月下美人と女房

月下美人1


 「お母さんは間違いなく長生きするよなあ・・・」

 いつものように居間で晩酌をしながら、夕餉の支度をする女房をからかうように言ったら、キョトンとしながらも、からかわれたことに腹を立てたのか、ちょっぴりオカンムリ。


 「お父さん、急に何をおっしゃるんですか。人をバカにするようなことを言わないでくださいよ」



 「そうだろう、美人薄命と言う言葉、知ってるか?」




 そこまで言ったら女房は「私はブスと言うことですか」とう代わりに「そうですか。咲いたんですね」と言いながら、飛んで来て居間のサッシ戸を開けた。わが女房、まんざらの鈍感でもない。居間の外側に置いてある月下美人が咲いたことを直感したのだ。




月下美人2   月下美人3



 私は晩酌の途中でかかってきた仲間からの電話に立った時から、開花に気付いてワクワクしていた。女房を驚かせてやろうと、我が家にとってはこの大ニュースを温めていたのだ。女房だって開花がいつか、いつか、と思っていた一人なのである。サッシ戸を開けた途端、なんともいえないあのかぐわしい香りが。四つもいっぺんに咲いたのだ。




 その匂い、なんと表現していいか分からない。なんともソフトで、気品がある。シャネルなど女性たちが追い求める、世界の香水ブランドだってこの匂いを作り出すことは出来まい。強くもなく、そうかといって弱くもなく、あたり一面に芳香を漂わせるのである。匂いの発信元がどこか分からないほど穏やかなのだ。


月下美人6


 かぐわしいのは、匂いだけでなく、その姿、容姿だ。15~6㎝はあろう花の大輪は、真っ白というか白濁色。写真でご覧頂くように花の中央にはおしべ、めしべまで、くっきりと見て取れる。花全体が醸し出す気品は半端ではない。春夏秋冬、花はあまた咲くが、この花の気品には恐らく、勝つものはないだろう。




 初春にいただくシンビジュームやカトレア、コチョウランも確かに気品を備えた花だが、その気品、品格は月下美人には及ばない。この花を何よりも神秘的にしているのは、一夜限りの花ということだろう。「美人薄命」などといわれる所以もそこにあるのだが、いかにもドラマチックだ。お隣甲州市の友人夫婦にも電話で知らせ、夜中まで美人を愛でた。


月下美人5


 そもそも比較しては≪美人≫に叱られるかもしれないが、「百日紅」と書く「さるすべり」のように長期間咲いている花とは対照的。月見草は、昼間は花を閉じるが、次の夜にはまた開く。しかし、この花は、全くの一夜限り。誰が名づけたか月下美人、転じて美人薄命とはよく言ったものだ。


月下美人4


 月下美人はメキシコが原産で、サボテン科の植物。2年ほど前、親しい仲間からもらったものだが、これだけは大事にしたいと女房にも言い聞かせている。いわゆるサボテンの一種だから、あまり水はいらないのだろう。だんだん、幹も太くなり、背丈も150cmぐらいになった。鉢と土を変えてやらねばと思っている。ところが無粋な人間とは困ったもの。その要領を知らないのだ。どなたかご教示を頂ければ有り難いのですが・・・。




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暑中見舞いの文化

スイカ


 一葉の暑中見舞いが舞い込んだ。「暑中お見舞い申し上げます」。なんの変わりばえのしない文面だが、「明けましておめでとうございます」の年賀状と同じように、なぜかその季節を感じさせる不思議な魔力を持っている。暑~い夏の到来をいやがうえにも髣髴とさせ、その反対に一抹の涼をも運んでくれる。年賀状からもう半年以上。一方で月日の経つのが早いことを実感させられたりもする。



風鈴


 暑中見舞いの送り主は、ロータリークラブの仲間で、ガス機器の販売会社を手広く営むオーナー会社の社長さん。「平素は格別のご愛顧を賜り・・・」の、これまたお馴染みの文面からしても、商いを主眼にしたご挨拶状に違いない。




