければならない「現実」がある。「平和ボケ」したり、便利な生活を享受出来る都会にお住まいの方なら、この本音は分かるまい。どの道どこかに設けなければならない基地の誘致で、財政や雇用、関連ビジネスの創出を考えようとする本当の気持ちなのだ。




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神輿と梯子

神輿



 似て非なるもの。その逆もある。神輿梯子。全く違うものだが、なぜか≪近く≫にあるのだ。言うまでもなく神輿は祭りの象徴。法被にねじりハチマキの若い衆が担ぎ、勢いよく街を練り歩く。一方、梯子は植木の剪定など高い所への梯(かけはし)である。ここまでだったら全く別の存在。




 ところがこの二つ。政治の世界では案外すぐ近くにあるのだ。例えば、選挙で候補者を立て、その人を神輿に例えて支持者が担ぐ。むろん、神輿に乗った人が主役であることは言うまでもない。これも例えの話だが、神輿に祭り上げた人から≪手を引く≫ことを「梯子をはずす」という。高い所に持ち上げられた人は梯子をはずされたら下に降りられないのは当たり前。それどころか、なんともさまにならない。



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 このところ毎朝、新聞を開き、またテレビを点ければ沖縄普天間基地移設問題で苦境にあえぐ鳩山総理が。8ヵ月ちょっと前、総選挙で勝った民主党の≪神輿≫に乗っかって颯爽とわが国のトップリーダーとして登場した人だ。「みんなで総理を支える」。内閣や与党・民主党はそれぞれ個々の温度差を我慢して、口を揃えるのだが、さて、それがいつまでもつのか。2ヵ月後に参議院選挙が控えているから始末が悪い。みんながその選挙を意識するのは当然。鳩山さんは、梯子をはずされかねない立場にいる。





 そんな内閣と与党・民主党を糾弾する野党・自民党の谷垣総裁だって同じ。総選挙で大敗した自民党の再生の旗頭として神輿に乗った谷垣さん。離党者が相次ぐばかりか、そのリーダーシップに党内の不満はくすぶり続けているのだ。これまた神輿に架けた梯子は心もとない。この世界には信頼もなければ、信用という言葉もないようにも見える。





 その政治の世界に神輿と梯子は付き物。しかし、その神輿は古今東西、勢いを持続した試しはないし、その節目節目で梯子が登場するのである。梯子は架けるばかりでなく、いとも簡単にはずされるのだ。架けるのも、はずすのも政治家達のご都合主義以外の何者でもない。国民のためでもなければ、ましてや天下国家を考えたものでもない。煎じ詰めれば「自分のため」。


太鼓2           太鼓


 毎年5月5日、山梨市の私達の地域では氏神さん・大石神社の春の例大祭が行なわれる。この日は「こどもの日」でもあって旧村の4地区から子供神輿が繰り出す。「祭」を染め抜いた法被姿の小学生が色とりどりの紙の花で化粧された≪樽神輿≫を担ぐ。こちらの神輿は政治の世界のそれと違って、いたって可愛らしく、愛嬌がある。地域の人たちは巡回して来る神輿を祝儀袋片手に待ち受けるのだ。「がんばれ」。心から声援を贈る。


子供たち



 ところが主役の子供の数は年々減る一方。少子化は農村部の片田舎ほど顕著で、その波は都市部へと広がっていく。この子供神輿一つとっても≪臨界点≫に達しようとしているのだ。地区ではやはり子供たちが主役の道祖神祭り(小正月行事)も含めて応援体制を敷いた。子供たちの思い出に繋がる行事を守ってやろう。地域の大人たちは≪梯子ははずさない≫と、言外に申し合わせている。育成会への助成もしている。




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プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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