 「お父さん、早速、お返事のご挨拶をしてくださいよね。それにしても暑中見舞い、珍しくなりましたねえ」


蚊取り線香  


 女房がいみじくも言うように、まったく暑中見舞いの習慣が日本人の日常から音を立てて崩れ、忘れ去られようとさえしている。商いというか、商取引上の儀礼はともかく、一般での暑中見舞い状のやり取りは、本当に少なくなった。暑中見舞いをいかにも珍しそうに言う女房だから、それを書いている姿なんか見たこともないし、ましてや娘にいたっては、その存在すら知っていないだろう。そういう自分だってもう何年も書いたことがない。何年どころか、何十年かもしれない。



花火


 暑中見舞いは、季節的には寒中見舞いと対極にある。一年中で最も暑い時期、寒い時期に親しい仲間、親戚や知人の健康を気遣う慣わしだ。その期間は暑中見舞いの場合、梅雨明けから立秋、一方、寒中見舞い寒の入りから立春の前の日、つまり節分までの間に出すものとされている。




 年賀状の後に来る寒中見舞いは、二十四節気で一定しているが、暑中見舞いは「梅雨明けから」とされているので、その期間は一定していない。今年の立秋は8月7日。つまり最後は固定しているが、梅雨明けはその地方によって流動的だから、梅雨が明けるのが遅れれば、その期間は勢い狭まることになる。暑中見舞いの後には残暑見舞いがある。



うちわ


 どうして暑中見舞いや寒中見舞いの習慣が希薄になっていくのだろうか。人々の日常がせわしくなったこともさることながら、ケイタイやパソコンの普及が、それに拍車をかけたことは間違いない。いわゆるメールに依存し、人々が手紙そのものを書かなくなった。単なる儀礼のような暑中見舞いや寒中見舞いは、簡単に忘れられるだろうし、今はまだまだ存在感がある年賀状だって、やがてはその運命をたどるのだろう。




 そして絵文字。ケイタイやパソコン、インターネット上で絵文字はアメーバーのように広がっている。絵文字も文字の文化として認知されるのかも。「浮気、不倫も文化」と、しゃあしゃあと言う芸能人も現れるくらいだ。俺だって内心そう思いたいが・・・。とにかく今は、何でもありだ。暑中見舞いのように忘れられる文化もあれば、新たに登場する文化もある。ジェネレーションギャップなどと嘆いてみたところで、止められるもんじゃない。





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入道雲と百日紅

入道雲  


 山梨県、とりわけ甲府盆地は周囲を山に囲まれている。だから「盆地」と言うのだろうが、富士山や南アルプスの前衛の山々の上に入道雲が。梅雨が明けて、それまでの空がウソだったように、でっかい青空が広がり、その空を蹂躙するように発生する入道雲は迫力がある。入道雲とはよく言ったものだ。ぼこぼこした坊主頭を連想するし、食いしん坊の子供なら綿菓子を思い起こすかもしれない。



入道雲2

 入道雲は夏の象徴だ。その夏の空の下で、今年も百日紅の花が咲き始めた。すぐ近くではキョウチクトーの花も。この二つは少なくとも夏の花だ。我が家の植え込みでは毎年、梅雨が明けると咲き始める。いずれも淡いピンクというか、紅い花である。白いくちなしや梅雨の時期によくに合う紫陽花とバトンタッチするように咲き出す。今年は開花が早い。

百日紅  

 百日紅は観ようによっては不思議な花。太い幹や枝に新しく伸びる枝の先っぽに花をつけるのだ。いってみれば勢いのいい若い穂先に幾つもの花を凝りのようにつけるのである。誰が名づけたかは知らないが「百日紅」と書いて「さるすべり」と読ませるのだ。


百日紅2

 幹はその名の通り、サルも滑りそうなツルツルした肌をしていて、長い間、花を咲かせる。百日とはいかないまでも、2ヶ月、60日以上は入れ替わり、立ち替わり咲いている。梅雨が終わって7月の残りと8月いっぱい、そして9月の中ごろまで花を付けているのだ。紅い一つ一つの花は時期が来れば、朽ちてひっそりと落ち、そのあとに別の花びらを付けるから、花全体ははじめから終わりまで色あせない。


百日紅3

 百日紅もそうだが、自然界には百とか八がつくものが少なくない。百日草もそうだし、あの天狗がうちわのように使うヤツデ(八つ手)もそうだ。山梨県と長野県の境にある八ヶ岳連邦、また神話などに出てくる、やおよろずの神もそうだ。いずれも単に百とか八、八百万ではない。




 ご存知のように、この数字の意味するところは「多い」「沢山の」という意味合いがあるのだ。例えば八ヶ岳だって、単に八つの峰から成り立っているわけではないし、七里ケ岩とか七里ケ浜というのも単に七里というわけではなく「長い」ことを形容した呼称なのである。九十九里浜も同じだろう。



入道雲3

 我が家の百日紅の根っこにあるヤツデ(八つ手)は、既に花を落としたが、この花のつけ方が珍しい。ご存じない方がおいでかもしれないので、あえて触れさせて頂くが、6月頃、天狗のうちわのような葉っぱの上に垂直に白い棒状の花をつけるのである。花というにはふさわしくないような奇妙な花なのだ。




 百日紅と共に紅い花をつけるキヨウチクトーは、案外ポピュラーな花で、ドライブ中、高速道路の脇などでよく見かける。逞しく幹が何本も出るので、自動車の遮音に役立つのだろう。いずれにしても、この二つの花が咲くと、本格的な夏の到来。山梨でも間もなくアブラゼミガ鳴き始め、8月の半ば、終戦記念日の頃になると、あの粘りつくようなミンミンゼミが鳴く。暑い夏。あまりご馳走ではないが、それが夏なのだろう。

 


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花火の臨場感

隅田川花火大会1


 「わあ~、綺麗・・・」
大人も子供も、男も女も口をあんぐり開けて夜空を眺める。そう、花火だ。この時期、各地で繰り広げられる花火大会は、夏の夜の風物詩である。7月25日。居間のテレビは、毎年恒例の東京・隅田川の花火大会を中継していた。スケールもでっかい。





 あの「桃太郎侍」で人気者だった高橋英樹や若く綺麗な局アナが浴衣姿で、花火を解説していた。コンクール方式をとっているようで、参加花火店が腕前を競う自慢の創作花火は見ごたえがある。花火の光に照らし出される隅田川の水面と、そこに浮かぶ小舟。恐らく花火見物のための屋形舟だろう。その上に架かるいくつかの橋。そして、夜空に浮かぶ両国などのマンション群。全体が絵になる。


花火大会3


 ド~ン、ド~ン。我が家の窓越しでも花火の音が。たまたま一緒になったのかもしれないが、山梨市恒例の笛吹川花火大会の日だった。花火大会は夜を待っての催しだから、開始時間はほぼ同じ。テレビで放映される隅田川の花火に後ろ髪を引かれながらも、女房と二人して外に出てみた。




 見える、見える。打ち上げ地点は、直線で4㌔ぐらい先だが、目の前の大空に次々に花火の大輪が。見物席は家の前の植え込みを離れた常口前の古道。植え込みは暑い夏の夜には涼しいのだが、こんな時には邪魔な存在だ。大きな石の上に、これまた大きなお尻を下ろし、うちわで仰ぎながら女房が言った。


花火4


 「お父さん、テレビの隅田川の花火もいいけど、やっぱり、花火は生で観るこれだよね。でも、ちょっと離れているせいか、光と音が合わないわね」



 その通りだ。花火の醍醐味は臨場感。打ち上げられては消える大輪の色彩、それもさることながら体の芯に染み渡る、あの音だ。ド~ン、ヒュ~ル、ヒュ~ル、ド~ン、ド~ン。夜空のキャンパスを彩る花火の芸術を立体的に総仕上げするのがこの音である。4㌔先の花火の音は確実にズレるのだ。


花火2


 花火は音と光の競演だ。打ち上げの真下といわないまでも、やっぱり近くで観るに限る。音と光が一体となるので、臨場感は全く違う。不思議な事に、夜空の花火を見上げるどの顔も、みんなあんぐり口を開けているのだ。夜空の星を眺める時と違って物思いにもふけらないし、何の考え事もしない。確実に、みんなが無心で上を眺める。頭の中を空っぽにして、あんぐりと口を開けている。これ、本当に間違いないんです。




 私達夫婦には、隅田川花火大会にはヘンな思い出がある。確か娘が女子大時代の20歳頃だった。花火を観に行く途中で、慣れない下駄に浴衣姿だったためか、転んで足を骨折、東京・品川の外科病院に担ぎ込まれたことがある。親バカの私たちは山梨から大慌てで駆けつけたものだ。もう20年近くも前のことだ。


浴衣


 そんな事を覚えているのかいないのか、この時期、毎年のように大学時代の仲間の家に泊まっては、花火見物としゃれ込んでいる。その子は酒徳さんといって、隅田川近くの両国に住んでいる。山梨の我が家にもご夫婦で遊びに来てくれる。今度、山梨に来たら、うんともてなしてやりたいと思っている。幾つになっても親バカは親バカ。幾つになっても娘達は可愛い。




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蛍の復活

 太鼓1


 ホタルが姿を消し始めたのは昭和30年代だった。わが国が「戦後」に別れを告げ、高度成長期へと突っ走り始めた頃と符節を合わせた。私たちの田舎、山梨県の峡東地方では他の地域に先駆けて葡萄や桃の産地化が始まった頃だ。それまでの米麦、養蚕の農業形態からある意味、革命的とも言える転換だったa。それまでの水田や桑畑はあっという間に姿を消し、その跡に果樹園が広がった。


budou.jpg


 果樹栽培には病害虫を駆除するための消毒が欠かせない。40年代に入ると除草剤が登場するのである。言うまでもなく、果樹栽培は米作と違って人手と手間がかかる。農家にとって除草剤の開発はまたとない福音だった。この除草剤は元々米軍が、あのベトナム戦争で開発したというシロモノだから威力は抜群。人手不足の農家に諸手を上げて歓迎され、省力化に貢献したのである。




 消毒薬は病害虫を殺すばかりではないし、除草剤も雑草を枯らすばかりではない。残留物は付近の川に流れ込み「小鮒釣りしかの川」まで死の川に変えた。どの川にも鮠や鮒、鯉は当たり前、シジミも取れたし、この時期には大きな鰻も遡上した。小川は地域の子供たちの遊び場だった。




 川を殺したのは農家ばかりではない。一般家庭も家庭雑廃水という名の排水で川を汚した。三種の神器とか3C(カー、クーラー、カラーテレビ)という言葉が生まれ、どの家庭にも洗濯機も当然のように登場した。急激な高度成長は、至る所にちぐはぐな現象をもたらした。下水道などインフラの整備なんか追いつくはずがないから、洗剤をいっぱいに含んだ家庭排水は、そのまま川に流れ込んだ。川だってたまったものではない。農薬と家庭雑廃水のダブルパンチは、川の生き物を死滅させたのである。か弱いホタルの幼虫なんかひとたまりもない。



太鼓
   

 そんな現状を放って置くほど人間、バカでもノロマでもない。消費者には分からないだろうが、急速に農薬規制が行なわれ、雑廃水たれ流しへの反省も徐々に進んでいる。もちろん死の川が蘇えっているわけではない。しかし、場所によってはホタルが一匹、二匹。


 根津


 山梨市ではこの十年、万力公園を舞台に毎年、ホタル観賞会が開かれている。この公園は、かの戦国武将・武田信玄が治水のために築いた「信玄堤」が今も残るところで「万葉の森」とも言っている。一画には地元が生んだ、あの鉄道王・根津嘉一郎の銅像も。



 


 今年もつい先日、この、ホタル観賞会が開かれた。昼間、市長を先頭に各界の代表が集まってにぎやかに開会行事が。子供たちの「岩手太鼓」で幕を開け、夜の帳が下りると浴衣姿の家族連れなどホタル見物の人達で賑わう。公園の広場には終日、屋台も並んでちょっとしたお祭りムードだ。


蛍まつり


 ホタルはこの時期の環境の良し悪しを測るバロメーター。市をはじめ関係者はこの祭りを環境改善の起爆剤、導火線と位置づけている。小川に鮒や鯉が戻り、夏にはホタルが舞う、そんなふるさとが帰ってきて欲しいものだ。


屋台


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おきてがみ
プロフィール

やまびこ

Author:やまびこ
 悠々自適とは行きませんが、職場を離れた後は農業見習いで頑張っています。傍ら、人権擁護委員の活動やロータリー、ユネスコの活動などボランティアも。農業は見習いとはいえ、なす、キュウリ、トマト、ジャガイモ、何でもOK。見よう見まね、植木の剪定も。でも高い所が怖くなりました。
 ブログは身近に見たもの、感じたものをエッセイ風に綴っています。

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